硫酸ナトリウムの結晶成長によるコンクリート劣化現象

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とある鉄筋コンクリートのビルの地下室スラブで見付けた 硫酸ナトリウムの結晶とおもわれるもの。

硫酸ナトリウムは、火山国の日本列島の土壌に基本的に含まれているもので、その結晶成長は全国どこでもある現象なのだが、住宅医協会によると既存木造住宅の調査をした時に住宅の基礎でたまに見られると言う。

私が特殊建築物・鉄筋コンクリートの建物で硫酸ナトリウムの結晶成長を見たのは始めてだった。

硫酸ナトリウムは、一定の温湿度条件になると結晶化し、コンクリートをボロボロにするものだが、この建物ではスラブ表面が荒れている他に顕著な傷みは見られなかった。

どういう条件で硫酸塩が発生したのかということだが、私は、地下水位-1.8mでしかも海に近いという土壌・立地により室内の環境が整い発生したのではないかと考えている。

現地調査の為 建物に入ったとき とても湿度が高いと感じていたが、湿度も関係するのだろうか。

川口の古民家調査

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シルバーウィークの前、三日間の北九州出張から夜中に帰ってきて、翌日朝からの埼玉県川口市の古民家調査に参加した。

疲れていたが関東では古民家調査の機会が少ないので少し無理して調査に参加した。

(一社)住宅医協会の主催で、参加者14名の調査。

築約175年というから江戸時代後期・天保年代の建物と思われる。

上の写真は土間部分の豪壮な梁組。

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調査の担当は、矩形図の作成だったのだが、GLラインから天井までは自分で実測できるのだが、床下チームから基礎伏図、小屋裏チームから小屋伏図や高さ関係の野帳を見せてもらっての作図となる。

しかし この建物の小屋裏は中々複雑で、小屋梁と小屋束では芯ずれがあり調査・伏図の作成が難航していた。すべての作業が同時並行では矩形図の作成も中々まとまらず、夕方までにフリーハンドの矩形図が出来たのは梁間方向一断面だけだった。

日本の建築法制史を振り返る中で、近世民家のフィールドワークに参加して見聞きするのは欠かせない。というか文献読んでいるだけではわからないことが多い。

江戸時代には「三間梁規制」といって上屋の梁間は三間(約19.5尺)に制限されていた。寛永20年(1643年)「武家住宅法令」が定められ、明暦3年(1657年)に大名屋敷だけでなく町民屋敷へと規制は拡大されている。

しかし古民家を調べていくと実に色々な架構形式があり、三間梁規制を守りながらもあの手この手の工夫で架構方法を変えてながら大きな梁間の家を実現しようとしているのが見られて面白い。

約一か月後ぐらいには調査結果をまとめた検討会が開催されるらしいから、成果小屋伏図、架構図を見せてもらうのが楽しみだ。

コンクリート中性化試験

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現場でコンクリートの中性化試験をしなければならないので、1%フェノールフタレイン液とスプレー容器を買ってきた。

たまにしか使わないので100ml

通常コア採取した場合は、第三者の試験機関で圧縮試験とセットで依頼するのだが、今回は鉄筋の腐食状況と中性化だけ調べる必要があったので、自分で中性化試験をすることにした。

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RC壁を斫って鉄筋を露出させ、かぶり厚さ等を計測した後に、コンクリート粉末等を完全に除去し、スプレーで1%フェノールフタレイン液を噴霧する。

PH8.2~PH10.0のアルカリ側で紅色に変色する。

表面から紅色に変色した部分までの距離を測定し、写真撮影。

今度の調査では、自分で中性化試験をしなけりゃならないところがあると知人に話したら「大田区の町工場の親父みたいだ」と言われた。

まことに光榮なことだ。

「同潤会上野下アパート材料調査報告」(日本建築学会)

2013年に解体された最後の同潤会アパートの解体前の耐久性調査の報告書「同潤会上野下アパート材料調査報告」(2015年3月、日本建築学会・材料施工本委員会)を読んだ。

この同潤会上野下アパートは、竣工が1929年(昭和4年)である。

ここは建替事業でザ・パークハウス上野(三菱地所レジデンス)として生まれ変わるのだが、もう完成して入居開始が始まっただろうか。まあ 新しい建物にはあまり関心が無いので、この報告書についてだけ書いておこう。

今、戦前の鉄筋コンクリート建築物のコンバージョン・プロジェクトに参加しているので、どうしてもその頃の建築物や法令に触れることが多い。

この調査報告書では、コンクリート採取数が1号館で38本、2号館で31本 合計69本と4階建て延べ床面積2,093.99㎡(1号館556.80㎡、2号館1,537.19㎡)と約30㎡/1本となり採取コアが多い。現在の耐震診断の基準である3本/階から見ると約3倍の数となっている。

