「アーバン・ワイルド・エコロジー」能勢文徳+常山未央 著

 時々建築について刺激をすると長文のメールが返信されてくる「私の好きな建築ベスト10」を送ってくれた知人が、「若手のいい建築家」として教えてくれた能作文徳+常山未央。

 この知人には、「本来の建築とは何か」と常々刺激をもらっているので、彼のお薦めならと思い、全然名前の知らない若手建築家だったが、この本を買って見た。

 自分の娘、息子より若い40歳代前半の若手建築家は、何を考えているのか興味津々で読み始めた。

「建築を複数種の網目と捉えている。人間と複数種が共存する居住域を築くために、菌(きのこ)のような弱い力で現代都市を分解して再組織化する、それが私たちのヴィジョンである。」とある。

 多分 若い世代は、私の年代よりも気候変動や現代社会が持つ様々な問題に強い危機感を持つているのだろうと感じた。

 地球環境や生態系に配慮した家づくりやまちづくり、太陽エネルギーを生かしたオフグリッドハウス、土壌の健全性を回復する建築やランドスケープ、生産から廃棄までの物質循環に配慮したエコロジカルデザイン等のデザイン思考に取り組んでいる。

  近年は、街並みを構成する建築のさまざまな素材に着目し、築40年の瓦屋根の家屋を解体して修繕、移築した《高岡のゲストハウス》(2013)や、都市のストックである中古住宅にあなを開け、生命がつくるレイアウトにあわせて手を入れ続けていく自邸兼事務所《西大井のあな 都市のワイルド・エコロジー》(2017)などがある。

 土地やその歴史、素材や資源、住宅産業や社会制度、人々の生活のあり方など、より広範囲の設計与件を取り込みながら、新しい生態系としての建築の実現を志向している。

 能作文徳+常山未央。鋭敏な感性と知性でグローバルな活動をする彼らの今後の活動に期待したい。