開放性の判断 @ 西宮市

床面積の算定における開放性の判断については、個々の具体的ケースでは判断に迷うことがある。

「建築確認のための基準総則集団規定の適用事例」(日本建築行政会議編)で、随分と取り扱い基準が示されているのだが、さらに応用的な取り扱い基準を探しているいるときに知ったのが「西宮市建築基準法取扱い基準」だ。

img002

1)ふきさらしの廊下に柱や飾り柱(壁 W=500以下)があっても相互の有効間隔が2m以上あること。

2)ふきさらしの廊下・バルコニーの形状によるh1 ,h2の取り方・・手摺の笠木部分から上をh1にしているが、笠木の下が十分開放されていて、その下に壁状のものがある手摺など様々な形態がある。

3)ふきさらし廊下に面したアルコーブの場合は、開放性を阻害する門・塀等がなければ奥行き2mまでは床面積に算入しない。・・・1m程度の門扉でも開放性を阻害していると考えるのか?

4)屋外階段のささら桁、手摺が廊下の開放性に支障がない場合・・・手摺が縦格子状のものなら良いようだ。

img003

5)屋外階段に接する吹きさらし廊下・・壁等がある場合は床面積に算入するというのは一般的な判断

6)隣地境界線までの距離、対面する建築物の部分までの距離について近隣商業地域・商業地域とその他の地域とで分けているのは、賢明な判断だと思う。用途地域によっても都市の密集度は異なり、特定行政庁内一律ではなく西宮市のように二種類の取り扱いがあっても良いように思う。

倉庫からの転用(コンバージョン)

倉庫業とは、倉庫業法第2条に「寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業をいう。」とある。

建築基準法では別表第1(5)に「倉庫」と総称している特殊建築物であるが、別表第2(ヘ)5項に第二種住居地域内に建築してはならない建築物として「倉庫業を営む倉庫」とあり、「倉庫」と「倉庫業を営む倉庫」は区分けされている。

一般的な倉庫から他の用途に変更(いずれも100m2以上)するとき、

  1. 倉庫→事務所・・・事務所は特殊建築物ではないので用途変更不要
  2. 倉庫→営業用倉庫・・・用途変更不要
  3. 倉庫→物販店・・・用途変更必要、確認申請

1)の場合、用途変更が不要であるが排煙設備、換気設備等が必要となり遵法性を担保する設計・工事は必要である。ただ現在の建築確認申請制度にはなじまないので、(確認申請は不要なので)公に遵法性が確保されている建物であるという証明は得られない。

2)の場合、確認申請上の用途変更は不要だが、貸し倉庫や物流センター等の場合、仕分けなどで作業者が常駐する事が多く排煙設備が必要となる。これも現在の建築確認申請制度にはなじまないので、(確認申請は不要なので)公に遵法性が確保されている建物であるという証明は得られない。

