【覚書】避難安全検証法でできないこと

【避難安全検証法で適用除外できると勘違いされやすい項目】

■面積区画

面積区画は、施行令第112条第1項に規定され、1500m2以下(自動消火設備設置で3000m2以下)で区画しなければならない。

全館避難検証法では、高層区画、竪穴区画及び異種用途区画は除外できるが、面積区画は適用できないため1500m2または3000m2ごとの区画は確保しないといけない。

面積区画を拡大するには防火区画検証による。

■重複距離

重複距離は施行令第121条第3項に規定され、施行令第120条の歩行距離の数値の1/2を超えないことになっている。この規定は避難安全検証法では除外できない。

■特別避難階段の付室

階避難安全検証法では施行令第123条第3項第一号の規定が除外できる。

この規定は付室の排煙設備の設置に関するものなので、付室の設置については避難安全検証法では除外できない。

■非常用エレベータ乗降ロビーの排煙

非常用エレベータ乗降ロビーの排煙は施行令第129条の13の3第3項第二号に規定されているため避難安全検証法では除外できない。

したがって乗降ロビー兼用付室の場合の排煙設備は、仕様規定に準処しなければならない。

■避難階段の幅員

避難階段の幅員は施行令23条、施行令24条に規定されているため避難安全検証法では除外できない。

ただし、物販店舗の合計幅員については全館避難安全検証法で適用除外が可能となる。

■防煙区画面積

階避難安全検証法では、防煙区画面積は1500m2まで拡大できる。

■排煙口までの距離

30mを超えた位置にある排煙開口の排煙は有効開口部の排煙には加えない。

ルートCでは30mを超える事が可能な場合もある。

多世帯住宅について考えた

このところ多世帯住宅について考える機会があった。

ひとつは知人からの質問で、都内に計画中の三階建ての建物で親夫婦、子供夫婦、子供奥様の親という血縁関係が住む住宅が共同住宅だと言われたとのこと。外部階段を共有していて、家族構成が変化すれば第三者に賃貸することも容易な形態。

私も以前 横浜市でそういう多世帯住宅の設計に携わった経験があり、その時は、共用の外部階段を内部階段にして多世帯住宅で申請した経験があり、そういうことを話しておいた。

ところで横浜市は昨年、平成26年9月に「横浜市建築基準法取扱基準法」を一部改正し「多世帯住宅の取扱い」を加えた。image-0002

 

日本建築行政会議編の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年版)を受けて、「世帯ごとに分離した台所、食堂等の部分が2までのものとし、3以上の住宅については、原則として共同住宅として扱う」というもの。

まあ「形態」で考える建築基準法の取扱いとしては妥当なんだろうなぁと思うけど、いまひとつ すっきりしない。

二世帯住宅を計画する場合、例えば親夫婦のいずれか、若しくは両方が無くなったり、片親の介護が必要になったときでスペースの転用を考える場合、子供が独立して生計を営むようになり、不要な部屋の転用を考えた場合とか、将来の家族構成の変化なども見込んで計画のバリエーションも考えておかないとならない。

三階建ての1階部分を他人に貸したら住宅から(特殊建築物)共同住宅で違反になるというのも建築ストックの活用上は、制限つけすぎかと思う。200㎡以下の住宅は「特定住宅」として緩和するとか必要。

「家族」といっても血縁関係でつながっているのが「家族」というわけでもなく、現代では多様化してきている。難しいね~。

告示建築線

築基準法の末尾にある「附則」に注意を払ったことがありますか。

(この法律施行前に指定された建築線)

5 市街地建築物法第七条但書の規定によつて指定された建築線で、その間の距離が四メートル以上のものは、その建築線の位置にこの法律第四十二条第一項第五号の規定による道路の位置の指定があつたものとみなす。

建築基準法は、昭和25年11月23日から施行されたが、それ以前には「旧市街地建築物法(大正8年4月法律第37号)」が施行されていた。というのは先日、文化住宅=旧高田邸の時に書きました。

それで市街地建築物法から建築基準法の附則を思い出した次第で、古い法律が現代でも生きているという事例。
告示建築線とは、「旧市街地建築物法第7条但書」に基き、行政官庁(東京府では警視総監)が告示により指定した指定建築線。

建築物を建築線より突出して建築することはできないとされていた。また全く道路のないところに指定されることも少なくなかったようです。

かつて警視総監の名前で告示されたその間の距離が4メートル以上の指定建築線は、現在は、建築基準法第42条第1項第五号の規定による道路(いわゆる位置指定道路)として扱われており、たとえ道路状に整備されていなくても、その上に建築物を建築することはできないと定められています。

東京では中野区等、大阪では船場建築線というのが有名です。

この告示建築線、法律的には中々面白いというか、味わい深いしろものです。

 

弥生・・・

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昨年来の仕事がひと段落ついて、久しぶりに本屋に行った。

商売道具の法令集を買いに行ったのだが、これだけは毎年買い替えている。そして何十年井上書院の法令集=青本を使い続けていることだろう。

池袋淳久堂の建築関係の書棚をながめて歩いたが、何だか触手が伸びる本が無かった。アンテナが弱くなったのだろうか。

「本屋に行ったけど結局法令集しか買わなかった。面白そうな本がなくて」と話したら「面白い建築を造れる人が少ないんだから面白い本なんか書けないよ」と言われた。名言だ。いたく感心。

