「建築の監理-建築のあり方を考察する―」

この本は、「建築物工事に当たっての企画立案業務から、設計・監理業務、工事施工・完成、マネジメント・運営管理業務まで」を、全体のフローチャートに沿つて、法令規定や基準に準拠するなどして、実行のための遂行方法と協議・検証・確認などについて、建築の専門性と経験則などを基に記述している。
 本書「建築の監理」の主眼は、「建築家(建築士)が履行する監理業務の重要性について欠かすことが出来ない責務」などを明確化することにありますと書かれている。

 耐震偽造事件のあと、建築の品質管理が強調された時期があった。そういう私も組織設計事務所で設計部門から工事監理専任になり、法令的な手続き等を特に担った時期があった。あれから20年あまり、最近の建築品質管理は形式的で、形骸化しているように感じる。

 建築の品質は、建物や構造物が設計通りに施工され、安全で耐久性のあるものとなるための重要な管理プロセスで、建設業における品質管理は、単に見た目の美しさを追求するだけでなく、以下の要素を含む複合的な概念だと言われている。
・設計図書通りの性能・機能: 建物が設計通りの強度、耐震性、断熱性、遮音性を持つこと。
・ 建築中および完成後において、利用者や周辺環境に対して危険がないこと。
・耐久性・持続性、 法定耐用年数や期待される期間、安全かつ快適に使用できること。
・法令・基準の遵守、 建築基準法や各種条例、JIS規格などを厳格に守っていること。
・顧客(発注者)の満足、 発注者の要求や期待に応えていること。


 この本は、建築監理の役割と実務の在り方について、その理念について書かれているが、若干形式的記述であり、対象が大規模な建築における工事監理の枠を超えていないように思う。

 最近、思うのは「日本は品質」で世界と勝負すべきではないかと思う事。我々も建築家(士)の職能について、今一度振り返り、足りない部分は強化すべきではないかと思う事。