尚、倉庫の種類 として下記があげられている。

【営業倉庫】
倉庫業法による登録を受けた倉庫。他人の物を預かる営業を行うために必要。

【自家用倉庫】
自己の貨物(商品)を保管するための倉庫。メーカーや問屋などが使用する倉庫。

【農業倉庫】
農協などが営む倉庫。農業倉庫業法による認可を受けた倉庫。

【協同組合倉庫】
中小企業等協同組合法などによる認可を受けた倉庫で組合員の物品を保管するための倉庫。

倉庫業の登録は以下の10種類に分類される

【普通倉庫①】

一類倉庫 求められる構造基準が厳しい分、保管可能な物品の種類も多くなっています 危険物及び高圧ガス、10℃以下保管の物品を除いた全ての物品の保管が可能

【普通倉庫②】

二類倉庫 一類倉庫より耐火性能のいらない倉庫です ガラス器、缶入製品、原木、ソーダ灰などが保管可能

【普通倉庫③】

三類倉庫 一類倉庫より防水、防湿、遮熱、耐火性能と防鼠措置がいらない倉庫です 陶磁器やアルミインコット、原木などが保管可能

【野積倉庫】

柵や塀で囲まれた区画(区域)です。防火、耐火、防湿、遮熱性能は要りません 雨風に強い木材、瓦、岩塩等を保管します

【水面倉庫】

原木を水面で保管する倉庫です 原木を保管します

【貯蔵槽倉庫】

穀物などをバラ貸物及び液体等で保管する倉庫です 穀物等のサイロ、糖蜜、小麦粉が代表的です。

【危険品(工作物)倉庫】

建屋、タンクで危険物を保管する倉庫です アルコールが保管可能です

【危険品(土地)倉庫】

区画(区域)で危険物を保管する倉庫です 潤滑油が保管可能です

【冷蔵倉庫】

10℃以下で保管することが適当な貨物を保管する倉庫です 冷凍食品が保管可能です

【トランクルーム】

個人の家財、美術品、書籍等を保管します 家財、美術骨董品、ピアノ、書籍など

排煙設備・・・平12建告第1436号第四号ハ(4)の取扱い

平成12年建設省告示第1436号第四号ハ(4)には「床面積が100m2以下で、壁及び天井の室内に面する部分の仕上げを不燃材料でし、かつ、その下地を不燃材料で造ったもの」とある。

設計上迷う箇所として次のような諸点があ。

  1. 仕上げの下地とは、どこまでの範囲をいうのか
  2. 出入口の戸の材質・構造はどうするか
  3. 出入口の垂れ壁の高さはどうするか
  4. 異なる排煙方法の相互間の防煙区画はどうするか
  5. その他

“排煙設備・・・平12建告第1436号第四号ハ(4)の取扱い” の続きを読む

歩行距離の測り方・・建築基準法施行令第120条

建築物の避難階以外の階においては、避難階又は地上に通ずる直通階段を居室の各部分から定められた歩行距離以内に設置しなければならない。

と施行令第120条にあるが、

実務上は一体どこを基点にすれば良いのか、居室の中での最短距離なのか、最長距離なのか、あるいは避難検証法で二つの出口がある場合の最大歩行距離をどう取ったら良いかなどと悩んだことはないだろうか。

歩行距離の測り方などみても ざっくりとした法律なんだなと 今更ながら思う。

各地の特定行政庁の取扱いなどを参考にしてみる。

  • ビューローベリタスジャパン Q&A
  • BCJ 「避難上の安全の検証に基づく質問と回答」(避難安全検証法講習会)

“歩行距離の測り方・・建築基準法施行令第120条” の続きを読む

倉庫・・・避難安全検証法

倉庫は、建築基準法施行令第126条の2で排煙設備は適用外となっている。

自己用の倉庫や冷凍倉庫等が純然たる倉庫にあたり、貸し倉庫・倉庫業を営む倉庫・物流センター等で物品の仕分け作業をする為に常時在室者がいる場合は、居室として排煙設備を設置するか、避難安全検証を行う。

この常時在室者がいる場合の、倉庫の在館者密度は告示第1441号に示されていない。

そこで在館者密度の設定には 幾つかの方法がある。

“倉庫・・・避難安全検証法” の続きを読む

特別避難階段

建築基準法施行令第122条で、「避難階段の設置」が規定されており、15階以上の階又は地下3階以下の階に通じる直通階段は、特別避難階段としなければならない。

避難階段には次の二つの形式がある。

① 屋内避難階段
② 屋外避難階段

特別避難階段の形式は
① 屋内階段+付室(又はバルコニー)
② 屋外階段は設けることは出来ない。

以下 特別避難階段をめぐる問題や質問をあれこれとまとめてみた。

  • 特別避難階段の構造・形状
  • 避難階段と特別避難階段の目的
  • 付室の大きさ
  • 特別養護老人ホームで3階以上に居室を設ける場合~特別避難階段2箇所以上設置

“特別避難階段” の続きを読む

国交省が情報提供を呼びかけ・・・脱法ハウス、脱法シェアハウス

6/10 国交省が いわゆる違法ハウス(寄宿舎)、違法シェアハウス等の多人数の居住実態がありながら、建築基準法に違法の疑いのある建築物に関する情報提供を呼びかけた。

違法建築を取り締まるのは当然としても、これらの「住まい」がネット喫茶難民などが就職活動をする際の拠点となっており、これらが無くなれば本当に住まいに困窮している人達には打撃だろう。