先日、名古屋の知人から電話が来て「今、どこにいるの」と聞かれた。最近 古い海外の建物写真しかアップしていなかったが、私がヨーロッパに行っていると思っていたらしい。

仕事で缶詰め状態だったのさ。1月2月と電車に乗って外出したのは5回もない。完全なる引きこもり状態だった。

最近 ボケてきたと言われることが多い。一週間に一度程度外出するような事を探しているのだが・・・

建築の本は法令集しか買わなかったが、こんな本を買ってみた。

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ちきりんさんは、著名な社会派ブロガーだけど中々面白い視点の持ち主で勉強にさせていただいている。

ベッドで寝ながら読めるところが良い。

とても面白くて二晩で読んでしまった。

「建築物」の定義

民家園に移築する茅葺民家(文化財保護法による建築物、保存建築物ではない)を内部空間を利用せず、修景物として利用する場合、この茅葺民家は「建築物」に該当するか否かという質問があった。

法第2条第1項第一号の「建築物」は、

「土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するもの(これら類する構造のものを含む)」と規定されている。

この括弧内の「これに類する構造のものを含む」は、平成4年改正で加えられた部分。

これによると用途が発生するか否かではなく、物理的な「定着」「屋根」「柱」「壁」で判断しているものと思う。用途は変化する相対的なものだけど、形態は変わりずらい。

だから、質問の茅葺古民家は、「建築物」として扱うのが原則的であると私は判断すると答えた。

修景物として工作物・施行令第138条第1項第三号「高さが4mを超える広告塔、広告版、装飾塔、 記念塔その他これらに類するもの」として 言い張ることも可能かもしれない。

映画のセットのような外観だけならば工作物でもよいと思う。

この茅葺古民家は、とりあえず修景物だとしても内部空間があり、色々な転用、用途発生も将来可能であるならば「建築物」として定義し確認申請が必要かと思う。

建築確認申請のための改正建築基準法(H26.6)講習会@東京

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昨年6月4日に公布された改正建築基準法の大部分が今年の6月1日に施行される。

その約8年振りとなる建築基準法改正の説明会が、東京ビッグサイトで開催された。

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エレベーター昇降路部分の床面積の容積率不算入は、昨年7月1日に施行された。定期調査・検査の報告制度は2年以内に施行される予定で、従来の検査系資格「特殊建築物等調査資格者」「昇降機検査資格者」「建築設備検査資格者」が「建築物調査員」「昇降機検査員(仮称)」「建築設備検査員(仮称)」となり、新たに防火戸、防火シャッターなどの駆動装置の点検、感知器と連動させた動作確認を行う「防火設備検査員(仮称)」を創設するとの事。

さて今回の建築基準法の改正で建築主が構造計算適合性判定を直接申請できるようになる訳だが、構造計算適合判定機関の指定確認検査機関からの事業部化、分社化が進み営業活動も活発になるのではないだろうか。

又事実上ルート3物件だけが対象となるので、業務を続けれる構造適判機関は限られ、収斂されていくかもしれない。

構造適判機関が単独で収益力を保持し会社を維持できるのかわからないが、積極的な営業活動と適切な構造審査という両義性を内包し自己矛盾に一層苛まれるのかもしれない。

改正により構造適判機関の確認も「処分」となり、審査請求等の直接的対象となる。矢面に立たされる構造適判機関の行く末は、どうなるのであろうか。

会場から質問が出ていたが、現在は構造に係る軽微な変更は、指定確認検査機関から構造適判機関には送付されていない。実際には一つの物件で階ごとなど頻繁に軽微変更を繰り返しているようなものもあり、これらの軽微変更を適判機関がまったく知らないで良いものだろうか。完了検査をする建築主事、建築検査員が知っていれば良いと判断されるのだろうか。事務処理上どうなるのかQ&Aが待たれるところだ。

住宅医スクール2014(東京)修了

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1月22日に「住宅医スクール2014(東京)」の全講義を受講して修了書をいただいた。

2014年6月から、ほぼ毎月1回の全8回×3コマ=24講座と特別講義8講座という、今時珍しい長期間の講座を受講しなければならない。そして検定会で事例発表をして「資格あり」と認められないと「住宅医」という称号は与えられない「住宅医スクール」。

これは、半日講習で資格を授与するという粗製濫造の民間資格が多い中で異彩を放っているといえる。

修了会の後のパーティーで「骨のある講習会」と評してきた。

岐阜県立森林文化アカデミーと同様に、木造建築病理学を体系化して改修調査・設計の人材育成を図っている。

住宅医協会の皆さんの熱意には頭が下がる。

木造・住宅には、業務として関わりが薄いが、木造は中々奥が深い。

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建築基準法改正履歴

この正月に建築基準法の改正履歴を自分なりに整理してみた。

もともと一枚に年次別(施行順)になっていたのだが、全般総則・集団規定・一般構造規定・設備関係規定・防火避難規定・構造・エレベーター・エスカレーター等に分割して、少し改正内容を詳しく記載したものにした。

建築基準法の改正履歴などは、増改修設計、用途変更、遵法性調査等の業務に関わらないと必要ない事かもしれないが、建築基準法65年の歴史を振り返ると中々面白い。

その中で、最近遭遇した事をひとつ紹介する。

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上図は、自然排煙口の排煙上有効な開口部についての取扱いで、「建築物の防火避難規定の解説(2012)」79頁に説明されている事項だが、もともとは昭和46年12月4日住指発第905号で大阪府建築士会からの照会に対する回答「建築基準法の疑点について」がもとになっている。

