先般、小屋裏物置(床面積・階への非算入)は住宅系に限定したものか、あるいは他の建築用途(例えば店舗等)にも適用できるのかという質問があった。
東京都江戸川区の取扱いでは、建物用途は問わないと文書化されているが、都内でも特定行政庁によって取扱いが異なるようである。
又全国的にも住宅系の建物用途に取扱いを限定しているところもあり(兵庫県西宮市他)、その説明を聞くと一理ありと感じる。
そこで、小屋裏物置の床面積・階への非算入について歴史的経過を辿りながら検討をしてみたいと思う。
最初に、小屋裏利用についての建設省通達が出たのは、『小屋裏利用の物置の取扱いについて【昭和55年住指発第24号】』である。
小屋裏利用の物置の取扱いについて【昭和55年住指発第24号】
昭和55年2月7日
建設省住宅局建築指導課長・建設省住宅局市街地建築課長から特定行政庁あて通知
標記については、すでに「昭和32年6月1日付け住指受第461号徳島県土木部建築課長あて」例規が示されているが、最近この種の形態を有する住宅の建築が増加しつつあることにかんがみ、その取り扱いの統一を図るため、今後は左記により取り扱われたい。
記
住宅の小屋裏部分を利用して設ける物置(以下「小屋裏物置」という。)で、次の各号に該当するものについては、建築基準法の規定の適用に当たつては、階とみなさないこととする。
一 小屋裏物置の部分の水平投影面積は、直下の階の床面積の1/8以下であること。
二 小屋裏物置の天井の最高の高さは、1.4m以下であること。
三 物の出し入れのために利用するはしご等は、固定式のものとしないこと。(昭和55年2月7日)
上記の通達に記載してあるように、もともとは「住宅の小屋裏部分を利用して設ける物置(以下「小屋裏物置」という。)」を想定しての通達と見ることが出来る。
平成12年の法改正で、長文の通達であるが文中赤字で記載したところが注意して欲しい。
建築基準法の一部を改正する法律の施行について【平成12年6月1日建設省住指発第682号】
平成12年6月1日
建設省住指発第682号
都道府県建築主務部長あて
住宅局建築指導課長通知
建築基準法の一部を改正する法律の施行について建築基準法の一部を改正する法律(平成10年法律第100号。以下「改正法」という。)については、既にその一部が平成10年6月12日及び平成11年5月1日から施行されているところであるが、今般、その余の部分(建築基準の性能規定化、型式適合認定制度及び型式部材等製造者認証制度等に関する部分)が、建築基準法施行令の一部を改正する政令(平成12年政令第211号。以下「改正令」という。)、建築基準法に基づく指定資格検定機関等に関する省令の一部を改正する省令(平成12年建設省令第25号。以下「改正指定機関省令」という。)、建築基準法施行規則の一部を改正する省令(平成12年建設省令第26号)及び技術的細目を定める建設省告示とともに、平成12年6月1日から施行されることとなった。
改正法のうち、今回施行される部分の主な内容については、下記のとおりであり、貴職におかれては、関係市町村及び指定確認検査機関(建設大臣指定のものを除く。)に対しても、この旨周知方お願いする。記
第1 構造強度に関する基準の見直しについて
1 性能規定化に伴う仕様規定の適用関係の整理について(改正後の建築基準法(以下「法」という。)第20条及び改正後の建築基準法施行令(以下「令」という。)第36条関係)
改正法により、建築物は、安全上必要な構造方法に関して政令で定める技術的基準に適合することとされ、法第20条第二号イ又はロに掲げる建築物については、政令で定める基準に従った構造計算によって確かめられる安全性を有することとされた。これを踏まえ、改正令においては、仕様規定の適用関係を建築物の構造、規模等に応じて次のとおり整理した。
(1) (2)及び(3)に掲げる建築物以外の建築物 次の1)から3)までのいずれかに該当する構造方法とすること
1) 令第1節から第7節の2までの規定に適合する構造方法