このコンクリートコアの圧縮強度試験は、柱・梁・壁・床と部位別と全体が示されていて全体で平均圧縮強度21N/m㎡という結果が報告されている。ただし床データを除外した場合には平均が19.5N/m㎡、標準偏差6.1N/m㎡となっている。

戦前の建物の構造部位別の調査報告というのが少ない。「同潤会アパートの施工技術に関する調査研究」(古賀一八他、2004年)で同潤会大塚女子(1930年)、同潤会青山(1927年)、同潤会江戸川(1934年)では、平均圧縮強度の部位別の内訳が不明なため強度や標準偏差の単純比較ができない。

今、関わっているプロジェクトでも数年前に耐震診断調査が終わって構造評定を取得している建物なのだが、コア採取が内部壁だけなので良くわからないことが多い。

ともあれ、学術調査でこれだけ念入りな調査を行い、調査報告書が世にでてくることは大変ありがたいことだ。

「高山市伝統構法木造建築物耐震化マニュアル」

飛騨高山市内の伝統構法建築物を耐震改修する場合は、このマニュアルに沿ってという事で、高山市役所でもらってきた。高山市のサイトでもPDFで公開している。

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労作である。長年にわたる調査研究に基づき限界耐力計算に近い計算方法である近似応答計算で耐震計算を行っている。

高山市から耐震診断・耐震改修費の補助金をもらう場合は、このマニュアルの講習修了者に耐震診断を頼まないとならないらしい。受講者は、ほとんど高山市内の人達。ちょつとクローズ気味の制度。

補助金を貰うかどうかわからないが、高山市内で伝統構法の耐震改修をする場合は、このマニュアルに沿って実施してみたいと読み始めた。

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気がつけば、最近は構造関係の文書ばかり読んでいる。どうも関心事が広がりすぎて自分でも制御しきれない。

爺さん婆さんが二人で営む「拉麺専門店」を指向していたのだが、だんだん「食堂」になりつつある。

ともあれ、木造に関心がある人には読んでもらいたい一冊。

「建物等の適正な維持管理を促進する条例」@豊島区

東京都豊島区は、竣工時に完了検査済み証を取得していなかった戸建て住宅を救済する「建物等の適正な維持管理を促進する条例」をH26年3月に制定した。所有者から申し出があった場合、工事着手時の建築関連法規に適合しているかを調査し適合していた場合は適合通知を発行する。検査済み証がないことから売却や賃貸が進まず、空き家化することを防ぐのが目的と当時報道がなされた。

この1年前に出来た条令について豊島区の新庁舎に出かけて建築指導課で資料を貰って来た。

(建築基準法令に関する調査)

第12条 区長は、建物等の所有者等が、建物等の現況を把握し今後の適正な維持管理に役立てるために、建築基準法(昭和25年法律第201号)第6条第1項第4号に掲げる建築物で、平成11年4月30日以前に同法第6条第4項に規定する建築確認済証が交付されており、同法第7条第1項の規定による完了検査の届出又は同条第5項に規定する検査済証の交付がなされていないもの(適正な維持管理が行われていない状態の建物等を除く。)について所有者からの申し出に応じて、現状の建築物が工事の着手時の建築基準法令の規定(同法第6条の3に相当する従前の規定にある建築物の建築に関する確認の特例に関わる建築基準法令の規定は除く。)に適合しているかを調査し、その結果を所有者に通知するものとする。

2 所有者は、前項の規定に基づく申し出を行うときは、規則に定める図書、書類等を添えて区長に申し出るものとする

3 区長は、現状の建築物が工事の着手時の建築基準法令の規定に適合するかどうかの結果を通知することができない正当な理由があるときは、その理由を記載し所有者に通知しなければならない。

要点をまとめると

  • 建築基準法の四号建築物(木造1、2階住宅)に限定している
  • 平成11年4月30日以前に建築確認を取得しているもの
  • 規則に定める図書・書類等を添えて申し出る→調査→結果通知

この条令の施行規則で定められている図書は、現況調査書/付近見取り図/配置図/各階平面図/床面積求積図/建築面積求積図/二面以上の立面図/地盤面積算定表/敷地面積求積図/採光計算書/室内仕上表/換気設備の仕様書/有効換気量計算書とあり、建築確認申請を新規に提出する場合とほぼ同様の設計図書が必要となる。建築確認申請書の副本が無い場合は、調査復元しないとならない。また現況調査書は、既存不適格建築物調書の場合の現況調査書とほぼ同じ調査をを行わないとならない。