排煙設備が新設されたのは昭和46年1月1日施行の建築基準法改正によるが、最近調査した建物は昭和46年7月確認許可なのだが、回転窓の開閉角度が15度ぐらいしか開かない。現在では常識的な上図の取扱いから有効開口面積を計算すると面積が足りなくなり不適合となる。

しかし取扱いが示されたのが昭和46年12月4日住指発第905号の時期で建築確認許可日の後なので適合・不適合・既存不適格についてのジャッジは既存不適格とした。

この回転角度の少ない窓をそのまま利用するとなると自然排煙設備が足りなくなるので、例の告示第1436号というのが活躍することになるだろう。

古い建物は、工事完了検査済証があっても、階段竪穴区画が完結していない。令第128条の敷地内避難通路が確保されていない。自動車車庫との異種用途区画が成立していない等、何で?、何で?という事に遭遇したりする。当時の確認・完了検査は当然、特定行政庁だから充分な打合せが必要となる。

知人は、私がやっているストック活用に関する業務は「妖怪ウオッチ」のようだねと評していたが、建築ストックの活用に関する業務には、可愛いのから悪いのまで様々な「妖怪」が潜んでいる。

違反建築物と既存不適格建築物

「違反建築物」とは、建築基準法等の関係法規に適合していない(違反している)建築物のことで、建物自体が法に適合していない場合(実体違反)と、法で定められている手続き(確認申請や完了検査など)を行っていない場合(手続き違反)がある。

工事完了検査済み証の無い建物は、「手続き違反」の建物と捉え、「実態違反」かどうかは、建物が使用開始した当時に工事完了検査をしていないので「そもそも実態違反か否か」わからないのだから、その建物が建築された時点の法令に適合していたかどうか「建築基準法適合状況調査」をすることによって判断される。

とはいっても、工事完了検査済み証の無い建物のほとんどが建築確認済を取得した図面とは異なっていたり、違反箇所があり、無届出で用途変更や増築、変更が行われている。

新たに増築や用途変更をする場合、それらも直して法適合させるのだが、違反箇所は直して確認申請を取得した状態に一旦戻して、それらを確認してから 新たな増築なり用途変更確認申請を受付するという「手続き」論が障害になり、結局 新たに増築や用途変更をして法適合させるのはしないでおこう=確認申請出すのは止めた! という建築主もいる。

まあ この「手続き論」の話しは、又の機会にすることにして

建築された時点で法令に適合していたが、法改正等により現行の法令に適合しなくなった状態の建物は「既存不適格建築物」と呼び、違反建築物とは区別される。

例えば、竪穴区画の規定は昭和44年5月1日施行だが、昭和44年5月1日より前に建築確認済証が交付された建物は、竪穴区画の規定を満たしていなくても違反ではなく、既存不適格扱いとなる。

ただし、既存不適格建築物の増築や用途変更などを行う場合は、一定の規模・範囲内である場合を除き、既存不適格扱いになっていた規定についても法令に適合させなければ違反建築物となる(遡及適用)

「違反建築物と既存不適格建築物」意外とわかっていない設計者が多い。

地下室マンションと平均地盤面

平均地盤の定義は、建築基準法施行令第2条第1 項第6号で「建築物の高さは地盤面からの高さによる」と定義されており,同条第2 項で「地盤面」とは、建築物が周囲の地面と接する位置の平均の高さにおける水平面をいい、その接する位置の高低差が3mを越える場合においては、その高低差3m以内ごとの平均の高さにおける水平面をいう。と規定されており、建築物における高さの基準となる地盤面を「平均地盤面」と呼んでいる。

(高さの基準のひとつである,道路斜線制限における地盤面については別の扱いで「道路中心の高さ」)

平均地盤面の算定方法は、建物が地盤に接する部分のいずれかの位置における高さを基準として、建物が接する外周の各辺ごとに基準の高さとの高低差によって生ずる面積を算出し、その面積の合計を各辺の合計の長さで割ることによって基準からの平均地盤面の高さが算出される。(平均GL=土に接している面積/外周長さ)

ここまでは法文のおさらい=教科書どおり

しかしその算定において法等の中に周囲の地面と接する位置を、どの位置でどの高さを用いるのか等の規定がなく設計者等の判断により異なっているのが現状。

特定行政庁は、からぼり等の取扱いなどの基準を定めて指導をしているが、それでも細部については、設計者等が判断をして計画をしている。

平均地盤面の算定にあたって、建物の接する位置をどこで見るのか、からぼり(ドライエリア)の扱いをどうするのか、接する地盤面が盛り土している等の扱いについてはケースバイケース。

設計者なら平均地盤高の算定は自由自在に操れるだろう。わずかな高さの調整を盛土、犬走、階段等で行えば良いのだから。

地下室マンションにするのもしないのも、平均地盤の調整で充分可能だ。

それ故か、地下室マンションと平均地盤高にまつわる係争・建築審査請求は多い。設計者が住民説明、調停、確認申請と幾度も計画を変更し平均地盤高を調整し、しかも住民側等に図面を見せている場合は、尚更だ。

