公立学校「屋根貸し」が増加している。
自治体が所有する学校建築の屋上を、太陽光発電パネルを設置する事業者に屋根を貸し出して賃貸料収入を得る。
同時に子供達の環境教育にも役立てようという試み
これも立派な既存建築物の「活用」だ。
<エネルギー再考>公立学校「屋根貸し」増加 自治体の太陽光発電
2013年2月4日
校舎屋上に設置された太陽光発電パネル=栃木県足利市の青葉小学校で学校の校舎の屋根に太陽光発電パネルを取り付ける事例が急増している。公立学校の建物の所有者である自治体が、パネルを設置する事業者に屋根を貸し出す方式が確立し、自治体が多額の予算を使わずに済むようになったからだ。太陽光発電の現場が身近にあることを環境教育で生かそうという機運もある。 (白井康彦)
「市の予算で小学校に太陽光発電設備を設置していく計画でしたが、民間資本を活用する方式に切り替えました」。愛知県刈谷市教委教育総務課の塚本吉郎施設係長は、こう強調する。
同市は市の予算を使って、二〇一〇年度に市内六つの全中学校に太陽光発電パネルを設置。一三年度からは、五年がかりで十五小学校すべてに太陽光発電を導入する予定だったが、屋根貸し方式に切り替えた。建物所有者が屋根を貸し出し、借りた事業者がパネルを設置・管理して発電した電気のすべてを電力会社に売る仕組みだ。
刈谷市は貸出先の事業者を公募。十四校は一月に優先交渉する事業者を選んだ。パネル設置などの工事は来年三月までに完了させる。残りの一校には応募がなく、対応策を今後検討する。
十四校合計で、貸し出す面積は約六千七百平方メートル。年間約百十万円の賃貸収入が得られる見込みだ。十五校すべてに従来方式で太陽光を導入すると、約五億円の予算が必要だったので、節約効果は非常に大きい。
昨年七月、再生可能エネルギーで発電された電気の全量固定価格買い取り制度がスタート。電力会社が買い取る価格が高めに設定されたため、パネルを設置する事業者は屋根を借りても採算が合いやすくなり、屋根貸し方式が普及し始めた。
借りる側から見ると、建物を所有するのが民間企業の場合には、倒産などで建物が壊されるリスクがつきまとう。自治体の建物ならそうした心配はいらない。自治体が所有する建物の中で、パネル設置に適しているのは、屋根が平らで面積が広い学校だ。
こうした事情で、昨年から神奈川県、岐阜県、新潟県、栃木県足利市、愛知県碧南市など全国二十以上の自治体が公立学校を中心に、屋根貸し方式で太陽光発電を導入する手続きを始めた。足利市は着手時期が早く、既にパネルが設置された学校もある。
学校の太陽光発電は、環境問題に熱心な自治体が自前の予算で徐々に導入するのが普通だった。しかし、屋根貸し方式で、多くの校舎屋根に一斉にパネルを取り付けるパターンが目立ち始めた。
この流れをリードしたのは、黒岩祐治知事が太陽光発電の普及に熱心な神奈川県。屋根貸し方式の課題を細かく検討して対応策を作り、それを情報発信してきた。同県太陽光発電推進課の山口健太郎課長は「全国百以上の自治体から問い合わせがあった」と反響の大きさを説明する。
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埼玉県川越市は、市立の小中学校すべてに太陽光発電パネルを設置済み。児童・生徒が発電量の表示板を見て発電の仕組みを学習したり、発電量や二酸化炭素削減量のグラフを作ったりしている。川越市は環境にやさしい取り組みをする学校を「エコチャレンジスクール」と認定しており、この取り組みの中で太陽光発電設備を生かす学校が目立つという。
神奈川県は、昨年秋に県立の二十学校の屋根の貸出先を公募した際、「教育環境に資する提案」も求めた。これに対し、「太陽光発電や省エネの知識を勉強できるテキスト、ビデオ、実地講習を提供する」と応じてきた事業者もあった。
校舎の屋根のパネルは、環境問題の教材にもなる。教育関係者だけでなく、パネルを設置する事業者も一緒になって、環境教育への生かし方を考えていくのがよさそうだ。http://www.chunichi.co.jp/article/living/life/CK2013020402000162.html
「既存建築物の屋上に太陽電池発電設備を設置する際の建築基準法の取扱いについて」という技術的助言(国住指第1153号・H24年7月4日)がすでに発表されている。
公共建築物は耐震診断調査が行われることが多いが、もう少し視点を広げた「ストック活用調査」をする必要がある。
屋上に架台を取り付け、その上にソーラーパネルを設置する行為は、増築ではなく建築確認は不要であるというのが上記の技術的助言だが、荷重が増えることは間違いないし、その技術的・構造的検討は必要である。
また法的に面積を増やせるのか、あるいは縮小しないといけないのか、可変性の可能性等、従来とは異なる「ストック活用調査」が必要である。