違法建築・違法業者のビジネスモデルをなくす一方で、住まいのセーフティーネットを整備する事が必要だと思う。


多人数の居住実態がありながら防火関係規定などの建築基準法違反の疑いのある建築物に関する対策について

                                平成25年6月10日

多人数の居住実態がありながらオフィス、倉庫等の用途に供している建築物であると称して、建築基準法の防火関係規定違反などの疑いのある状況で使用されている物件が、複数の特定行政庁において確認されています。これらの物件については、特定行政庁からの情報を勘案すると、建築基準法上の「寄宿舎」に該当する可能性が高く、防火上主要な間仕切り壁を準耐火構造とすることなどが必要と考えています。
国土交通省では、建築物の安全確保を図る観点から、まずは情報受付窓口を設け、違反の疑いのある個別の具体的な物件に関する情報を収集するとともに、都道府県・政令市等の特定行政庁に対して、物件に関する情報収集や調査、違反物件の是正指導等を行うよう要請します。

既存の建築物に対する緩和~大阪府建築基準施行条例改正

大阪府の建築条例を調べていたら、今年H25年4月に大阪府建築基準施行条例が改正になって、その中で第9条の3(既存の建築物に対する制限の緩和)が追加されていた。

(既存の建築物に対する制限の緩和)
第九条の三 法第三条第二項の規定により第八条の二及び第八条の三の規定の適用を受けない第八条の二各号に掲げる建築物について増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(以下この条において「増築等」という。)をする場合においては、当該増築等をする部分以外の部分に対しては、これらの規定は、適用しない。
(平二四条例一五二・追加)

これは「増築や大規模な修繕等を行う既存の建築物又はその部分については、避難上の有効性が低下しないにもかかわらず、増築等に伴って既存の避難口誘導灯及び防火戸の仕様を変更させることは過度な負担となることから、当該制限を緩和【第9条の3関係】」ということらしい。

建築ストックの活用に向けて法的整備がなされている。

 

 

用途変更の設計者資格

先日、用途変更の設計者資格について聞かれたので覚書的に記述しておく、

物販店舗からディーサービスセンターへの用途変更で100m2を超えているので、当然用途変更確認申請が必要であるが、相談者兼設計者は、普段は住宅の設計が多い二級建築士事務所。

公式的には この古い通達が生きている。

昭和27年住指発第424号 建築士の設計でない用途変更
昭和27年4月17日 建設省住宅局建築指導課長から愛知県建築部長宛

(照会)
法第87条の規定によれば同法第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかに用途を変更する場合は当該建築物を建築するものとみなされるが、建築士法第3条及び第3条の2の規定には用途変更する場合を含む旨の規定がないから大規模の模様替又は大規模な修繕に係る部分の延べ面積に応じて建築士の資格の要否を決定すべきもので、何等建築工事を伴わない用途変更については、建築士の資格を有しない者でも法第6条第1項第1号の確認申請書を提出し得るものであり、且つ、建築主事は当該申請書を受理すべきものと解してよいか。

(回答)
用途変更については法第87条に基く同法第6条の準用規定があるが、同条第2項は、建築士法第3条又は第3条の2の規定に違反する場合の規定であつて、建築士法上用途変更についての規定はないから(法第87条の準用規定は建築士法まで及ばない)法第6条第2項に関する限り、用途変更については何等制限はなく、建築主事は当該申請書を受理できる。なお、建築基準法上申請書は建築士に限定されていないから念のため、申添える。

 

以上のように用途変更の設計者資格については建築士でなくてもできる。

但し、報酬を得て業として行う設計・監理には建築士事務所の登録が必要。
(法第23条には法第3条2項のような用途変更が除外されると読める記述がない)

荷重の増減などの影響がない旨の「構造検討書」を添付する場合、対象建築物全体が特殊建築物なので構造設計者の検討が必要。

工事完了検査は不要で、工事監理者も不要。ただし工事完了届を提出。

工事完了届は、特定行政庁に提出するのが基本だが、用途変更確認申請を指定確認検査機関に提出した場合は、工事が完了したかどうか民間指定確認検査機関で掌握できないので、民間指定確認検査機関経由で工事完了届を提出する場合がある。