これらの図書を添付し豊島区に調査を依頼して通知まで約2~3か月の期間が必要との事だった。実質的調査は豊島区から建築士事務所協会に依頼するらしい。また建築士に知り合いがいない場合は、専門家派遣制度があり初回のみ無料とのこと。

これだけの経費のかかる調査をし図書を作成し申請して適合通知が出たところで、この通知をもって「工事完了検査済証」に代わるものではなく「増築」等の確認申請には使えない。条令制定の際、国交省に相談して駄目と言われたらしい。

あくまでもこの条令の第12条に定める申請は、不動産の流通化の為であって増築等の確認申請の為のものではない。ということで条令ができて1年で第12条による申出は一件もないそうだ。

これだけの調査と図書を作成するなら建築基準法第12条第5項報告するのが賢明な方法だろう。それより問題は、建築主が増築申請の為に費用を捻出できるかどうかにある。

私も欲しい ドローン・ファントム

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首相官邸を偵察したり襲うわけではありませんが、以前からアマゾンのほしいものリストに入れていたドローン・ファントム。

純粋に既存建物の調査=外壁の劣化調査に使えそうだなあと思い、調べてました。住宅だと屋根の現況調査なんかにも使えそうです。このファントムは17万円程度なので手の届きそうな金額かつ業務にも使えそうな機種です。勿論 もっと本格的な高性能のドローンもあります。

ラジコンヘリで遊んでいる知人にドローン・ファントムはどうよと聞いてみたら、操作のなれないうちは1台や2台は壊すので、3台分は予算を組む必要がある。

飛行時間が短いから予備バッテリーや予備羽根まで購入する必要がある。あと墜落して人や車に損害を与える事もあるから損害保険も加入した方が良い。と何だかんだと諸費用を合わせると個人事務所の設備投資としては結構な金額に。

投資対効果がわからず購入は躊躇してました。

でも、誰かどこかの会社では採用するのでしょうね建物調査にドローン。

ところで首相官邸のドローンの目的は何だと思うと聞いてみたら、「あんなの遊び」「その気だったら昔からラジコンに武器を装備して襲撃できる」とのこと。それもそうだ・・・

文化住宅と建築法令

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3月8日の旧高田邸の詳細調査に参加して、築85年(1930年頃)の木造住宅としては、中々構造体はしっかりしていたのではないだろうかという感想を持った。

外部立面の採寸と立面図の作図が主要な担当だったので、他の調査者を時々覗く程度だったし、早計なことは言えない。詳しくは全体の調査資料が調査参加者に後で配布されるようだから、その調査資料をみてから再度検討してみたい。

この構造体の部材寸法、施工方法などは、大工さんの個別の経験的な裏付けに基づく技量によるものだろうか。あるいは 何らかの現在の建築基準法・施行令に規定されるような社会的な規定(定義・構造規定)があったものだろうか。

よく知られている事だが、現在の建築基準法(昭和25年法律第201号)の前は、市街地建築物法(大正8年・1919年公布)があった。それは建築基準法が定められる前に存在した「市街地における建築を規定する法律」であった。当時、国立市は東京府下なので、直接的にはこの建築法令の適用外となる。

木造の法的な規定(案)は、市街地建築物法(大正8年・1919年公布)ができる以前の、明治27年(1894年)の東京市建築條例案(東京市区改正委員会・妻木案)や、大正2年(1913年)東京市建築條例案(建築學會)に見ることができる。

明治39年に東京市長・尾崎行雄が建築學會に建築條例の作成を依頼して、6年半の歳月をかけて大正2年(1913年)に238条からなる東京市建築條例案(建築學會)と途中案4編、諸外国条令資料16種を東京市に提出した。

それが先に書いた大正2年(1913年)東京市建築條例案(建築學會)である。

そこには大正・戦前昭和の文化住宅と建築法令(構造規定等)についてのみならず、現在の建築基準法につながる規定が網羅されている。

例えば木造の構造関係の規定は、下記のような事が記載されている。

  • 土台は柱と同寸以上の角材で
  • 上下横架材距離に対する柱の小径の割合は、階を下るごとに増加
  • 柱の欠き取りは1/3まで、やむ得ない場合は鐵具を附加
  • 筋違を壁体に配布する
  • 小屋裏、天井上、床下が木造の時は換気孔を設ける
  • 柱は上下に大きな枘を有してはならない。
  • 等々

