エビデンス、エビデンスとコンプライアンス鳥は今日も鳴く

最近、鳴き過ぎだろうと感じるのは「コンプライアンス鳥」。

些細な事にもエビデンスは?、打合せ議事録は?、この条文の規定の文書化された取扱いは?とか。そういう天の鳥に振り回されることが多い。

そうした中で、一般の人には建築基準法の用語「既存不適格」というのが、どうもわかりずらいようである。

もしかしたら建築関係者でもわかっていないんでないかと思う事がある。「既存不適格だから改修が必要だとか、解体建替えが必要だ」というような文書にお目にかかる事がある。また弁護士などの法律専門家にも詳しく説明が必要な場合がある。

建築基準法の「既存不適格」とは、建築・完成時の「旧法・旧規定の基準で合法的に建てられた建築物」であって、その後、法令の改正や都市計画変更などにより、現行法に対して不適格な部分が生じた建築物のことをいう。「違反建築物」と異なるし、条文毎に時期が異なる。

既存不適格であれば、増築とか用途変更をしなければ、そのまま使用していても法律的には問題は無い。注意しなければならないのは、ここでいう「既存」とは、建築基準法では確認済証があり、かつ完了済証がある既存の建物であって、ただ古い建物=既存建物を言うのではない。

しかし、それは法律的な側面であって、安全上の側面とは異なる。遵法性だけ満足していれば良いというものではない。

法律はその時々の社会経済情勢の反映でもあるから、現行法が全て正しいとは言い切れない。実際 現在の建築基準法は緩和、緩和のオンパレードだ。

ただし、こと安全基準に関わることとなると別だ。特にエレベーターやエスカレーターに関しては、強く安全性の問題を意識せざるを得ない。とりわけ不特定多数の人が使うような建物の場合は、改修が急がれる場合が多い。

【昇降機(エレベーター)】

 既存建物の昇降機(エレベーター)は、既存不適格であり法令に違反してはいない事が多い。

 ただし、新築時から30年も40年も経過していると、その間昇降機に関する安全基準は大きく変わったため既存不適格項目に基づく改善要望事項は多くなる。

 例えば2005年(平成17年)7月の千葉県北西部地震において発生したエレベーターの閉じ込め事故、2006年(平成18年)6月の港区シティハイツ竹芝のシンドラー社製エレベーターの戸開走行事故等を受け、(1)戸開走行保護装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第1号関係)エレベーターの駆動装置や制御器に故障が生じ、かご及び昇降路のすべての出入口の戸が閉じる前にかごが昇降したときなどに自動的にかごを制止する安全装置の設置が義務付けられた。

(2)地震時管制運転装置の設置義務付け(令第129条の10第3項第2号関係)
 エレベーターについて、地震等の加速度を検知して、自動的にかごを昇降路の出入口の戸の位置に停止させ、かつ、当該かごの出入口の戸及び昇降路の出入口の戸を開くことなどができることとする安全装置の設置が義務付けられた。

さらに2011年3月11日に発生した東北地方太平洋沖地震での昇降機の被害事例を受けて、昇降機の耐震強化を目的として、2013年にエレベーター、エスカレーターに関する耐震関係告示が制定され、2014年4月1日から施行された。このように昇降機の安全基準は大きく改正されてきている。 

 また経年変化による劣化が指摘され要是正とされる場合もある。既に昇降機の基準耐用年数(35年程度)を超えていると、新規入替の検討が必要である。事故が発生すれば人命にかかわる事であり緊急の対応が必要であるが放置される傾向がある。


【エスカレーター設備】

エスカレーター設備もエレベーターと同じ問題を孕んでいる。2014年4月1日、建築基準法施行令の一部が改正され、地震その他の振動によってエスカレーターが脱落するおそれがない構造方法の規定が追加された。これは2011年の東日本大震災でエスカレーターが脱落し被害が生じた事による法改正である。

