「売上を減らそう」佰食屋・中村朱美 著

京都の国産牛ステーキ丼専門店・佰食屋。

「働き方を極限まで絞ることで売上を上げているお店」「働き方の形は自分の人生に照らし合わせて決めることができる」つまり、どれだけ儲かったとしても、「これ以上は売らない」「これ以上は働かない」あらかじめ決めた業務量を、時間内でしっかりこなし、最大限の成果を挙げる。そして残りの時間(人生)を自分の好きなように使う。

2019年日経WOMAN「ウーマン・オブ・ザ・イヤー2019」大賞(最優秀賞)を受賞した中村朱美さんの本。1984年生まれとあるから、まだ30代。男社会にどっぷり浸かり、サラリーマン、零細企業の経営を経験してきた自分にとってコペルニクス的視点。中村さんは、凄い経営者だと思った。

女性目線、子供・家庭を持つお母さん目線での働き方改革、経営システムだと感じた。

「100食という「制約」が生んだ5つのメリット」を挙げている。

メリット1「早く帰れる」退勤時間は夕方17時台

メリット2「フードロスほぼゼロ化」で経費削減

メリット3「経営が究極に簡単になる」カぎは圧倒的な商品力

メリット4「どんな人も即戦力になる」やる気に溢れている人なんていらない

メリット5「売上至上主義からの解放」よりやさしい働き方へ

とても参考になった。自社の商品力を磨き上げる事。8時間働けば暮らせるようにする。固定経費を削減する。プロジェクトの設計チームを編成する時は多様性を基本として考えや感覚が設計に反映できるようにする。self-reflection(内省)する時間を確保して勉強や読書、WEB更新にあてる。 そんなことを自社の経営で考えた。

この本の出版社ライツ社は、兵庫県明石市にある。出版不況が叫ばれる中、快進撃を続け社員は6人と小規模ながら、独創的な企画でヒット本を連発し、重版率は何と7割を記録するという。2016年創業。writes.right.light「書く力で、まっすぐに、照らす」を合言葉に、ジャンルにとらわれないでないで本をつくっている。ヒットを生み出すアイデアはどこにあるのだろうか。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-6

【建築確認記載台帳証明(行政によって名称は多少異なる)】

建築確認や検査が行われた建築物であるかどうかについては、建築確認済証や検査済証により確認することができる。しかし建築物が建てられてから相当の年数が経過する中で建築確認済証や検査済証を紛失する場合もある。又不動産が流動化し図書・図面が承継しない場合もある。既存建物の図書・図面の保管が軽視されている場合も散見する。

 このため特定行政庁では、あらかじめ調べた建築確認済証や検査済証の交付年月日・番号が行政に現存する台帳に記載されていることを、台帳記載事項証明書として証明するサービスを行っている。(建築確認済証や検査済証を再発行するものではない)

a 検査済証交付年月日は、検査の状況によって台帳に記載がない場合がある。
b 台帳が現存していないため証明書が発行できない場合がある。


この建築確認記載台帳証明は確認申請副本等があり、確認年月日、確認番号、敷地の地名地番、建築主の住所・氏名が判る場合は取得がたやすいが、それらが判らない場合は取得が困難になる場合があるので、事前に次の事項について調べて行かないと成果を得られない。
・ 建築当時の地名地番(住居表示ではない。)
・ 建築当時の建築主名(現在の所有者と同一でない場合がある。)
・ 建築確認や検査済などの年月日・番号(区の受付年月日・番号ではない。)
・ 上記のほかに建築年月日、敷地・建築・延べ面積、階数(何階建てか)、工事種別、構造、用途を示せば、物件の特定がしやすくなる。

 台帳そのものの閲覧が可能なところ(大阪市・現在は未確認)、台帳証明の発行には現在所有者の委任状が必要なところ(愛知県内、岐阜県内、名古屋市、藤沢市等)、建築計画概要書の写しには情報公開請求が必要なところ(松山市、市川市等)様々。又記載台帳証明の発行そのものを行っていないところ(埼玉県内の特定行政庁等)もある。

 総じて昭和46年以前の台帳証明を取得するのは困難で、昭和20年代、昭和30年代の台帳証明は、さらに取得が困難であると思った方が良い。古い年代のものは、台帳そのものに記載されている事項が少なく、物件の特定が難しいですし、又行政によっては欠落している年度がある。

 又、昇降機や工作物がある場合には、建築とは別個に請求する事が必要。さらに中間検査が必要だった建物の場合、中間検査を受けているかどうか確認できる場合がある。

【串刺し的に台帳証明を取得するのは困難】

 仮に新築時の建築確認の台帳証明が取得できても、その建物が増築したり、用途変更した時の履歴が判るような台帳証明や建築計画概要書を取得するのには中々難しいのが現状です。