これらの規定は、「木造耐震家屋構造要領」(明治28年)、「家屋耐震構造要便」(大正4年・佐野利器)と類似しているものが多いと言われているので、大正2年(1913年)東京市建築條例案(建築學會)に規定されている木造の構造規定は、ある程度、業界内に普及していたのではないだろうか。というのは私の推論。

旧高田邸詳細調査

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国立市にある築85年の文化住宅・旧高田邸の詳細調査に参加してきた。既報のように国立市民等のプロジェクトに住宅医協会で協力する形で調査を行った。今日の調査には25人の参加とのこと。

無報酬の調査・ただし昼弁当、味噌汁、飲み物付き

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玄関アプローチ

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午前中は小雨、午後は雨は上がったが曇に覆われていた

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私は、採寸グループで東側立面図の作図を担当した。大まかな実測、矩形図等の他の採寸者と情報を突合せ、フリーハンドで1/50立面図を作図した。

採寸してわかった事だが、2階軒高が現代の木造住宅より1m近く高い。2階の軒の出が3尺、1階屋根の軒の出が2尺5寸ほどだった。

全体としてライト風な水平線を強調するデザインになっている。

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詳細は、住宅医協会のサイトで紹介されている。

http://sapj.or.jp/syousaichousa2015-45/

環境家計簿

住宅医スクール2014で岐阜県立森林文化アカデミーの辻先生から出されていた宿題「自宅の環境家計簿」の為に、過去の電気、上下水道、都市ガスのそれぞれの使用量と代金を調べていた。

領収書から概略把握できたのだが、東京電力と東京都水道局は、過去二年分の使用量と使用代金を知ることができるというので申込みをしていた。

今日、東京電力の「でんき家計簿」の登録が完了したということで早速過去二年分の使用量と代金を見てみたら、やはり8月と12月、1月、2月は群を抜いて高かった。

1階と2階半分が事務所、2階半分と3階を住まいとして使っているので統計上の標準家庭とは比較にはならないが、エネルギー消費は多い。

辻先生の宿題を提出するとそれぞれのエネルギーを用途分解するソフトを無料でいただけるとのこと。

そのソフトは、電気代なら照明と冷暖房、都市ガスなら給湯と調理というように分解して算出するものだそうだ。

住宅だけでなく改修設計をする場合「環境家計簿」を作成しておくと その建物のエネルギー上の問題点を把握できそうだ。

「環境家計簿」は、血液検査のようなものかな。

住宅医検定会・2014東京

住宅医スクール2014(東京)の最後に行われた「住宅医検定会」

3人の方が発表され、それに対して温熱、構造の各専門分野の方、住宅医理事等の検定委員が質疑をするという方式。

各自プレゼン15分、質疑10分というのは、あまりにも短かった。それぞれが改修事例でありもっと時間をかけてもよかったと思う。聞きたいこともあったが、検定委員からの質疑だけに終始してしまった。

意外と技術者同士の意見交換の場は少ない。住宅に限らず既存建物の調査・検査方法は段々収斂され定まってきた感があるが、その調査結果に対する評価・診断は判断に迷うことが多い。

建物診断・耐震診断・インスペクション等個々の専門調査は深まりつつあるが、それらを統合化するところの総合診療医(ドクターG)のようなプロフェッサーが求められてきているように思うし、学問的には建築病理学の構築が求められている。

「住宅医」も必要だが「建築医」も必要では

と私は思っている。

ところで検定会の話しに戻そう

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1番目の発表者は、鹿児島から来られた2013年住宅医スクール終了の住宅会社の方。

長期優良住宅リフォームの補助金を受けた住宅で、南側採光を阻害していた車庫を減築し、太陽光パネルを設置するために2階部分の屋根を切妻から片流れにして住宅の雰囲気をモダンなものに一新させた。

温熱は仕様規定を採用していた。調査は、協力会社10社の参加で行ったというところは住宅会社の強み

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2番目の発表者は、2013年住宅医スクール終了の都内の設計事務所の方。

建蔽率ぎりぎりで増築の余地はなく、予算上、主に1階部分の改修の為、住宅医的性能(6指標)はあまり向上していない。1階のバリアフリー化が改修目的だったので、階段の位置を変え温熱のゾーニング改修を図っている。

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3番目の発表者も、2013年住宅医スクール終了の都内の設計事務所の方。

非常に限られた予算(600万円程度)の中での改修事例で、きっかけは耐震診断調査からとの事で、耐震性能の向上が主眼だが、温熱のゾーニング改修等に取り組んでいた。

みんな色々と苦労・苦闘しているのが発表からわかった。

私も木造3階建ての温熱改修の相談を受けているところだが、都内の木密地区なので隣地建物との離隔距離がなく外側断熱改修は難しい。建蔽率ぎりぎり、屋根は高度斜線ぎりぎりのため、とにかく内側だけで断熱改修を考えるしかない。