指定確認検査機関は、建築確認申請に出された平均地盤高しかみてないが、実際は紆余曲折のすえ申請図ができることの方が多い。条例で定めている場合以外は、盛土に対する法的な制限はないから、平均地盤は自由自在に調整できる。

平均地盤高を調整する為に、盛土・犬走・階段等を設定して平均地盤高を操作している事が事実関係を示す図書から推察できるなら、それらを制限させなければならないのではないかと最近思う。

 

建築面積哀歌(エレジー)

 

 

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建築面積にまつわる話し

一番上は、三方が壁に囲まれている(両袖壁)バルコニーの場合は、建築面積に算入する。日本建築行政会議編の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年度版・49頁)等で示されている取扱い基準。この場合袖壁の長さに関係なく「黄色」部分は建築面積に算入する。

中段は、片袖壁で構造的に片持ちスラブとなっており、はね出しで「軒、ひさし、はねだし縁その他これらに類するもの」として取り扱えれるので、建築面積には算入しない。

上二段については、昨今ではかなり一般的な取扱いかと思う。

さて問題は下段。

両袖壁があるバルコニーだが、右側袖壁との間に数センチの床スリットをもうけているので、「物理的にはねだしとなっているので、建築面積には算入しない」「否、水平投影面積が基本なのだから算入するべき」と意見が分かれているケース。

とある指定確認検査機関が「建築面積には算入しない」として「確認」した案件で とある都内の建築審査会が「認容」した取扱いなのだが、私が都内の他の指定確認検査機関や特別区建築指導課にヒアリングしてみたところ意見が分かれた。結局のところ「建築主事判断」ということになるようだ。

この案件の建築審査請求は、下段の判断等を含めて特別区の建築審査請求で棄却され、現在国交省に再審査請求を提出中と聞く。

上記(下段)のバルコニーを建築面積非算入にすると、1割ぐらい 建ぺい率は稼げるのだが、これでは都市計画による規制そのものがなしくずしになる恐れもある。

もともと「建ぺい率」とは、建築物の建築面積の敷地面積に対する割合のことで、その上限を定めることにより敷地内に適当な空地を確保し、採光・通風等を満足させ、防災上の安全を確保しようとするもの。ちなみに「容積率」とは、建築物の延べ面積の敷地面積に対する割合のことで、その上限を用途地域毎に定めることにより、街全体の環境や土地の高度利用を図ろうとするもの。

そして建築面積は、「建築物の外壁又はこれに代わる柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」(建築基準法施行令第2条第1項第ニ号)であり「建築物が敷地をどの程度覆っているか」かの規定である。

「自分さえよければいい」は現代の風潮だが、建築主・建築業界の「私権」の為だけに、建築はあるわけでなく常に社会的存在であり、環境に配慮したものでなければならないのだと思う。

こんな脱法的で姑息な手法で建築基準法の精神が侵されているのを聞くと なんだか哀しくなる。

注記: 上記建物には屋根があります。

桜×鯰3 構造見学会

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桜設計集団と鯰組の設計施工標準化プロジェクトによる木造住宅の構造見学会に行ってきた。

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奈良県吉野で天然乾燥した杉の柱・梁とパネル床(国産杉直交三層・Jパネル)の現し

この床のJパネルは、準耐火構造の床に現しで使えるということで以前カタログと見本を(協)レングスさんからいただいていた。

吉野杉もJパネルも実際施工された現場を見ると きれいだなぁ 良いなあと思った。

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聞くところによると準防火地域だそうだが、外壁は落とし込み板壁で(杉板30厚+24厚)ガリバリウム鋼板壁で、ガルバリウム下地に石膏ボードを用いない防火構造となっているとのこと。

軒裏は、垂木・面戸板・野地板12厚現しで準耐火構造軒裏になっているそうだ。

所用の途中に しかも路駐して見学をさせてもらったので、ほんのわずかな時間しか滞在できなかった。

後で知ったが鯰組の岸本さんは、私が学生時代から幾度か叱咤激励をいただいていた真木建設の故田中文雄さんの御弟子さんらしい。挨拶してくればよかった。

 

合成の誤謬

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日影被害の話し

赤い部分が今回の被害宅で木造平屋建て築50年近く経過している建物

西側に7階建てのマンション、南側に5階建てのマンションが次々と建った。

それぞれの建物は圧迫感はあるし午後の陽ざしはほとんど入らなくなったが日影時間は適法。午後は陽がささなくなったが、それでも東側隣地は2階建てのアパートだったので、朝から昼近くまで陽はさしていた。

ところが東側隣地に、新しく建替えで5階建てのマンションが計画された。説明を受けると一日中太陽が差し込まないようなのだ。

しかし東側の計画建物は、提出された日影時間図等を見ると適法のようだ。

「日影被害を訴えられるか」と聞かれたので「難しいだろう」と答えた。三つの所有者の異なる建物からの複合被害だから、「建築基準法を作った国を訴えるしかないかも」と

『合成の誤謬(ごうせいのごびゅう、fallacy of composition)とは、ミクロの視点では正しいことでも、それが合成されたマクロ(集計量)の世界では、かならずしも意図しない結果が生じることを指す経済学の用語』(Wikipedia)

最近の建築基準法の改正は、私権の拡大が目立つが環境に配慮した項目は少ないようにも思う。

「合成の誤謬」そんな言葉を思い出した事例だった。

「環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム」IN 東大

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環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム~省エネ・健康リフォームをいかにして普及させるか~in  東大に11月20日参加して来た。