都内の特定行政庁によっては、現場確認というの名の検査(是正指示もある)に来る場合がある。

尚 この用途変更については、設計者資格、工事監理者、工事完了検査が不要なところから脱法ハウス(住宅から共同住宅)、違反グループホーム、数々の違法用途変更を生み出している一要因のような気がする。

時代は変化しているのに、今になっても昭和27年の通達が生きているのだから・・・

 

計画変更か 確認申請の再提出か

建築プロジェクトは、ときに事業の見直しで、建築確認申請取得後に未着工になったり、工事が一時中断したりすることがある。

又 過去には法令改正を機に意図的に工事中断がなされた事例もあった。

それらの物件が工事再開するとき、幾つか問題が生じることがある。

たとえば共同住宅で、一部構造躯体の変更や 住宅の間取りの変更や設備関係の変更、多少の床面積の増加(もともと容積率はいっぱい)なら計画変更確認申請の提出をしてもらう。

というようなスタンダードな計画変更なら良いのだが、建築確認申請書を提出し確認済証の交付を受けた後の計画の変更は、色々なケースがあり 判断に迷う場合もある。

“計画変更か 確認申請の再提出か” の続きを読む

建築基準法 取扱い基準集及びQ&A集等 / 全国

全国各地の特定行政庁の建築基準法に関する取扱基準・手引き・質疑応答集をまとめています。

各地の取扱基準等を項目別に比較検討して学習すると、一層 法令を理解する事が出来ます。

又、参考として指定確認検査機関等で、取扱いをまとめているところも記載してあります。

これらの文書は、webで文書を公開しているところや各地の建築士会などで販売しているものも列記してありますが、webで公開していない特定行政庁の文書で、所有しているものについて質疑がある場合は関係部分のみ「TAF倶楽部会員」に情報提供しています。

“建築基準法 取扱い基準集及びQ&A集等 / 全国” の続きを読む

小屋裏物置等 -5・・・兵庫県西宮市の取扱い


兵庫県「西宮市建築基準法取い基準(2012年)」の小屋裏等に関する取扱いを見ると、平成12年の施行通知(H12,6,1 建設省住指発第652号)は、「従来の通達等による物置等を設置する場合の木造建築物の耐震壁の配置規定の整備を行ったものである。よって物置等を設置する場合の形態制限については従来の通達等を含めた以下の取扱いによる。」とし、あくまでも法律改正経過の文脈の中で考えている。

これは、これで妥当な取扱いだと思う。

その結果、西宮市では小屋裏物置の取扱いについての建物用途は、「専用住宅・兼用住宅又は、併用住宅、長屋、共同住宅の住戸の部分とする。」として住宅系の建物用途に限定している。

img124

 

 

西宮市の取扱いでは、小屋裏物置の「開口部については、換気用のガラリ以外は、換気という趣旨から収納空間として必要最小限とする。」とあり、現状では一般的な取扱いだとおもうが、その開口部の数値的目安は示していない。

img125

準耐火建築物に小屋裏物置を設置する場合の技術的基準を示しているが、他の特定行政庁では、ここまで厳密な技術的基準を明確にしておらず、色々な意見がある項目である。

img126

小屋裏物置の規定は、どう変わってきたか? -1

先般、小屋裏物置(床面積・階への非算入)は住宅系に限定したものか、あるいは他の建築用途(例えば店舗等)にも適用できるのかという質問があった。

東京都江戸川区の取扱いでは、建物用途は問わないと文書化されているが、都内でも特定行政庁によって取扱いが異なるようである。

又全国的にも住宅系の建物用途に取扱いを限定しているところもあり(兵庫県西宮市他)、その説明を聞くと一理ありと感じる。

そこで、小屋裏物置の床面積・階への非算入について歴史的経過を辿りながら検討をしてみたいと思う。

“小屋裏物置の規定は、どう変わってきたか? -1” の続きを読む

物流センター、倉庫業を営む倉庫

物流センター、物流拠点施設は、配達までの運搬物の整理。保管のほか、荷造り、荷崩し、商品組み合わせ、包装、検品などの作業を伴う場合は、「工場」に該当する。

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」p130

物流センターの機能は、単純ではなくなった。

「amazon」や「アスクル」のような業務形態では、大型トラックによって倉庫に一旦集められた物品が商品別に小分けにされ、それを注文別に組みあわせ、包装され小さな車両で消費者のもとに届く。