木造3階建て・階段竪穴区画免除の建物なので1階と3階の縦の温度差が激しい。縦の温度差が激しいのを何とかならないかというのが温熱改修の動機なのだが、階段を扉で閉ざすのは生活上支障が多い。吹抜け状態を確保したままの断熱改修は中々難しい。

住宅医スクール2014(東京)修了

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1月22日に「住宅医スクール2014(東京)」の全講義を受講して修了書をいただいた。

2014年6月から、ほぼ毎月1回の全8回×3コマ=24講座と特別講義8講座という、今時珍しい長期間の講座を受講しなければならない。そして検定会で事例発表をして「資格あり」と認められないと「住宅医」という称号は与えられない「住宅医スクール」。

これは、半日講習で資格を授与するという粗製濫造の民間資格が多い中で異彩を放っているといえる。

修了会の後のパーティーで「骨のある講習会」と評してきた。

岐阜県立森林文化アカデミーと同様に、木造建築病理学を体系化して改修調査・設計の人材育成を図っている。

住宅医協会の皆さんの熱意には頭が下がる。

木造・住宅には、業務として関わりが薄いが、木造は中々奥が深い。

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建築病理学の構築 -2

 

■建築病理学

ヨーロッパやアメリカでは、古くから歴史的建築物の補修が盛んであり、経験的・個別的にノウハウが蓄えられてきた。

日本でも補修に関する技術は、経験的・個別的に蓄えられてきたといえる。

建築病理学は、改修理論や技術を体系的に学び、全ての建築物に生じる欠陥、不具合の技術的側面を考究すること、建築設計や施工、使用過程における重大な欠陥・不具合を診断し予防するための情報を提供することが目的である。

今、ストック活用を進めていくためには、全構造・構法にわたる建築病理学の構築が必要となっている。
イギリスでは、建築病理学を用いて、

1)既存建築物の劣化診断、補修設計、

2)建物の担保価値の評価、

3)建物の適法性評価、

4)過去の修繕効果の検証、

5)維持管理・補修工事の根拠提供、

6)建物の用途変更時の根拠提供

7)修繕義務違反建物に関する法的措置の根拠提供などに応用的利用がなされている
■岐阜県立森林文化アカデミーの木造建築病理学課程について

欧米に比べ日本では住宅の診断業務がビジネスとして、まだまだ十分に広がってはいないが、今後の建物の高寿命化と性能の確保の必要性から、必要不可欠な技術体系であると考えられている。

岐阜県立森林文化アカデミーでは、英国での建築病理学とその関連資格を紹介している中島正夫先生(関東学院大学)監修のもと、2006年度に授業科目として「木造建築病理学課程」を設置した。これが教育機関では日本初の設置となる。

木造建築病理学課程は、「木造建築病理学」(講義・実習、60時間)及び「木造建築病理学実習」(実習、60時間)の計120時間からなっている。この課程の開講期間は、2年間に渡る内容となっていて、実物件での調査を3回以上参加し、診断レポートを作成することで実践力を身につけます。さらに、これらの講義及び実習を受講した後、中間試験及び最終試験という2回の試験がある。

「木造建築病理学課程」では、以下のような授業構成となっている。

1)建物の長寿命化の必要性

2)建築病理学とは

3)耐震調査の目的・内容とその手順

4)各種検査機器と使用法

5)構造的不具合の原因と対応策

6)木材の腐朽と防腐

7)現場における検査手順

8)報告書作成法

9)床・壁・屋根、その他の不具合とその対応

10)建築病理学の必要性

11)床下環境について~防蟻対策

12)温熱環境の改善と対策

13)法規・制度関連

14)室内空気質の改善と対策

15)契約依頼者との契約上の注意 など。

既存木造住宅の調査 -4

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築50年近い平屋の木造住宅の現況調査に参加した

外壁板張り、内部は漆喰の築50年近い部分と築40年ほど経過した増築部分とからなり、増築した部分あたりからの雨漏りが起きている住宅で、解体して建て直すと聞いた。

古い建物は下地が良くわからないことが多く、現在では当たり前のようにクロス下地は石膏ボードだが、塗り壁やらが混在しているとわかりづらい。

電気のスイッチプレートを外して下地の石膏ボートを確認しているのが上の写真。

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土台には檜が使用されていて、現況調査の段階では土台、基礎は 意外にも健全なようだった。