 また、2024年(令和6年)4⽉1⽇からエスカレーターの安全基準が変わった。
近年の、エスカレーターの挟まれ事故への対応として、エスカレーターの周辺部に誘導柵、転落防止柵等を設置する場合の安全基準が見直しされた。さらにエスカレーターの転倒事故への対応として、ハンドレール停止等の異常を検出し、踏段を停止させる安全装置の設置が義務化された。
 このようにエスカレーターに関わる安全基準は、近年大きく変わってきており、利用者の安全を確保するためにも、エスカレーターの機械設備としての耐用年数が近づいている場合は、現行法令(安全基準)に適合した新規取替が必要不可欠である場合が多い。 

ただし、エスカレーターは発注から施工まで1年半。エレベーターは1年という昨今の建設事情では、中々改修のスピードは上がらない。

人間であれぱ、いくら法律的に支障がないとはいえ「身体堅牢・骨太ではあるが、脳や心臓に重大な疾病が発見され至急処置しないと死に至る状態」、「至急外科的出術が必要」というようなケースは多々あるということ。

意外と盲点・・・施行令70条(柱の防火被覆)

この記事を見ての問合せが意外と多いので追記。質問は令70条について平成12年改正以前の取り扱いがどのようなものであつたか知りたいという事だった。検査済証のある既存建物でも天井裏の部分で施行令70条の防火被覆が施行されていない案件を時々見かける。又既存不適格であるということを証明するには、過去の取扱いがどうなっていたか調べる必要がある。

1991年(平成3年)に出版された「詳解 建築基準法 改訂版」の令70条の解説では以下のように記載されている。これは昭和46年1月1日施行から平成12年5月31日までの規定についての解説。

この頃までは柱1時間耐火程度が適切という取扱いだったが、その後厳しすぎる面があるという事で「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出て、現在は告示に集約されている。

この後、平成12年6月1日に改正され平成13年1月6日施行-現在有効が下記の条文

********************************

設計上や審査上で意外と盲点というか忘れてしまうのが建築基準法施行令第70条(柱の防火被覆)です。

(柱の防火被覆)第70条

地階を除く階数が3以上の建築物(法第2条第9号の2イに掲げる基準に適合する建築物及び同条第9号の3イに該当する建築物を除く。)にあつては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合として国土交通大臣が定める場合においては、当該柱の構造は、通常の火災による火熱が加えられた場合に、加熱開始後30分間構造耐力上支障のある変形、溶融、破壊その他の損傷を生じないものとして国土交通大臣が定めた構造方法を用いるもの又は国土交通大臣の認定を受けたものとしなければならない。

耐火構造・準耐火構造とする必要が無い 三階建ての鉄骨造の建物・・・例えば倉庫とか工場、専用住宅で鉄骨がむき出しの建物などの場合には、柱の防火被覆が必要です。

防火被覆の条項が構造規定関係のところにあるので、つい見落としやすい条項です。

特定行政庁によっては、1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しないと考え指導しているところもあると聞いています。

検査機関は、法判断の裁量権がないので特定行政庁の指示に従う事になりますが、個人的には1階の柱部分のみ被覆すれば、容易に倒壊しずらい。と考えますので簡易的な方法としては有効だと思っています。

この施工令70条の法文は、昔は下記のようなものでした。

地階を除く階数が三以上の建築物にあっては、一の柱のみの火熱による耐力の低下によつて建築物全体が容易に倒壊するおそれがある場合においては、当該柱は、モルタルその他の断熱性のある材料で皮膜しなければならない。

昭和62年当時、近畿建築行政会議の統一解釈として大阪府下では、一時間耐火として指導していた。

しかし建設省住宅局建築指導課より「地階を除く階数が3の建築物に係る建築基準法施工令第70条の取扱いについて」という事務連絡が昭和62年12月1日に出され、一時間耐火の性能を要求する事は、やや厳しすぎる面があるとして是正された経過があります。