2) 耐久性等関係規定に適合し、かつ、限界耐力計算又は令第81条第1項ただし書に規定する構造計算(建設大臣が限界耐力計算による場合と同等以上に安全さを確かめることができるものとして指定したものに限る。)によって安全性が確かめられた構造方法
3) 耐久性等関係規定に適合し、かつ、令第81条の2の構造計算によって安全性が確かめられたものとして建設大臣の認定を受けた構造方法
(2) 法第20条第二号に掲げる建築物(高さが60mを超える建築物(以下「超高層建築物」という。)を除く。)
次の1)又は2)のいずれかに該当する構造方法とすること
1) 令第1節から第7節の2までの規定に適合し、かつ、許容応力度等計算又は令第81条第1項ただし書に規定する構造計算によって安全性が確かめられた構造方法
2) (1)の2)又は3)に該当する構造方法
(3) 超高層建築物 耐久性等関係規定に適合し、かつ、令第81条の2の構造計算によって安全性が確かめられたものとして建設大臣の認定を受けた構造方法とすること
2 限界耐力計算の導入について(令第82条の6関係)
仕様を前提とせず、荷重及び外力が建築物に作用している際の建築物に生ずる力及び変形を直接算出する構造計算手法(限界耐力計算)を導入し、現行の構造計算規定との選択制とすることとした。
限界耐力計算は、極めて大規模な積雪及び暴風に対する安全性を直接検証するとともに、地震時における建築物の変形を計算し、それに基づいて必要な耐力を計算して求め、安全性を確認する手法である。そのため、限界耐力計算においては、従来の構造計算と異なり、耐久性等に関する規定以外の仕様規定の適用を不要とすることとした。
3 荷重及び外力の見直しについて
(1) 積雪荷重(令第86条及び平成12年建設省告示(以下「告示」という。)第1455号関係)
積雪荷重の算定に用いる垂直積雪量については、建設大臣が定める垂直積雪量の算定方法に関する基準に基づき、特定行政庁が規則で定めることとした。
また、屋根の勾配による積雪荷重の低減方法については、国際規格に整合するものとした。
(2) 風圧力(令第87条及び告示第1454号関係)
現在全国一律に定めている速度圧については、各地方における風速及び建築物の周辺市街地の状況を考慮して算定する方法に改めた。
また、風力係数については、最新の知見に基づき見直しを行ったところであるが、係数の設定が詳細化すること及び今後の実験・研究の成果に基づき順次係数の追加を行う必要があることから、建設大臣がこれを定めることとした。
4 許容応力度及び材料強度の見直しについて
(1) 木材の許容応力度及び材料強度の見直し(令第89条及び第95条並びに告示第1452号関係)
最新の調査・研究の結果、荷重の継続時間と木材の強度との関係が明らかになったことから、木材の許容応力度及び材料強度の設定方式を改めた。
これにより、現在樹種毎に具体の数値で設定している方式は、鋼材等と同様に、基準強度との関係で設定する方式に改められ、個々の基準強度については建設大臣が定めることとした。
(2) ステンレス鋼の許容応力度及び材料強度に係る規定の整備(令第90条及び第96条関係)
ステンレス鋼を鉄骨造に使用できる鋼材として新たに位置付けることに伴い、構造計算に用いる許容応力度及び材料強度に係る規定を整備した。
(3) コンクリートの許容応力度及び材料強度の特例規定の整備(令第91条及び第97条並びに告示第1450号関係)
コンクリートの許容応力度及び材料強度について、異形鉄筋を用いる場合及び高強度コンクリートを用いる場合の特例について建設大臣が定めることができることとした。
5 仕様規定の明確化等について
(1) 建築物の基礎の仕様規定の明確化(令第38条及び告示第1347号関係)
建築物の基礎については、仕様規定の明確化を図る観点から、建設大臣が定めた構造方法を用いるものとしなければならないこととした。建設大臣が定める構造方法においては、基礎の寸法、形状、鉄筋の配置の方法等を定めた。
(2) 木造建築物の耐震壁の配置規定の整備(令第46条並びに告示第1351号及び第1352号関係)