 行政は建築確認台帳を年度別に整理してあることが多いので、増築や用途変更の時期を想定しないと探し出すのは難しい。

 また行政の窓口職員の資質、請求時間帯なども影響して取得に相当な根気が必要となることがある。

 古い建築確認申請台帳を閲覧できる大阪市等(現在は未確認)の場合を除いて申請者は、直接台帳を調べられない。

 その中で、地図上の建物をクリックするだけで、その建物の新築、増築、用途変更などの申請履歴が「串刺し」でわかる神戸市の「建築確認情報セルフ検索システム」に10年程前に出会った時は感動した。最近ではこういうシステムが導入された行政も増えてきたが、予算の関係で中々整備が進まないようだ。

【神戸市建築確認情報検索システム】

【地番や所有者は変わっていても建物の位置は変わらない】

 町名地番の整理によって建築確認申請提出時と現在の地番とが異なっている場合がある。まず現在の地番を確認した後で、登記情報を取得するようにしている。

 又、不動産が流動化する現代では、建物の所有者が新築時からずっと変わらないとは限りない。現在の所有者と建築確認申請時の所有者は一緒なのか、登記情報を取得してみることも必要となる。場合によっては閉鎖謄本も取得するのが必要となる場合もある。

 尚、土地の地番は判明しても家屋番号が不明で登記情報を取得できない場合があるが、土地の登記情報を取得する時に「共同担保目録」も同時請求すると家屋番号が判明する。

【登記情報を取ってみる】

 今は、民事法務協会というところがインターネットで各種登記情報を取得できる有料登記情報提供サービスを行っている。他にゼンリン等の民間会社でブルーマップ(住宅地図に地番を重ね合わせたもの)のインターネット取得サービス(有料)をしているところもある。勿論当該地の法務局に足を延ばして登記情報を取得することもできる。

【民亊法務協会・登記情報提供サービス】

https://www1.touki.or.jp

 登記情報で建物の面積算定図を取得して新築時=登記時面積算定時を比較し新築時には屋上の増築部分が含まれておらず、後から無届で増築したことなど工事履歴がわかったことがある。

 こうしたことからガイドライン調査では、登記情報は任意書類の扱いになっているが、建物の工事履歴を調べる点や、住宅金融公庫の融資住宅であるかないかの確認、竣工時期を推定するうえでも登記情報を事前に取得することは必須だと思う。

 後に触れるが、既存建築物が住宅金融公庫融資住宅であったことが判明した場合、ガイドライン調査では、構造規定の調査は除外することが可能とな場合もある。(建て方時の中間検査に合格していないと融資実行されなかった。昔は特定行政庁で審査・検査代理)

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-5


これまで、検査済証のない建築物は違反建築物なのか、既存不適格建築物なのか判断が難しく、調査に多大な時間と費用を要する場合があることから、結果として増改築や用途変更を実現できないケースが見受けられた。
また、国土交通省に設けられた「中古住宅の流通促進・活用に関する研究会」による報告書(H25年6月)において、「検査済証のない中古住宅に係る法適合確認手続きの検討」として、検査済証のない中古住宅が、建築や増改築当時の建築基準関係規定に適合していたかどうかを民間機関等が証明する仕組みの創設の検討が指摘されていた。



「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-4

【特定行政庁(建築主事)・指定確認検査機関による検査済証交付件数・完了検査率の推移】

上記の図は、国交省が発表している1998年(平成10年)から2012年(平成24年)にかけての完了検査率の推移を示すグラフ。平成10年当時はは、完了検査率が約40%だったが現在は約90%になっている。

 築後20年から30年ぐらいの建築物の増改築したいという希望が比較的多く、それらの半数以上は検査済証が無い建物であり、検査済証の無い建築物を増改築等する事は増加すると思われるので、建築士の方は一部の専門家任せにせず本項の「ガイドライン調査」に習熟しておく必要があると思う。

 特定行政庁に検査済証のない建物の増改築等の建築確認申請を出す場合には、特定行政庁により定められ調査方法や書式により、法12条5項報告書として提出する場合や建築確申請の付帯図書としている場合等があるが、特定行政庁に検査済証のない建物の増築等確認申請を提出する場合については別稿として記載する。 

 筆者が2014年に、全国500数十件の特殊建築物の建築確認記載台帳証明を取得して整理したところ完了検査率=検査済み証がある建物は、大規模な建物は検査済取得率が高く、中小規模の建物になると取得率が低くなり、住宅になると極めて低くなるという傾向が見られる。

 最も確認検査数の多い旧建築基準法6条4号建築物(木造2階建て・一戸建て住宅等)については完了検査の義務はあっても使用制限がないことから事実上の無検査が横行していた。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-3

【「ガイドライン調査」策定に至るまでの経過】

1998年(平成10年)に建築基準法制定当時から続いた建築主事による確認・検査という執行体制が見直され、民間機関による建築確認・検査制度が導入されるまで、既存建築物の増築、用途変更等は、建築主事の裁量権のもとに行われていた。

増築等の際の既存建築物の取扱いは明確ではなかったために、既存建築物の調査等は行われずに増築等の確認申請が約50年間という長い期間行われてきた。

2006年(平成17年)6月1日付「建築物の安全性及び市街地の防災機能の確保等を図るため建築基準法等の一部を改正する法律」の施行に伴い、改正後の建築基準法第86条の7及び第86条の8の規定により既存建築物に関して制限の緩和が図られた。