この事務連絡では、検討方法として

1,精算による方法

2,軸力再配分による方法

が詳細な計算方法とともに示されています。

うかい鳥山 2024

親戚の集まりがあって「うかい鳥山」で会食

記録によると前回きたのは2018年12月なので約6年ぶり

夕方5時、庭の燈がともると、別世界。

うかい鳥山は、創業60年だという。古民家を移築して小川に沿って離散型集合体で飲食店にした創業者は先見の明があったんだなとつくづく思う。都市計画区域外だから個々の建物に接道義務がないので、こうした客室の離散型集合が展開できる。

ここの空間は、子供達や女性陣の記憶にしっかりと刻まれ、必ず会食先の候補にあがる。

以前は、外国人客はあまり見なかった記憶があるが、この日は何組が欧米人客を見た。

もうすぐ七五三だね

で、この日飲んだ日本酒は、田酒 純米吟醸 百四拾 紅葉(もみじラベル)。2年前に青森で始めて飲んで感動した酒。これを東京で飲めるのは貴重。幸せ、幸せ。

いつもながら料理は美味しかったけど、はじけ栗は始めて

旨し

銀杏も沢山食べてしまった

黴(かび)る建築

親戚の集まりがあって、京王線高尾山口駅に行ってきた

この駅舎の設計も「腐る建築」で有名なKUMAさん。

こちらは築9年と聞いたが、木部が浸みて黴が発生している

高尾山口駅は、丁度高尾山から下山してくる人が多い時間帯で混雑していた

「野市」というイベントが駅の屋根の下で開催されていた

夕方になるとライトアップされ「黴る建築」を感じさせない

6、7年ぶりに高尾山口に来たのだけれど、随分と飲食店が増えたように思えた。

高尾までくると、山の空気に包まれて、都心より涼しい。

「人口減少時代の再開発・『沈む街』と『浮かぶ街』」NHK取材班

2024年1月20日放送のNHKスペシャル「まちづくりの未来 ~人口減少時代の再開発は~」を制作したチームの本。

日本全体が人口減少傾向にあっても、今も人口が増加し、ヒト・モノ・カネの全てが東京に集中し続けている。普段食べて、寝て、仕事に追われるルーチンだけだと、世の中を極めて狭い範囲でしか見ていない。この異常な街=東京に起こっている事を、この本のおかげて立体的に見る事が出来た。

今も東京のあちこちで再開発によるタワーマンションが作られ続けている。デベロッパーからしてみれば建物が出来る前に売れ、資金回収は早いし、一度売却すれば、あとは管理組合が維持管理するので「売りっぱなし」でよく事業リスクは低い。低層部に多少の商業施設(多くはチェーン店)や公共施設が入っても、どんなにデべがポエムを語っても「金太郎飴」建築しか出来てこない。

大資本の論理とそれを後押しする施策の結果なのだ。

振り返れば小泉政権時代に、大量の不良債権を抱えたバブル崩壊後の経済対策として不動産の流動化や民間主導による市街地の再開発を推進するのが目的で2002年の「都市再生特別措置法」制定から、現在の問題は加速し始めたといえるかも知れない。

東京都心であれば、自ら住む目的で購入する実需層だけでなく、富裕層や外国人などによる投資目的の買い手が増加している。不動産投資として手堅く、転売でさらなる利益を見込めるからにほかならない。

その結果、再開発の周辺地域では 冬場のビル風に悩み、教育施設はパンク状態になったり、病院はいつも満杯になるという地域インフラへ沢山の影響を及ぼしている。

また住宅の数は増えても、庶民にとって買える・借りれる価格帯の住宅は一向に増えていない。住まいが投機と投資の対象となった帰結である。

事務所開設以来、建築ストックに向き合ってきた。分譲マンションからは20年前に足を洗ったつもりだったが、増え続ける建築ストックの中でも多くの問題を孕んでいる集合住宅に関与せざるをえないかも知れない。