木造の建築物については、基準の明確化を図る観点から、木造建築物の耐震壁の配置の方法に関して建設大臣が定める基準によらなければならないこととした。建設大臣が定める基準においては、建築物の部分ごとの耐震壁量の割合等を定めた。
また、小屋裏、天井裏その他これらに類する部分に物置等がある場合において、当該物置等の最高の内法高さが1.4メートル以下で、かつ、その水平投影面積がその存する部分の床面積の2分の1未満であれば、当該部分については階として取り扱う必要はないものであるが、近年このような物置等を設置する事例が増加してきていることを踏まえ、軸組等の規定を整備した。なお、構造計算が必要となる場合においては、令第85条の規定に基づき当該部分の積載の実況を反映させて積載荷重を計算することが必要である。
(3) 木造建築物の継手又は仕口に係る仕様規定の明確化(令第47条及び告示第1460号関係)
木造建築物の柱、梁及び筋かいの継手又は仕口については、仕様規定の明確化を図る観点から、建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととした。建設大臣の定める構造方法においては、継手、仕口等の種別に応じた接合部材、接合方法等を定めた。
(4) 鉄骨造の柱脚の仕様規定の明確化(令第66条及び告示第1456号関係)
鉄骨造の柱脚については、仕様規定の明確化を図る観点から、建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととした。建設大臣の定める構造方法においては、柱脚の種類、寸法、形状等を定めた。
(5) 鉄骨造の継手又は仕口に係る規定の整備(令第67条及び告示第1464号関係)
鋼材の接合部については、仕様規定の明確化を図る観点から、建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととした。建設大臣の定める構造方法においては、寸法、形状、欠陥等について定めた。
(6) 鉄筋コンクリート造の建築物の主筋等の継手に係る規定の明確化(令第73条及び告示第1463号関係)
鉄筋コンクリート造の建築物の主筋等を接続する場合において、重ね継手以外の鉄筋の継手については、仕様規定の明確化を図る観点から、建設大臣が定める構造方法を用いるものとしなければならないこととした。建設大臣の定める構造方法においては、継手の種類、寸法等を定めた。
6 新たな仕様規定の追加について
(1) ステンレス鋼に係る規定の整備(令第64条、第90条及び第96条関係)
ステンレス鋼は、炭素鋼に比べ耐久性、耐火性等に優れている鋼材であるが、近年、一般的な技術として普及・定着してきたため、ステンレス鋼を鉄骨造の規定に新たに位置付けることとした。
具体的な技術基準については、リベット接合を禁止すること以外は、通常の炭素鋼と同様の規定を適用することとした。
(2) 高さが13m又は軒の高さが9mを超える組積造の補強に係る規定の整備(令第59条の2及び告示第1354号関係)
改正法により、高さが13m又は軒の高さが9mを超える組積造の建築を原則禁止していた建築基準法第21条第3項が削除されたことに伴い、当該組積造に係る補強方法の基準の整備を行った。
第2 防火に関する基準の見直しについて
1 材料、構造等に係る技術的基準の整備について
(1) 材料関係(法第2条第九号、令第1条第五号及び第六号並びに第108条の2並びに告示第1400号、第1401号及び第1402号関係)
不燃材料、準不燃材料及び難燃材料について性能規定化を行い、改正法及び改正令においてそれぞれに必要な性能を不燃性、非損傷性、ガス有毒性の観点から明確化し、その技術的基準を定めるとともに、当該技術的基準に適合するものとして、不燃材料等である建築材料の例示仕様を定めた。
(2) 構造関係
1) 耐火構造等(耐火構造、準耐火構造、防火構造及び準防火構造等)(法第2条第七号から第八号まで及び第23条、令第107条から第108条まで、第109条の3、第109条の6、第113条第1項第三号、第115条の2第1項第四号、第115条の2の2第1項第一号及び第四号並びに第129条の2の3第1項第一号並びに告示第1358号、第1359号、第1362号、第1367号、第1368号、第1380号、第1381号、第1399号及び第1432号関係)