建築基準法上の「工場」の概念は産業分類の中の「製造業」よりも広いものであり、職工等により定常的に物品の製造・加工・仕分け・梱包等を行うものは「工場」に該当すると考えられている。

他人の物品を保管、貯蔵することを業としている場合は、「倉庫業を営む倉庫」に該当する。

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」p131

 

 

「用途上可分・不可分」・・・大阪市

大阪市建築基準法取扱い要領(平成20年3月)では、敷地の用途上可分・不可分については下記のように扱っている。

1 敷地 (可分・不可分) について
(1) 複数棟の建築物の可分・不可分について
一敷地に2棟以上の建築物のある場合で、直接の機能上の関連をもたず単に隣り合っていて、敷地の一部(庭)を共通で利用しているに過ぎない場合は可分である。(例)病院と看護師寄宿舎や看護学校との関係

・不可分の関係:(例)建築基準法及び同大阪府条例質疑応答集(監修:大阪府内特定行政庁連絡協議会)Q&A 改訂5 版(以下「Q
&A 改訂5版」という。)1-30…17 頁を参照

(2) 一戸建住宅と共同住宅等の併存する敷地について
建築主が同一人でも、一戸建住宅と長屋及び共同住宅は、可分の関係にあるものとしてそれぞれ別敷地として扱う。

「用途上可分・不可分」・・・長崎県 

img100

 

上図は、「用途上可分・不可分」の取扱い。

設計上も審査上も「用途上可分・不可分」というのは、判断に悩むことが多い。

長崎県の取扱いでは「用途上不可分であるかどうかは建築物の機能上の関連性(利用形態)から客観的に決せられるものです」とある。

上図は、たぶん郊外のショッピングモールみたいなもの、広い敷地に日曜大工センター・各種飲食店・レンタルショップなど複合的な店舗が集合した店舗群をイメージしたものかなと思う。

個々の建物は離れているが駐車場等を共有し、全体としてショッピングセンター的な役割を持ったもの(私は「離散型集合」形態と命名している)への対応だと推察する。

敷地の用途上可分・不可分は

知恵者には、あるときは可分、はたまた あるときは不可分で利用される。

敷地内の通路・・・防避解説、四日市市

建基令第128条の敷地内の通路の取扱いについては、「防火避難規定の解説」100頁に示されている。(下図)

屋外避難階段からの敷地内屋外通路は、「下記の要件を満たし、かつ、避難上支障がない場合は敷地内通路として取り扱うことができる」とある。

  • 通路の有効幅員を1.5m以上確保すること。
  • 通路部分、屋内部分と耐火構造の壁・床及び常時閉鎖式の防火設備で区画し通路の壁及び天井の下地、仕上げを不燃材料とすること。
  • 通路部分は、外気に十分開放されていること。

東京のような過密都市・狭小敷地で建築計画を考えていると、敷地内通路を別個に確保する事が難しいことがある。

「防火避難規定の解説」でも「一般的には開放性のあるピロティなどが該当する。」としている。

この「外気に十分開放されている」というくだりは、厳しくも柔軟にも取り扱える箇所かもしれない。

img093

 

四日市市の建築基準法の取扱いでも、幾つかの具体的な取扱いを定めている。

img094

 

上図は、「防火避難規定の解説」とほぼ同じなのだが、「通路部分には非常用の照明装置を設けること(採光上有効に直接外気に開放された部分を除く)」という一文が加えられている。

img095

 

上図の上段が駐車場の一部に避難通路を設ける場合。下段がトンネル状の通路を通って屋外の道路に出る場合の取扱いである。

 