ホテルオークラ京都

京都市役所道路向いのホテルオークラ京都で打合せ

格調高いインテリア

欧米外国人の利用が多いように見受けられた

17階から望む東山と鴨川

京都から新幹線に乗った途端 爆睡。

新横浜で目が覚める

睡眠は、新幹線乗車時間は2時間くらいで丁度よい。

名古屋-東京間だと時間が短くて良く寝れない。

総本家にしんそば 松葉

京都国立博物館の後、四条河原町に戻り早めの昼食

南座脇の総本家にしんそば松葉に寄る

松葉の鰊は大きい

鰊、蕎麦、出汁の味のバランスがとても良いように思う。

あまりにも有名な店で知ってはいたが、食するのは始めて

蕎麦を食べ終わって12時・更に打合せ場所に移動

京都国立博物館 -3

明治古都館

明治古都館は、1897年(明治30年)5月1日に「帝国京都博物館」として開館した。大和大路通りに面した表門(西門)から七条通りに面する南門に続く塀も、時を同じくして建てられた。

設計は、宮内省内匠寮の技師であった片山東熊(かたやまとうくま)。

建物の外観はフランス・ルネサンス―バロック様式を取り入れながらも、日本的な抒情性や繊細な感覚が見事に表現されている。


1969年(昭和44年)には、旧帝国京都博物館本館、表門、札売り場及び袖塀は重要文化財に指定。

現在、明治古都館は、免震改修他の基本計画を進めるため原則非公開。

京都国立博物館 -1

京都国立博物館・平成知新館 2013年竣工

上賀茂神社参拝の後、南に移動し京都国立博物館をちらりっと視察

上2枚はミュージアムショップ

設計は、ニューヨーク近代美術館 新館、東京国立博物館 法隆寺宝物館、豊田市美術館などを手がけた谷口吉生氏。

「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」

2024年10月3日国土交通省から発表された「木造戸建の大規模なリフォームに関する建築確認手続について」を見ていた。

https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_kijunhou0001.html

https://www.mlit.go.jp/common/001766698.pdf

旧法6条1項4号建築物から新2号建築物になる2階建て木造一戸建て住宅がリフォーム。リノベーションを行う場合に大規模の修繕又は大規模の模様替の建築確認申請が必要になるということを注意喚起するもの。

新2号建築物は階数2以上又は延べ面積200㎡以上で、これまで無法状態だった旧4号建築物のリフォーム、リノベーションに法規制の網がかぶさってきた。軸組だけ残すスケルトン・リフォームやスッポッポン・リフォームも確認申請が必要となる。

例えば木造2階建で耐震等級を「3」にアップするようなリフォームを含有する場合、床合板、野地板合板、壁面合板等を張り替えないと耐震等級を上げることはできないので、当然ながら大規模の模様替えの確認申請が必要になる場合が想定される。

もうひとつ忘れてはならないのが、旧4号建築物は、検査済証がない手続上違反建築物や実態上の違反建築物が街場にゴロゴロしているということだ。

当然ながら大規模の模様替え確認申請の前段階として、検査済証が無い場合は、建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)等が必要となる。

上賀茂神社 2024秋

午前中だけ私的な時間がとれたので朝のうちに恒例、上賀茂神社に御参り。

参道の緑がきれいに刈られ、秋の青空に映える

この日 上賀茂神社は、新嘗祭だった

偶然にも お馬さんも出社されていた。去年の7月に逢っているから1年ぶり

八咫烏のおみくじが飾られている

二条有恒

近江八幡から京都に移動し打合せ。夜に「どこか行ってみたいところがありますか?」と事前に聞かれ、幾つか候補を告げておいた。忙しい時間帯なので、ちゃんと席を予約できる店にしたとのことで、19時に京都市役所の北側にある二条有恒の暖簾をくぐった。

お通しは、松茸の茶碗蒸し

日本酒はお薦めの伏見の日日醸造

焼銀杏・殻を取った銀杏をひとつひとつ串に刺し、

焼きあがったら薄皮をとり塩を振り器に盛る。

焼枝豆・茹でたものを炭火で焼いている。こんなの始めて食べた

「有恒」とは、「変わらない為に変わり続ける」という事。食を通じての豊かさを提供しますという心意気に共感する。

アラカルトの和食店というのだろうか、高級居酒屋というのだろうか、なにしろ品書きはあるが、料理の値段は一切書いていないので、若干おっかなびっくり。お酒は値段が書いてあるが、そんなに高い酒を置いてないようで、あくまで料理が主ということのようだ。