この後内装材等を撤去した後の劣化調査をしてみないとわからないが、残念ながら劣化調査に参加できない

増築部分からと思われる雨漏りに悩まされなかったら、この建物は もう少し長生きさせてあげられたのではないかと、帰路の電車の中で思った。

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壁、天井、床と断熱材が入っておらず、これではさすがに東京でも冬は寒かったはずだ。

床下は土で 温度12度、湿度39%だった。

「環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム」IN 東大

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環境時代のビルディングエンベロープを考えるシンポジウム~省エネ・健康リフォームをいかにして普及させるか~in  東大に11月20日参加して来た。

ビルディングエンベロープすなわち外皮を多面的・複眼的に捉え環境時代の外皮に相応しいものを見つけ出すヒントを得るというのがシンポジウム開催の趣旨とのこと(坂本雄三・建築研究所理事長)

第三回目となる今回のシンポジウムでは「住宅の省エネリフォーム」について集中的に議論しようとした企画となっていた。

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【会場の伊藤謝恩ホール】

三人の講演と五人の異なる分野からのパネラーの参加によるパネルディスカッションでみっちり4時間

この分野で、現在どういう取り組みがなされているのか解った。

既存木造住宅の調査 -3

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築50年弱の木造2階建て住宅

外壁は、懐かしきラワン羽目板(t=12)にオイルペイント塗り

塗膜があちこちはがれかかっている

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内壁を壊して、断熱材を取り除いた状態

ラワン羽目板はシミだらけだが 意外にも腐朽はあまり見られなかった

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外壁のラワン羽目板の内側には、防水シートのようなものは貼っていなく、羽目板の下はグラスウールが貼られていたが、写真のようにシミで黒ずみ、黴臭かった。

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床下は土のままなのだが、土台・基礎廻りの状態は健全で、一部柱材が蟻害にあっていただけだった。

この建物は解体され あらたな住宅が建てられるのだが、もう少し以前に、詳細な調査をして外壁・断熱関係をリニューアルしたら長寿命化できたのではないかという感想をもった。

勿論 設備関係の機器も年期がきているようには思ったが・・

調査も国土交通省のガイドラインに沿った程度のインスペクション。すなわち現在通常行われている調査で、このような建物の状況を把握できたかというと疑問があり、住宅医協会で行っているような詳細調査をしなければ、全体の状況を把握できなかったのではないかと思う。

松竹梅でたとえるなら、通常のインスペクションが「梅」で、住宅医協会の調査は「松」

 

検査道具 -2

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左から

ヘッドライト(LED)・・ヘルメット等に取付、手が自由に、中々光量が満足できるものがなく、結局手持ちのライトも併用してしまう。

クラックスケール(カード型)・・コンクリート等のひび割れの太さを計測

レジタル温湿度計・・最近は温湿度が気になって常に計測

レーザー距離計・・天井高、室内内法等 一人で計測

打診棒・・モルタルやコンクリートの浮き、剥離箇所推定

非常用照明点検フック・・非常灯の点検

 

 

既存木造住宅の調査 -2

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築32年木造平屋建て住宅の床下

大引き、束は、見てのとおり 白蟻でボロボロ

この家は、床暖房をしているゾーンのみが白蟻被害にあっていた。

床暖房部分の床構成は、室内側からカーペット、電気床暖パネル、合板、根太、床下部分に断熱材としてグラスウールが施工されていた。

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床下には、捨コンが施されていて床下温度が19度、湿度54%だった。思っていたよりドライ。

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床暖をしていないゾーンの床下の状態

ざっくり見たところ腐朽箇所や白蟻被害は見当たらない。

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床下に捨コンは一応しているようなのだが、端部は土が露わになっている。

この床暖をしていない和室の床下温度は21度、湿度60%だった。

床暖をしていない状態で温度も低く、湿度も低い床暖をしているゾーンが白蟻被害にあっている。

また北側の台所の床下は、もっと湿度が高かったのに床下に腐朽は見られなかった。

床暖房をつけた時に床下の温度が上昇しても、湿度はあまり高くならない状態が予想される。それが白蟻達の世界では ハワイのようなものだったのではないかと想像してみる。

既存木造住宅の調査 -1

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今、国土交通省・国土技術政策総合研究所の中古住宅、ストック再生に向けた既存住宅等の性能評価技術開発プロジェクトの一環である既存木造住宅の劣化実態調査に参加している。

解体前の既存住宅の周辺環境や建物周囲の局地環境、建築各部のつくり(材料構法)及び表層に現れている変状等の目視調査(現況調査)を行い、解体中に壁体内等の隠蔽された構造躯体等の劣化状況の調査(劣化調査)を行うもので、断続的に調査の予定が入る。