ビルディングエンベロープすなわち外皮を多面的・複眼的に捉え環境時代の外皮に相応しいものを見つけ出すヒントを得るというのがシンポジウム開催の趣旨とのこと(坂本雄三・建築研究所理事長)

第三回目となる今回のシンポジウムでは「住宅の省エネリフォーム」について集中的に議論しようとした企画となっていた。

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【会場の伊藤謝恩ホール】

三人の講演と五人の異なる分野からのパネラーの参加によるパネルディスカッションでみっちり4時間

この分野で、現在どういう取り組みがなされているのか解った。

小規模マンションの受電方法

小規模マンションの計画では、もともと敷地が狭く、そこに建蔽率いっぱいで建物が計画され、緑地やゴミ置場も必要ということで集合住宅用変圧器(パットマウント)の設置場所に苦慮する。

過密都市東京ならではの設計上の悩みでもある。

小規模マンション(20戸~30戸程度)の電気容量は、電灯が50KVAを超え、動力は10KVA以下(ELV、増圧ポンプ等)という特徴がある。

事務所・店舗等の動力が多い傾向の建物とは異なる特徴を持っている。

ところでこの集合住宅用変圧器(パットマウント)は、建築設備であり、高さが1.2mを超えているので建築基準法施行令第130条の12の後退距離の算定の特例を受けられない。

つまりパットマウントの道路側の位置が、道路斜線制限の最小後退距離となる。

2013年度の国交省による指定確認検査機関の処分で、「建築物の各部の高さの制限に係る建築物の後退距離の算定において、建築基準法施行令(以下「令」という。)第 130 条の 12 に定める特例の対象とはならない変圧器の存在を見落としたまま令第 135 条の 6 に定める基準を適用したため、結果として高さ制限に適合しない計画となっていたこと)を看過し、建築基準法第 53 条及び第 56 条の規定に適合していない建築計画に対し確認済証を交付した。」事などが処分理由とされた事案があり、パットマウントの位置が注目を浴びた。

単身者用マンション(1K・1LDK)などでは、一住戸が30A程度でもよい時代があったが、昨今の電気器具の消費傾向が反映してか1Kでも東京電力は40A(契約容量ではない)と言うし、同時使用率を考慮してもすぐ50KVAを超えてしまう。IHコンロを使う場合は、もっと受電容量が増える。

とういうように高圧受電となった場合の対応は、建物内に東電借室 (電気室)、集合住宅用変圧器(パットマウント)方式、施設柱方式となるが、初めに書いたように設置場所や最少後退距離の問題があり、色々と苦慮する。

店舗・事務所等の事業用「低圧弾力供給」は、電灯が50KVAが超えると適用できない。そこで出てくるのが共同住宅用の「低圧架空2条引き込み」である。

東電に建築場所を確認してもらい、「低圧架空2条引き込み」(電灯線を二条、動力を一条)でOKが出れば、敷地内に立つのは引き込み柱だけとなる。

もっとも「低圧架空2条引き込み協議・事前確認票」という書類に必要事項を記載し、図面などを添付してFAXして、東電が現地調査をして約4週間程度の時間が経たないと可能性の可否が判明しない。

意匠設計者のプロデュース力が低下している・・・

「知らない・書けない・解らない」というのは困ったものだ。

「法令に基づく申請」@行政不服審査法

「法令に基づく申請」は、行政不服審査法第2条で不服審査の対象となる「不作為」についての定義として 規定されている用語だが、「法令に基づく申請」についての明確な定義はない。

「申請」については、行政手続法第2条で以下のように定義されている。

「法令に基づき、行政庁の許可、認可、免許その他の自己に対し何らかの利益を 付与する処分(以下「許認可等」という。)を
求める行為であって、当該行為に対して行政庁が諾否の応答をすべきこととされ  ているものをいう」

ここから「法令に基づいて行政庁に諾否の応答義務がある場合に、 行政庁にその応答を求める行為」と考えられる。

ここで法令、条例や細則等に基づく各種の届出が「法令に基づく申請」にあたるかどうかは議論が分かれるところ。

建築確認申請で言えば、例えば「中高層予防条例」。

これは建築関係規定ではないが、お知らせ看板=標識と報告書を提出する。条例によって規模で期間を規定しているが、例えば確認申請受付の30日前に提出するとか、何月何日に確認申請を提出してくださいと副本に記載される。またその日付を確認して指定確認検査機関は受付するようにしている。

建築関係規定ではないが行政と指定確認検査機関の紳士協定で、さも関係規定のように運用されているのが実態だ。

行政は、中高層予防条例は関係規定ではないと言う一方。実際には関係規定と同様な運用を建築主、設計者、指定確認検査機関に強いている。

これをダブルスタンダードという。

シロアリの生態@住宅医スクール2014

「防蟻対策の実務~シロアリ駆除と予防法の事例」と題する阪神ターマライトラボ代表の水谷隆明氏の話を聞いてきた。

住宅医スクール2014の一講座

シロアリの生態から始まり駆除や予防法について、まとまって専門家から話を聞くのは初めてだった。

ヤマトシロアリ、イエシロアリ、アメリカカンザイシロアリとそれぞれ生態が異なり、それぞれに応じた駆除方法や予防法があるとの事。

「シロアリは多数の個体によって集団(コロニー)を形成していますが、各々の個体が各々の役割担いながら高度な社会生活を営んでいます。
この各々の個体を階級(カースト)といいます。
シロアリは集団生活を行い、親が子を育て、成長しても共同生活を行い大きな集団となっていきます。
 生態学的にみると『真社会性』と言われる状態です。これは下記の3つの特徴を有しています。
 (1) 同じ種類の複数個体が協同して子供を育てています。
 (2) 生殖を行う個体と生殖を行わない個体がいます。
 (3) 親世代と子世代が共存しています。」(阪神ターマライトラボのサイトより)