とにかく美味しい店だった。満腹・満腹。美味しいものを食べると心は幸せ一杯。

ほろ酔い気分で夜の京都の街を少し歩きホテルに戻った。

湖月庵

東近江市にある「湖月庵・合気道道場」に寄り道してもらった。

国道421号線という、結構交通量のある道路沿いにある

道場と多分お住まいとの間には林檎の樹

道場の廻りを一回りさせてもらった

湖月庵は芦澤竜一建築設計事務所の建築家・芦澤竜一氏と滋賀県立大学環境建築デザイン学科芦澤竜一研究室の学生さん達の多大な協力によって完成したと聞く。2021年にウッドデザイン賞を受賞している。小規模だけど木造ドーム建築。

近くに行くことがあれば見てみたいと思っていたが、念願がかなって嬉しい。

近江八幡 2024

7年ぶりの近江八幡。JRの近江八幡駅から近江鉄道八日市線に乗り換える。上の写真は近江鉄道のプラットホームのもの。

近江鉄道は2両編成のローカル鉄道。実によく揺れる。車両は西武鉄道のお下がりだと後で聞いた。

【本殿】

帰路、JR近江八幡駅まで送ってもらう途中に寄ってもらった日牟禮八幡宮。

ここも7年ぶり「来ましたよ」と挨拶。

【桜門】

「伝記によると、第十三代 成務天皇が高穴穂の宮に即位された折(西暦一三一年)、武内宿禰(たけうちのすくね)に命じて当地に地主神である大嶋大神を祀られたのが、鎮座の始めとされている」と由緒にあるように、とっても古い神様を祀っている。

【能舞台】

日牟禮八幡宮の道路向いにある「近江つけもの山上(やまじょう)」で赤こんにゃくを買い求める。ここの赤こんにやくは、他のところとはちと違う。味噌漬けだからか、プリプリで旨みがあって美味しい。

店内には、色々な漬物が売っていた。

「借地借家法の解説(5訂版)」渡辺晋著

2024年9月に発刊された初版発行以来、ロングセラーを続けているナベベンさんの『借地借家法の解説』の5訂版。コンメンタール方式(逐条解説)は継続。

今回の改訂では、次の3つの特色を持たせたとある。

1.特約についての分析検討

 近年では、土地建物の利用方法の多様化や契約に対する意識の高まりから、賃貸借契約に特約が設けられることが多くなった。 しかし特約に関しては、借地借家法には一方的強行規定という考え方が取り入れられており、借地権者と建物の賃借人に不利な特約は効力が認められない。 そのため、借地借家法を学び、運用していくためには、特約がどのように取り扱われるのかを知らなければならない。

2.最新の裁判例を追加

 借地借家法に関するさまざまな問題について、日々刻々と新たな判断が公表されている。最新の裁判例409件を検討追加したことで、借地と借家に関する類をみない裁判例のデータベースともなっている。


3.法改正の反映

 デジタル社会形成整備法が制定され、借地借家法においても、従前書面による契約や説明が必要だった分野につき法改正がなされ、2022年(令和4年)5月から施行されている。この改正を詳細に解説してある。

建築ストックの建替・再生・活用に際して賃貸借契約の存在有無は、かなり重要な事項で、この問題の処理は、プロジェクトの工期に大きな影響をあたえる。

爺婆探偵団は行く!・仲御徒町「吉仙」

 メトロ日比谷線仲御徒町駅から歩いてすぐの蕎麦屋さん「吉仙」(きちせん)に行ってきた。新橋に本店がある本陣房の系列店なのだが、特に鮮魚・海産物関係のメニュー―が豊富で、美味しい店だと文芸評論家の故福田和也さんが紹介していた。