写真は、築29年の木造2階建ての住宅で、スケルトンリフォーム(構造体以外は解体)を行う住宅の水回り基礎部の写真。

台所流し台の下部にあたる基礎の入隅部に蟻道があったが、土台の米栂防虫防腐処理土台でブロックされていた。右側下部の排水管後施工の隙間から侵入したものとみられるが、黒蟻もいたから彼らが白蟻を食べてしまったのかも知れない。

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土台は、日立電線の米栂防虫防蟻処理土台で、床下が土のままで防湿対策はこれといって行っていなかったが腐朽部分はなかった。南側の木材の吸水率は15%程度で北側水回りの土台吸水率は28%程度あった。

劣化状態は概ね良好で、築30年前後でスケルトンリフォームをするのは、建物の長寿命化のために懸命だと思った。

学術調査的手法での調査参加は久しぶりというか学生時代以来。一兵卒としてフィールドワークに参加して汗をかくのは楽しい。

建築病理学の構築

「建築病理学」とは、1993年国際建築協議会で「Building Pathology」として定義され、

  1. 既存建物の欠陥の同定、調査、診断
  2. 診断された欠陥の経過予想
  3. 補修設計とその監理
  4. 補修建物のモニタリングと評価(機能、性能、経済性)

を主要な内容としている。

イギリスでは、改修の検査業務を請け負う134年の歴史を持つ公認資格「RICS」がある。

木造の分野では、一般社団法人・住宅医協会や岐阜県立森林文化アカデミー等で体系化して技術者の育成を図っている。

自分は業務としては、木造にほとんど関わっていないのだが、現在、「住宅医スクール2014・東京」を受講している。

月1回24講座+特別講義8講座を受講して実践的な調査を行い報告して認定されないと「住宅医」という称号は授与されないという。今時、粗製濫造ではないかと思われるような資格が氾濫しているなかで気骨あふれるセミナーの内容だと思ったのが受講の動機である。建築病理学を木造分野で体系化しているというので、そのカリキャラムの構成にも関心があった。

自分が業務として関与しているのは、ほとんど特殊建築物だし、鉄筋コンクリートや鉄骨造だから、そちらの総合的な診断には大いに関心があったが、住宅医セミナーのカリキュラムは、木造住宅の「リノベ+エコ」というような内容となっている。

住宅医セミナーでは、建築法規の内容が薄いと思っているが、木造住宅が主要な対象となっている事から仕方ないのかも知れない。

ただ、木造建築でも住宅からグループホームやシェアハウスへの用途変更、検査済証の無い増築等も事案として増加してきているので、もっと建築法規に触れるべきだろうと思った。

私が関わっている特殊建築物(RC・S)の増築・用途変更では、建築法規は必須であり、その分野の業務(調査・許認可)だけでプロジェクトに招聘されることが多い。

ストック活用と言っても、細分化した建築技術を統合する「総合診療医・ドクターG」ような人材を育成する「建築病理学」を学問的に構築をするべきではないかと考えるこの頃である。

不動産から見る京町屋の活用法@住宅医スクール2014

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「不動産から見る京町屋の活用法」と題した、京都の(株)八清(ハチセ) 代表取締役社長 西村孝平氏の話を聞いてきた。

一般社団法人住宅医協会の住宅医スクール2014の一講座

「築年数30年以上の建物評価のない建物をリノベーションする事で、再びストックとしてよみがえる住宅の総称である」と定義づげした「リ・ストック住宅®」を展開しているが、中でもヒットしたのは「リ・ストック住宅 京町屋」だそうだ。

私の亡父が京都市街の出身なので、おのずと訪れる機会も多いなかで京都市内に空き家が多いのは知っていた。道幅が狭い、駐車場がとれない、接道していないので再建築不可、何よりも夏暑くて冬寒いのが京町屋。アジア太平洋戦争での戦災が少なかったせいで、戦前からの建物。建築基準法(昭和25年)以前の建物がゴロゴロしている。

西村氏の講義によると、(株)八清の京町屋は新しくても築64年とか。(株)八清では、これまでの不動産業界の常識であった築年数で評価するのをやめた「経年美は古くないと評価できない」と語った。

様々な京町屋改修事例、危険家屋再生を見せていただいたが、その一つ一つが老朽家屋の再生、京都市内で増えている賃貸住宅の空き家の活用、それらがまちづくりに結び付いている。