 

駆除にしても予防法にしても、ただ薬剤を散布すればいいというものではなく、シロアリの家屋への浸入パターンを読み、適切な方法で対応するということをパワーポイント100枚ぐらいで丁寧に説明してもらい、シロアリに対する認識が変わった。

点検できる高さの床下を確保して定期的な点検ができるようにする等、薬剤に頼らないシロアリ対策・設計上の工夫が必要とのこと。

アカデミックな視点を持つ実務者の話しは面白い。阪神ターマライトラボでは、シロアリを飼育し生態や薬剤効果を今も実験中との事、詳細は、以下の阪神ターマライトラボのサイトに詳しく掲載されている。

http://homepage2.nifty.com/hanshin-termiteslabo/index.htm

訓示規定

法令などで定められた規定のうち、もっぱら裁判所または行政庁の職務行為に対する命令の性質をもち、規定を遵守しなかったとしても処罰の対象にはならず、また、違反行為そのものの効力も否定されない性質の規定のこと。

訓示規定に対して、規定に違反した場合に処罰の対象とされる規定を「取締規定」という。取締規定は行為そのものの有効性は否定されない。行為そのものが無効であると見なされる性質の規定は、「効力規定」と呼ばれる。

訓示規定は当事者に対して努力すべき内容を指示する規定であり、それ自体に直接的な法的効力はないと言える。訓示規定の具体例として、労働基準法第1条第1項「労働条件の原則」などが挙げられている。

さて、建築基準法では 例えばこういうのが訓示規定である。

建築基準法94条2項には、「審査請求を受理した場合においては、審査請求を受理した日から一月以内に裁決をしなければならない」とある。

実際のところ1ヶ月で採決したケース少ないのではないだろうか。受理してから概ね二ヶ月以上はかかっているように思う。各特定行政庁の建築審査会事務局に聞いたら、「それは裁量権の範囲」と軽くあしらわれるだろう。

建築法規の試験で建築基準法94条2項に関する出題があっても、試験と現実は違うということ。

 

工事の着手 -2

「工事着手の時期」は、既存不適格の適用の有り無しと絡んでくる。

「工事の着手」は、建築基準法では定義化されていない。

建築基準法第3条第2項には、改正された法の施行又は適用の際、

  1. 現に存する建築物若しくはその敷地
  2. 現に建築、修繕若しくは模様替の工事中の建築物若しくはその敷地

「1」は、工事完了検査済証を取得していて使用が開始されている場合。「2」工事中の場合で、ここで「工事の着手」時期が問題になることがある。あるいは工事着手時期の操作が発生する場合がある。 「法改正の施行日が建築確認の受付後か、あるいは確認許可後の日でも既存不適格扱いとなるか」という質問を受けたことがあるが、改正法令の適用を受けない場合の基準時は、既存建物の場合は、一般的には建築確認申請許可日が基準時となるだろうか。

尚、「基準時」は、令第137条に規定されており「法第3条第2項の適用を受けない期間の始期をいう」のだが、令第137条に掲げる規定ごとに抽出しないといけないので、中々厄介なのだ。

工事の着手 -1

知人から電話が来て「工事の着手」についての建築基準法の定義はないかと言うので、日本建築行政会議編集の「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」(2013年度版)の34頁を送ってあげた。

『「工事の着手」の時点とは、「杭打ち工事」「地盤改良工事」「山留工事」又は「根切り工事」に係る工事が開始された時点のことをいう』

工事の着手

今時、「工事の着手」時点は何時かと聞かれるのは珍しい。

法令が大きく変わる時には、改正前にとりあえず建築確認だけ降ろしてダミー施工会社に一部掘削なりさせておいて「工事着手」させ、その後確認申請は、大きく計画変更確認申請をして正式に実施図面を完成させ施工会社と契約して本当の工事着工。確認から正式着工まで1年以上という、手法が流行ったりした。

いわゆる「かけこみ着工」なのだが、工事の継続性があるのかないのか、偽装もできるし、中々わかりづらいものだ。

ところで、知人の相談には現場の写真が添付されてきた。

2014-07-01 17.26.43

敷地は道路より約1.6mほど高かった。

DSC_1828

掘削して山留のH鋼を設置している

現地2

道路より約1.6m高かった敷地の土砂を掘削し平坦にし、山留H鋼を打ち込み矢板も設置している。この時点でも工事施工会社と工事監理者は工事着工前の準備工事中と言い張っているらしい。

驚き、桃の木、山椒の木である。

不作為

古い建築審査請求の裁決書をながめていた。

中野区の「17中建審・請第1号審査請求事件」。

審査請求の内容は、「一低層地域にある○○会社が所有する建物は、法第48条が定める用途地域制限に違反しているから是正してほしい旨、繰り返し(5回も)特定行政庁に求めたにもかかわらず、法第9条第1項の規定に基づく違反の是正命令を発しないことは建築基準法に違反する不作為にあたる」という請求。