 確かに日本酒の品揃えは、とても豊富。蕎麦は勿論だが、あてのメニューも豊富で、あれこれと頼みたくなる。

 一緒に行った人が頼んだ「梅水晶」。鮫の軟骨と梅肉を和えたもので、酒のみの定番のおつまみとの事だが、自分は始めた食べた。日本酒を飲んだ後さっぱりする。

 鮮魚が美味いとの前評判だったが、秋刀魚の刺身があったので注文した。秋刀魚の塩焼きは食べたばっかりだが、刺身は今年初。秋刀魚の刺身が東京で食べれるのは幸せ。そのほか岩ガキとか、白エビの唐揚げが美味しかった。

 締めは三色もり。ゆず切は久しぶりに食べた。確かに蕎麦も美味しい店だ。蕎麦屋というか居食屋というか、飲食店のカテゴリーとしては分類しずらい業態。

 日本酒のメニューに「みむろ杉」を発見したが、一合ではなく一升瓶なら提供できると言う。一升瓶を持って帰っても婆ちゃんの煮物の料理酒になるのが落ちだから、躊躇して「奈良のみむろ杉。名前は知っていたが、飲んだことがなくて一度は飲んでみたかったなぁ~」と店長に言ったら、「系列店に純米大吟醸の四合瓶ならあるかも知れないので電話してみる」と言う。「じゃ。聞いてみて」と頼んだら「神田店にありましたので、今から持ってきてくれます」。そして到着したのが下記。

「みむろ杉・ろまんシリーズ・純米大吟醸35・高橋活日命に捧ぐ」

奈良・三輪山・大神神社近くの今西酒造の酒

特約店限定流通だから、中々お目にかかれないはず。

 奈良の大神神社は、酒の神様としても有名です。

 大神(おおみわ)神社の摂社として鎮座する、酒に関係の深い活日(いくひ)神社。その祖神は、崇神天皇の御代、大神の掌酒(さかびと)に任ぜられ、神酒の醸造に取り組んだのが、活日神社のご祭神「高橋活日命」(たかはしのいくひのみこと)です。

 その高橋活日命に捧ぐと記された酒。いやいや恐れ多くて ちびちびと飲みましたわ。

 広がる豊かな香りと深みのある旨味。高い山脈と深い谷のようなランドスケープが明確な唯一無二の存在です。ブランディングが良いと思う。

みむろ杉。あなたに出逢えて良かった。幸せな気分になり酔っぱらった。

「また、来週お待ちしてます」と帰り際店長に言われたが。「来週は出張なのて又来ますね」と告げて帰って来た。

「CIVIL WAR」

 たまたま魔がさして映画を観てしまった。外出先が映画館の近くで夜の18時過ぎ、この映画の上映時間が19時30分からというので、夕食を取り本屋に寄り、いざ映画館へ。

 前半は単調な滑り出しだった。

 正直、何を描きたかったのが良くわからん映画だった。戦場カメラマンの成長を描きたかったというのか。

 アメリカの風景がきれいだということはわかったが、戦火によって燃え盛る林の中を車が進む時、炎が宙に舞う情景を さも美しいと描き出す感覚が理解できない。

 連邦政府から離脱したテキサス州とカリフォルニア州の同盟からなる「西武勢力」の勝利で、連邦政府に対する反乱を扇動したいのか。

 アメリカの政情は、国内を二分しており、もしかしたら内乱勃発の危険性を孕んでいるのかもしれないが、映画の中では特段の説明もないので何だかピンとこない。

ただただ人を殺しまくるアメリカ映画らしいといえばアメリカ映画らしい映画だった。

 お金をかけてるだろうなということは映像からもよくわかるが、場面場面に流される音楽がピンとこない。人が殺されている場面なのに、何となく陽気な曲に聞こえた。

 個人的には、稀に見る駄作。見るだけ時間の無駄。予告に惑わされてはいけない。

 平日の夜とはいえ観客はパラパラだった。

建築ストックにおける建築基準法の取扱い

 先月、「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言が国交省(国住指第208号 令和6年8月28日)から通知された。
 これは建築基準法第6条第1項より、同第一号から第三号までに掲げる建築物の大規模の修繕※1や大規模の模様替えをしようとする場合には、確認申請が必要になるが「床および階段の改修に関する建築基準法上の取り扱いについて」の技術的助言がまとめられたもの。