既存建築物の増築、改築、大規模の修繕又は大規模の模様替(以下「増築等」という)を行う場合には「法適合性の確認」が必要になるが、その取扱い要領が明確ではなかつた。

 2007年(平成18年)5月31日に、大阪府内建築行政連絡協議会で「増築等確認取扱い要領」が制定され、検査済み証が無い既存建物の増築等を行う場合の取扱いの基準が示された。

 又2009年(平成21年)9月1日、既存不適格建築物の増築等について、幾つかの技術的助言及び告示の改正がなされた。

 それらを受けて一部指定確認検査機関でもセミナーを開催したり、試行錯誤ながら検査済み証の無い既存建物の増築、用途変更確認申請の受付を始めていた。

 2010年(平成22年)、東京都建築構造行政連絡会監修の「建築構造設計指針2010」(現在は「建築構造設計指針2019」)で増築等に関する構造審査の基本的基準が示されていた。

 そして2014年(平成26年)国土交通省より「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(通称「ガイドライン調査」)が発表された。

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-2

【初めに】

 既存建築物を増築、用途変更、大規模の模様替え、大規模の修繕、昇降機を設置する申請を行う場合(以下「増築等」)で、工事完了検査済証が無い場合には、建築基準法適合状況調査を行い、法的事項を整理しなければならない。

 現在では、建築確認申請と同じように「役所」(特定行政庁)か「民間」(ガイドライン調査機関)に建築基準法適合状況調査を提出する事になる。

 ここでは「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」(2014年(平成26年)7月国土交通省)(以下「ガイドライン調査」)について、要点を記載する。

建築:「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」について – 国土交通省 (mlit.go.jp)

【概要】

  このガイドラインは、ガイドライン調査機関に向けて作成された文書なので、建築主等の依頼者から完了検査済証が無い既存建築物の増築等を依頼された代理者(設計者等)が、このガイドライン調査で留意すべき事項を中心に記載する。
 又国交省に届出した指定確認検査機関(ガイドイラン調査機関)を始め国交省、特定行庁等にも可能な限りヒアリングを実施して記載している。

 既存建築ストックを有効に活用する観点から、検査済証のない建築物の増改築や用途変更を円滑に進めることができるような方策を講じることが重要であり検査済証のない建築物について、その現況を調査し、法適合状況を調査するための方法を示したガイドラインが2014年(平成26年)策定された。

 それから10年余りが経過しガイドライン調査の実施例も相当数集積されてきており、その中で幾つかの問題点も指摘されている。

「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関等を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」は、「調査者」として業務を実施する指定確認検査機関に関しては、希望に応じて国土交通省に届出をできるようにしている。届出を行った指定確認検査機関(「ガイドライン調査機関」と称する)【2022年(令和4年)8月22日時点】は、38社です。
 ガイドライン調査機関を調査・ヒアリングし各社の特徴を整理記載した一覧表を資料として作成した。(非公開)

「建築基準法適合状況調査(ガイドライン調査)実務ガイド」-1

 「検査済証のない建築物に係る指定確認検査機関を活用した建築基準法適合状況調査のためのガイドライン」2014年(平成26 年7月)国土交通省について、策定後10年が経過した現在、実務上浮き彫りとなっている問題点や活用の手引きについて連載を始める。

・既に指定確認検査機関等の立場からの出版物としては、「既存不適格建築物の増改築・用途変更」(大手前建築基準法事務所株式会社・共編、2022年11月出版、新日本法規)。「既存建築物の法適合調査ガイド」⁻円滑な改修のためのA to Z、(2024年5月出版予定、一般財団法人 日本建築センター)があるが、代理者(設計者)の視点での解説とした。

・そもそも当該ガイドラインは、国交省に届出をする指定確認検査機関・「調査者(審査者)」(ガイドライン調査機関)を対象とした、審査する側の視点なのに対して、代理者(設計者)が調べなければならない基礎的事項や調査項目を、代理者(設計者)の視点で記述するように努めている。

・東京や首都圏で業務を営んでいる設計事務所は、小規模の事務所でも全国に業務範囲を広げている事務所を散見する。それはクライアントが国内全体へと事業展開しているからだと思うが、全国の特定行政庁の取り扱いなどについても出来うるだけ目配せして記述する。

・テキストとWEBとの連携形態も意識して本稿の内容を更に深める手助けになるように資料・参考事例を作成している。資料の一部は、一種のプレミアとして位置付けているためWEB上では非公開とする。

・法令解説書というより設計実務手引き書のようになっている。

・補稿として特定行政庁に検査済証のない既存建築物の増改築等確認申請を提出する場合の留意点等も掲載予定である。

・統一ルールとしては、元号と西暦の併記とした。筆者が段々西暦でないと経過時間がピンと来なくなってきたためでもある。

・本稿に記載する文責は、(株)寺田建築事務所にあり、無断引用、転載は禁止する。

・掲載事項に関する質疑には対応しない。