行政不服審査法第2条第2項の「不作為」とは、「行政庁が法令に基づく申請に対し、相当の期間内になんらかの処分その他公権力の行使に当たる行為をすべきにかかわらず、これを発しないことをいう」

この裁決書では、「不作為の前提となるべき、法令に基づく申請」が存在しない「審査請求人(近隣住民)が不作為庁(中野区)に対して行った一連の要求(是正申出書)は、法令に基づく申請にはあたらない」とし「したがって、請求人の要求に対して不作為庁が違反の是正に必要な措置をとることを命じることその他の行政指導等を行わなかったとしても、これをもって行審法にいう「不作為」ということはできない。よって請求人の本件請求は、行審法にいう「不作為」に該当しない事項を対象として行われた不適当なものである」として住民からの不作為の審査請求を却下している。

この場合、具体的にどのような経過で住民が5回も行政指導をお願いしたのかわからないが、住民側が不作為の審査請求まで出すのは余程の事だと思う。不作為の審査請求があることを知っていて活用しているのはあまり多くない。

処分庁(中野区)が弁明の中で「住民の要望」は、「特定行政庁に対して職権の発動を求めたものに過ぎず、行審法第2条第2項に規定する「法令に基づく申請」にはあたらない」と主張している」

だとしたら建築基準法には規定されていても、条例や細則等に規定されていないような事柄。

例えば「工事現場の危害の防止」が建築基準法に明白に違反している場合でも、近隣住民などは、お上にお願いするだけで、職権の発動はすべて行政の裁量であるから黙っていろと言っているのに等しい。

施行者側に何らかの処分を求めて不作為の審査請求を出しても行審法第2条第2項に規定する「法令に基づく申請」には該当しない事となり 建築基準法に違反していても事実上免責されてしまう。

「することができる」と「しなければならない」

建築中の建物の山留工事について、安全上不安があると近隣住民が都内の特別区に要望書をもって陳情に行ったという。

「要望書」は、施工者が工事説明で配布した山留計算書に対して第三者の技術者が意見書を付けるという体裁のもので、私も見せてもらったが、施工者の計画は山留計算における背面側上載荷重が極めて少なく、非常に不安がある内容だった。

紹介議員(区議)を通じていたせいか部長と課長が対応してくれて、施工者なり工事監理者に何らかの指導をすると言ってくれたそうだ。

根切、山留については、建築基準法施行令第136条の3に規定されているが、この規定に違反していることが明白になった場合、建築基準法第9条第10項による職権の発動をしてもらわないといけない。

とはいっても条例や施行細則に記載がない限り 事前に施工計画書などを届け出る必要はなく、近隣住民側が不信に思い第三者に技術的検討でもしないかぎり事前の問題点を発見できたりすることはできない。

この行政の「職権の発動」は、中々腰が重い。法文の最後に「~することができる」とあるように、すべて行政の裁量にゆだねられている。

建築基準法は、行政側が対応するものは「~することができる」だが、建築主や設計者や施行者は「~しなければならない」と本当によくできているというか・・・

上記の陳情の際、行政側は「民間の指定確認検査機関を利用した場合、工法の変更は強制できない」という 発言をしたという。

これは、責任逃れの発言としか思えない。

第一 指定確認検査機関で確認処分をするとき、山留工事の施工計画は設計図書には含まれない。

行政は、2005年の最高裁判決を忘れてしまったのだろうか。

「建基法の規定から判断すると、建築物の計画が建築基準関係規定に適合するものであることについての確認 (建基法6条1項、6条の2)に関する事務を、地方公共団体の事務とする前提(同4条、地方自治法2条8項)に立 ったうえで、民間機関をして、上記の確認に関する事務を特定行政庁の監督下(報告、是正権限)において行わ せる(建基法6条の2第3項、同4項)こととした、と言うことができる。     
   そうすると、民間機関による確認に関する事務は、建築主事による確認に関する事務の場合と同様に、 地方公共団体の事務である。 
  その事務の帰属する行政主体は、当該確認に係る建築物について確認をする権限を有する 建築主事が置かれた地方公共団体であると解するのが相当だ。 
  したがって、民間機関の確認に係る建築物について、確認をする権限を有する建築主事が置かれた地方公共団体は、民間機関の当該確認につき、 行訴法21条1項所定の「当該処分または裁決に係る事務の帰属する公共団体」に当たるというべきであって、 横浜市は本件確認に係る事務の帰属する公共団体に当たると言うことができる。 
 A社は本件確認を横浜市の長である特定行政庁の監督下において行ったものであること、 その他、本件の事情の下においては、本件確認の取消訴訟を横浜市に対する 損害賠償請求に変更することが相当であると認めることができる(最高裁2005年6月24日決定)」

 

 

山手通りの家 -3

知人「やあ あれ わかった?」

私 「ごめんごめん 五層竪穴区画無しの件だね」

知人 「仕事忙しかったの?」

私 「ちょっとね 盆前だから まとめなきゃならないことがあって」

知人「忙しくて何よりでした。それで どう?」

私 「う~ん あれは イルージョンだね」

知人「えっ そうなの?」

私 「最初、床面積が100㎡以下なので準耐火建築物ロ-1かと思ったんだけど、階段は鉄骨造だし、他の状況からみても耐火構造の建物。防火地域で階数が3以上だから、耐火建築物にしなければならないし、耐火構造だと階段部分の竪穴区画(令第112条第9項)は逃れられない」