【床の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

床の仕上げ材のみの改修等を行う行為
既存の仕上げ材の上に新しい仕上げ材をかぶせる改修

【階段の改修】
次の行為は、大規模の修繕および大規模の模様替えには該当しないものと取り扱うことも可能です。

各階における個々の階段の改修にあたり、過半に至らない段数等の改修を行う行為
既存の階段の上に新しい仕上材をかぶせる改修を行う行為

以上の内容程度でわざわざ技術的助言を通知しなければならないほど、審査の現場は混乱しているというのだろうか。

実際、建築ストックの設計・監理に携わっていると、もっと重要かつ取扱いが分かれている事があるだろうと言いたくなる。

例えば

「装飾か増築か」

 既存の壁面にルーバーをつける程度なら装飾で、植栽棚(点検床あり)のようなものは装飾と言ってよいのか。床面積が発生しないなら装飾か。装飾物が既存躯体にどの程度応力を負担させるなら増築と取り扱わなくて良いのか。いちいち審査機関に確認するのが面倒だ。そもそも増築の定義が建築基準法では明文化されていない。今日の状況に合せて定義する必要があると思う。

「庇をつければ増築?」

新しく開口部の上に庇をつければ増築だという。建築面積が生じなく幅1.8m程度なら増築ではないという。建築面積はともかく幅1.8mの根拠は如何に。

「RCかぶり厚の補正」

内装を解体してみたらRC梁のジャンカが多い。クラックが多い、鉄筋のかぶり厚が少ない場合等がある。この時の補正・補修はポリマーモルタル等を使うんだけど、鉄筋かぶり厚を確保する為に厚塗りするのは、建築基準法的にはどうなのと思う。モルタルは鉄筋コンクリートとは違うし。一体となったものがRCと言えるのか?

その他にもいろいろある。「エレベーターピット下の居室利用」「エレベーターのオーバーヘッド確保の為にエレベーターシャフト部分だけ高さを増す事」

事件は現場で起きているんだよ

「保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである」福田和也著

今年9月(2024年)に亡くなられた文芸評論家の福田和也氏のエッセイ集。まだ63歳だった。

眼光鋭い福田さんが表紙から我々を見ている。

サンデー毎日で連載していた「コロナ禍の名店を訪ねる」に加筆、再構成した単行本。

淡々とした文章で、さらっと読めるんだけど、読んでいると含蓄のある言葉が散りばめられている。確かに著者最後のメッセージなのだろう。

この本で最初に取り上げられている飲食店は、大井町のとんかつ屋「丸八」。私も品川市役所に出かけた時は、食べに行くとんかつ屋さんだ。巻頭でこの店の名前を見た途端。この人は信頼できると思った。味覚が信頼できる人が紹介してくれる飲食店は、外れない。

著者が書くように、私もネツトで話題の店に行くことは、ほとんどない。ネットでの他人の評価には懐疑的だから。だから新しい好みの店を発見し、行きつけの店として通うのには結構努力が必要だ。爺婆探偵団(白髪の青年)は、いつもお店の新規開拓にいそしんでいる。

さて著者は、「毎日、とは言わないまでも日常に通う店、つまり自分の生活スタイルを保持すること、そのために失われやすいものに対して、鋭敏に、かつ能動的に活動する精神を保守という。」と定義する。