屋外階段の踊り場の幅・・・神奈川県

建基令第23条第1項ただし書きで、屋外階段の幅を緩和しているが 踊り場の幅については明言していない。

階段及びその踊り場の幅は令第23条の表で同一になっているが、これはもともと階段の部分と踊場部分は機能上一体のものと考えているから。

小売業店舗等で階段幅が広く必要な時に、屋外階段の踊り場の幅は法文で明確でないから狭く出来ないかという質問が来ることが多い。

img090

 

上記は神奈川県建築行政連絡協議会のサイトにある「屋外階段の踊り場の幅について」の取扱い。

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f5720/

検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-「契機」

「検査済証のない既存建築物は増築とか用途変更出来ないと思っていた」「検査済証がない建築物は工事中だと言われてた」「検査済証のない既存建築物の増築・用途変更が可能だという法的根拠は?」等、色々と質問を受ける。

“検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-「契機」” の続きを読む

検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-東京都

先日 都内某区役所に検査済証未取得の既存建築物の一体増築(EXJにより構造的に別建物でない)の相談に行ったときの話し。

建築審査課構造担当係との打合せで「建築構造設計指針2010」監修・東京都建築構造行政連絡会議、(社)東京都建築士事務所協会構造技術専門委員会(所謂オレンジ本)の「第12章第7項 増築等に関する審査要領」に沿って構造関係の調査・検査したものを審査しようということになった。

“検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-東京都” の続きを読む

開放廊下・バルコニーの取扱い・・・神奈川県(1)

神奈川県内の統一的な取扱基準である「神奈川県建築基準法取扱基準-面積・高さ・階数等の算定方法」(平成23年11月24日版)では、「吹きさらしの廊下、バルコニー又はベランダ」について9頁を割いて その取扱いを示している。

それだけ実際の現場では様々な事例があり、当事者達は悩む事が多いということを現している。

img075

 

上図は、まず住指発第115号から基本的な説明をしている。

img076

 

上図は、袖壁がある面からは考慮しない事や出隅部分の取扱いを示している

注意しないいけないのは、②の「ただし、最上階等で上部に廊下等の突出した部分がない場合で、出幅が50cm以下かつ当該廊下等の幅の1/2以下の局部的なひさし直下の床の部分は除く」とある点で、青天に近い形状で局部的な庇ならば床面積に非算入とある。

img077

ここでは、隣地境界線までの離隔距離と、建物間の離隔距離について記載しており、神奈川県では水平距離2m(有効寸法)以上とある。

img078建物断面形状に応じて外気に有効に開放されている廊下かどうかの取扱いを示している。

img079

開放廊下・バルコニーの取扱い・・・大阪市

「大阪市・建築基準法取り扱い要領」(平成20年3月)大阪市計画調整局建築指導部には、防雨スクリーンの法床面積の取扱いが記載されている。

 

img074

 

長さが1mまでで枠組みで網入りガラス程度のものは、法床面積に算入しなくても良いという取扱いを示している。

 

開放廊下・バルコニーの取扱い・・・京都市

下図は、京都市建築指導部建築審査課の「開放廊下、バルコニーに設けるルーバー・格子の取扱い」である。

現在は、「京都市建築法令ハンドブック(H24.1.1)」にも 同様のものが掲載されている。

img064

 

上図は、竪格子ルーバーについての取り扱いだが、格子間隔が10cm以上とあるから開放率はかなり高くなる。

天井からの垂れ壁寸法、斜めルーバーについても記載されている。

又、 床面積の不算入だけでなく、上記の場合に採光及び排煙についても記載されており、この条件での設計ならば外廊下側の居室の採光に影響しない。廊下の排煙についても開放していると見なしているようだ。

採光・排煙についても記載しているのは、行き届いた配慮だと思う。

img065

 

上図は、横ルーバーの場合についての記載である。

パンチングメタルの場合の算定有効寸法についての記載がある。

横ルーバーの場合は、羽根の隙間については不問にしているようだ。

img066

上図は、防風スクリーン、目隠しパネルの場合について記載されている。

共同住宅等の玄関前の防風スクリーン・目隠しパネルは横幅2m以内。

設置領域全体の開放性についても記載されている。

竪方向の開放性については記載があるが、横方向は防風スクリーンの設置幅2m以内で防風スクリーン間の距離は1m以上とあるから、領域の開放率は50%以上担保しようとしているように見える。