私 「5階=ルーム5は、天井高さが2010mmなので居室として確認申請が通るわけがない。でもベットが設置され寝室としての利用なので居室だし・・・」

知人 「建築確認申請は許可になっているようだね」

私 「そう確認と中間検査はA指定確認検査機関、完了検査はB指定確認検査機関になっている」

知人「ロ準耐なら可能は可能?」

私 「そう、防火地域以外で主要構造部が実際にロ準耐の仕様なら・・」

知人「耐火構造でありえるとしたら?」

私 「1,2階の店舗部分と3階部分で区画して5階は非居室」

知人「ということは 確認申請図書と実際の建物は祖語があると」

私 「断定はできないけど 可能性は大いにある」

知人「これ以上調べられない?」

私  「役所に情報公開請求を出す。そうすると役所は指定確認検査機関に法第12条第5項の報告を求めるから、ある一定の確認図書は公開される。そうすると今よりははっきりするんじゃないかな。ただし内部は個人情報保護とかで黒塗りにされてくる可能性が大だから、どれだけわかるかは定かではないけどね。」

知人 「調べてくれる?」

私 「これ以上は、有償だよ。経費がかかるから」

知人 「検討します」

 *8/13、一部記載に不備があり修正しました。

防火地域内で階数が3以上あるに、床面積が100㎡未満だからロ準耐でも良いと誤解される表現がありました。この建物は耐火建築物である必要があります。

山手通りの家 -2

【建物概要】

建築場所 : 東京23区内、山手通り沿い

用途規制 : 近隣商業地域、防火地域、40m高度地区

容積率400%、建蔽率80%(基準)+10%(角地)(実際は耐火+防火100%で申請)

道路 :  前面道路幅員40m (山手通り)、側道路・幅員6.84m、角地

主要用途 :  店舗併用住宅(具体的用途不明・実際は1階物販店・駐車場、2階物販店、住宅として使用は、3階~5階)

敷地面積 : 24.32㎡

建築面積 : 17.92㎡

延べ床面積 : 89.60㎡

構造規模 :  鉄筋コンクリート 地上5階建て

建築確認・中間検査 :   A指定確認検査機関

完了検査 :  B指定確認検査機関

山手通りの家 -1

1週間ほど前、知人から電話がかかってきた。

知人「新建築7月号に掲載されいる住宅なんだけど、地上5階建てで五層も階段の竪穴区画がないんだ。うちも こういう竪穴区画の無い住宅を提案したいんだが どうやったらできる?」

私「五層竪穴区画無しなんて無理だっぺ・・」

知人「でも雑誌に掲載されているからには、建築確認降りてるだろうな~。資料送るから知恵貸してよ」

私「了解」

この知人は研究熱心で建築雑誌に掲載されている建物で、建築基準法的に面白そうな物があると私に振ってくる。そして、この住宅の概要・資料が送られてきた。

私「資料みたよ。この場所だいたいわかる。山手通りは結構行き来しているからね」

私「S区の場合、山手通リ沿いは防火地域だね。床面積が100㎡未満だけど階数が3以上だから耐火建築物。防火地域でなければロ準耐で設計する方法もある」

知人「鉄筋コンクリート造のロ準耐って主要構造部のどれかの部位の仕様を変えるだったよね」

私「そう。鉄筋コンクリート造りだと外壁・屋根・床がコンクリートで耐火構造仕様になっているから、階段を木造にしたりするんだよね」

知人「鉄骨階段じゃ駄目?」

私「鉄骨階段だと耐火構造になるでしょ。幾ら準耐火ロ-1とか記載しても実態上の仕様が耐火構造になるから」

知人「イ準耐と耐火構造は竪穴区画必要でロ準耐だと竪穴区画しなくていいっていうのも一般には説明しずらいところだ」

私「専門家でも 中々理解しずらいところ」

知人「でも この建物は耐火建築物である必要がある」

私「そうだね もう少し調べてみるよ。」

知人「全館避難安全検証法だったりして」

私「住宅は発熱量高いし、以前シュミレーションしてみた事あるけど この手のプランでは無理だと思うよ」

知人「そうなんだ・・」

私「では 調べてから電話するよ じゃあね」

ということで、知人から課題を与えられてしまった。

やれやれ

【法令メモ】

建築基準法施行令第112条第9項(9項区画・竪穴区画)は「主要構造部を準耐火構造とし、かつ、地階又は3階以上の階に居室を有する建築物」が対象です。

準耐火構造というのは建築基準法第2条七号の2に規定されていて、45分準耐(面積区画は1時間準耐)、例示仕様は平成12年建告第1358号。

「主要構造部を準耐火構造とし」とは、準耐火建築物である場合は、準耐火(イ-1、2)が該当し、準耐火(ロ-1、2)は対象外。

法令上の用語として「上位の性能を有する材料・構造等は、下位の材料・構造等に含有されるものとして整理」(平成12年建住指第682号通知)されたから、主要構造部を耐火構造としたものも対象建築物となる。

わかった?

わからないしょ

でも法文上はこうなる