そしてこの本の題名「保守とは横丁の蕎麦屋を守ることである」は保守評論家の福田恆存(つねあり)から採ったことを明かし、それを信条としてきたと書く。

また著者は「治者」と言う言葉を紹介する。「自分が関わる地域なり、事業なりを差配し、それがうまく機能していくように配慮する者のことだ。」

そして最後に著者は「日本人よ、治者たれ。」と檄を飛ばす。

だとしたら 何とも日本には「エセ保守」の多い事か。

福田和也氏を再評価した一冊である。

現場の中の美

前述のコア抜き立会中、一挙手一投足、そばにいて見ているわけではないので、現場の中をプラプラ。

この壁は、ブロックなんだけどボードを貼るときのGLボンドの跡が、壁一面に展開されていてきれいだった。

30年前の墨だしの文字が、達筆に思えた。30年後内装が解体されて、こうして他人に見られることなど意識していないだろうけど。

現場は楽しい。

たかがコア抜き、されどコア抜き

今日は、都内某ホテルの地階飲食店テナントの入れ替えに伴う設備用配管の為のコンクリートのコア抜きに終日立会。

たかがコア抜き数本の為に、何故立ち会わなければならないのか。

天の声「RC壁に穴開けて構造的に大丈夫なのか、エビデンスは?」

天の声「ちゃんと検討書と施工写真とか残しておきなさい」

天の声「鉄筋を切った時の補強方法はどうするのか」

と言った。声のもとで、私に相談が来たのは、かれこれ2か月前

担当「設備用配管のスリーブを抜きたいので構造的見解とコア抜き、施工記録の写真、補強方法の検討書とか、まとめて頼めない?」

私「出来るし手配も出来るけど、うちは工事会社・現場監督じゃないんで、鉄筋探査、コア抜き、足場、天井の解体とか必要なので、それらに全部立ち会うのは時間的に無理かも」

担当「じゃ天井解体は、テナント内装工事会社に頼み、足場も別に手配するから」

私「了解」

ということで、構造的検討とか補強方法の検討も済み、本日無事 新規コア抜き完了。

たかがコア抜きだけど、区画隣のテナントは営業中なので午前中9時半から11時半。午後15時から17時までの変則的な工事時間。

今回新たにダイヤコアドリル用真空パッドという道具を知った。これはコアドリルを所定の位置にセツトするときドリルで穿孔する必要があるのだけど、このドリルで穿孔する時の振動が結構響く。そこで真空パッドを使用して吸着して固定するという道具。

真空パッドの吸着面。ゴムの中をコンプレッサーで真空にする。

もうひとつ、新たに知った道具は、HILTI PX-10というトランスポインター。

これは壁の反対側からしかコア抜きがしずらいときに、壁反対側から位置を発信し、反対側で受信して位置を決めるときに使う。今回別の壁のコア抜きに利用した。

常に道具は進化する。

ということで、工事現場はエアコンが無いので、とても暑かったが夕方5時にコア抜き、片付け完了。写真も撮影したし、明日から報告書をまとめなきゃ。

そうそう。築30年のRC造なので、頼まれてもいないのに圧縮強度と中性化試験用に、もう1本コアを抜いた。まあ資料にはなるし、後学の為に。

大宮ストリートプランツプロジェクト

大宮駅東口の再開発ビル・門街に行った折、大宮ストリートプランツプロジェクトが目に入った。

「大宮周辺の圃場(植木を生産している畑)から、生産者の協力のもと植木をまちなかに設置して、大宮の植木文化を感じる風景で緑を感じながら居心地よく滞在できる空間をつくりだす、賑わいの創出や回遊性の向上等を目指すプロジェクトです。日々の手入れは公民が一緒になって維持管理しています。」と書かれている。

この取組みの中核を担っているのは「UDCO」(アーバンデザインセンター大宮)。大宮駅周辺のこれまでのまちづくりや国土づくりの方向性を踏まえ、市民、行政、企業、教育・研究機関など、様々な主体が広く連携しまちづくりを推進する基盤として、2017年3月に設置された。
UDCOは、大宮のまちづくりコミュニティステーション「まちラボおおみや」を活動拠点に、大宮に関わる多くの人々が新たな時代のまちづくりを考え、各々の取組みを活性化し、それらを相互に連携、相乗効果を生み出していくことを目指している。

センター長は、シーラカンスK&H代表取締役。東洋大学建築学科教授・工藤和美氏

副センター長/ディレクターは、藤村龍至氏。現在東京藝術大学建築科准教授。RFA主宰。

それにしても大宮駅周辺、東口、西口共に人が多くなったように思う。その割に再活溌ビルはスカスカ。