「土浦亀城と白い家」田中厚子著

この正月から「土浦亀城と白い家」田中厚子著、鹿島出版会刊を読んでいました。

「白い家」に代表されるているのは、現存する昭和10年竣工の土浦亀城と信子の建築家夫妻の自邸です。

土浦亀城邸は東京都有形文化財、docomomo20に選ばれていますが、傑作ですね、今見ても見劣りしない とても美しいデザインの住宅です。

戦前の木造住宅の構法、使用材料等もわかり、建築病理学的にも一級品の資料と言えます。

土浦邸フレンズ

この本では、この土浦亀城邸と、土浦夫妻の生涯を丹念な文献調査や関係者からの聞き取りをもとに描き切っています。

歴史的な本を書くなら、縦糸は関係文献を余すことなく読み込み、横糸は出来るだけその時代の関係者から聞き取り調査をする。縦糸と横糸が折り重なって布となる。ちょつと中島みゆきの歌「糸」のようでもありますが、それが歴史的な本に厚みを持たせるのだと思います。

土浦夫妻はライトのもとで夫妻で師事し、日本で国際様式のデザインで建築を数多く作っていますが、その個人の歴史を描く中で、戦前のエリート知識人の暮らしぶりや、タリアセンで出会ったヴェルナー・モーザー、アントン・フェラー、リチャード・ノイトラ等の交流や戦前戦後の歴史が浮かび上がってきます。

近代建築史を学ぶ上では、必読的な本だと思います。