(株)八清のビジネスは、「リ・ストック住宅 京町屋」から、町屋の貸切宿泊施設「京宿屋」と広がっている。

「京宿屋」は観光客の多い京都らしいビジネスモデル。町屋の保存再生、景観維持・保全に貢献しているし、伝統建築である町屋の居住体験を提供している。オーナーとして「京宿屋」を所有して、自分もセカンドハウスして使うこともできるという。賃貸するより収益性の高いビジネスモデル。

私もネットで7月8月の幾つかの「京宿屋」の予約状況を見てみたが、中々稼働率は高そうだった。

それから京町屋のシェアハウス「京だんらん」というのも展開している。大店(おおだな)の京町屋は、面積が大きくてリ・ストックして貸家や売却するには不適格なケースがある。

随分と共用部が多いシェアハウスで、レンタブル比というドグマ(教条)に浸かっている頭では理解しがたいビジネスモデル。「京都だからできるんだよ、東京では無理、無理」と即座に断定されそうだ。

とにかく(株)八清は次から次と 新しいビジネスモデルを展開している。

町屋を改修すると同時に隣接する道を石畳に整備して地域のポテンシャルアップにつなげる「石畳プロジェクト」。「京町屋証券化と京町屋管理信託」「京町屋ファイナンス」・・・

ちょつと目を離せない会社の一つになった。

「株式会社 八清」(ハチセ)

http://www.hachise.jp/

 

 

狭小空間点検ロボット「moogle(モーグル)」

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大和ハウス工業が開発した床下等の狭小空間点検ロボット・moogle(モーグル)

住宅の床下点検を主な用途として開発されたロボット。
暗所、閉所の作業は点検員の負担が大きい。空間が狭く作業効率が悪い。埃や粉塵がある場所での作業は、人体へ悪影響がある。
外部からは作業内容を確認できない。様々な障害物で確認できない箇所がある。最近は床下が少なく、もぐって点検できない。デブにはとっても無理。

ということで幾らするのと聞いたら、1年保証付で200万円。5年保証付で230万円とか。

リースもあるらしいが月5万円ぐらいにはなりそうで、高嶺の花

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【写真は大和ハウス工業サイトから】

やっぱり 調査は汗をかかないといけないようだ。

http://www.daiwahouse.co.jp/robot/moogle/index.html

 

「制度的・技術的側面からみた建築ストック活用促進のための研究」@建築研究所

H25年度・(社)建築研究所の講演会「制度的・技術的側面からみた建築ストック活用促進のための研究」のテキストを読んだ。

材料研究グループの濱崎主任研究員の研究成果で、これを読んでストック活用の問題点は徐々に整理され、実務的研究が進んできているという感想を持った。

「あと施工アンカーの長期性状」「耐久性を確保するためのかぶり厚さの確保」(ポリマーセメントモルタル)「建築ストック活用手続きのための建物調査・確認」の三項目は、実践的課題だ。

「建物調査・確認」については建築研究所で、マニュアル案を取りまとめ中とあるが、完了検査済証未取得建物の調査・確認にも触れているのが心強い。

ストック活用のためには完了検査済未取得建物の問題は、避けて通れない。

調査方法や確認方法、評価方法は件数が増えていくに連れて徐々に収斂され確立していくだろうが、現在大きな問題としては、基礎・杭の確認方法と評価をどうするかという問題を抱えている。

掘削できれば基礎の根切深さ、配筋探傷、コア抜きができるし、杭頭を明らかにすることぐらいはできるだろう

掘削できないような密集市街地では、基礎の確認と評価をどうするか?

頭が痛くなる・・・

http://www.kenken.go.jp/japanese/research/lecture/h25/index.html

 

既存建築物の法適合性の確認の取扱い@奈良県

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奈良県庁

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丹下健三の香川県庁舎を踏襲したような、戦後モダニズムを彷彿させる建物

 何となく懐かしいというか・・・。

今回は、建物の見学記録(後で建物の写真は掲載)ではなく、仕事の記事。

「遊んでばかりいるんじゃないの」と言われる事があるので

完了検査済証を取得していない建物について、奈良県庁建築課に御相談に行きました。

奈良県は「既存建築物の法適合性の確認の取扱い」というのを

平成25年6月に制定していたので、今回具体的プロジェクトについて打合せをしてきた次第

奈良

これから種々の調査・非破壊検査をすることになるが

法第12条5項報告の提出となりました。

添付する様式は、大阪府のものを参考にしたように思える

それにしても現行法上は12条5項で処理するのが最適と思うが

なかなか やってくれない行政が多いんだよね~

(愚痴)

http://www.pref.nara.jp/3916.htm