耐火構造、準耐火構造、防火構造及び法第23条に規定する外壁の構造について性能規定化を行い、改正法及び改正令においてそれぞれに必要な性能を非損傷性、遮熱性、遮炎性の観点から明確化し、その技術的基準を定めるとともに、当該技術的基準に適合するものとして、耐火構造等の構造方法について例示仕様を定めた。併せて、裏面の可燃物が燃焼するおそれのある温度について告示に定めた。
なお、従来、防火構造とすることとしていたもののうち、外壁及び軒裏以外のもの(屋根、床及びひさし等)については、それぞれの規定において性能及び技術的基準を定め、構造方法について例示仕様を定めることとした。
また、両面を防火構造とすることを定めた規定については、当該構造の性能が準耐火構造の性能と同水準であると考えられることから、準耐火構造とすることを定める規定に改めた。これに併せ、従来の両面を防火構造とした間仕切壁については、準耐火構造である間仕切壁の例示仕様として位置付けることとした。
2) 法第22条区域及び防火・準防火地域の屋根(法第22条、第25条及び第63条、令第109条の3、第109条の5及び第136条の2の2並びに告示第1361号、第1365号及び第1434号関係)
従来、不燃材料で造り、又はふくこととされていた屋根不燃区域及び防火・準防火地域の屋根並びに大規模な木造建築物の屋根の構造について性能規定化を行い、屋根に必要な性能を火の粉に対する発炎、燃え抜けの観点から明確化し、その技術的基準を定めるとともに、当該技術的基準に適合するものとして、防火・準防火地域等の屋根の構造方法について例示仕様を定めた。
また、不燃性の物品を保管する倉庫等については、令第109条の5第二号及び第136条の2の2第二号に掲げる性能を必要としないこととし、当該倉庫に類する用途を告示において定めた。
併せて、主要構造部を準耐火構造とした建築物と同等の準耐火性能を有する建築物の屋根についても、当該性能を有するものであることとした。
(3) 防火設備関係(法第2条第九号の二ロ及び第64条、令第109条、第109条の2、第112条第1項、第114条第5項及び第136条の2の3並びに告示第1360号、第1366号、第1369号及び第1377号関係)
耐火建築物等の外壁の開口部に設ける防火設備、防火・準防火地域内の建築物の外壁の開口部に設ける防火設備、防火区画に用いる防火設備及び風道に設ける防火設備について性能規定化を行い、それぞれの性能を明確化した。また、改正令において防火設備の種類及び性能の技術的基準を定めるとともに、当該技術的基準に適合する防火設備の構造方法について例示仕様を定めた。
本改正において、防火戸及び防火ダンパーについては、防火設備に含まれるものとして整理することとし、従来、防火戸等を設けることとしていた規定については、必要な性能を有する防火設備を設けることとする規定に改めた。
また、甲種防火戸及び乙種防火戸についても今回整理し、これらに対応する性能を有する防火設備(防火戸以外のものを含む。)として、それぞれ、「特定防火設備(1時間炎を遮る性能を有する防火設備)」及び「法第2条第九号の二ロに規定する防火設備(20分間炎を遮る性能を有する防火設備)」を定めるとともに、新たに設定した性能水準を有する防火設備として、法第64条に規定する防火設備(20分間屋外側からの炎を遮る性能を有する防火設備)及び令第114条第5項に規定する防火設備(45分間炎を遮る性能を有する防火設備)を加えることとした。
なお、鉄製網入りガラス入りの戸については、「法第2条第九号の二ロに規定する防火設備」として定めた。
(4) その他
1) 用語について
材料、構造等について性能規定化を行い、それぞれの有する性能の水準を明確化したことに伴い、改正後の法令における用語の使用に当たっては、上位の性能を有する材料、構造等は、下位の材料、構造等に包含されるものとして整理した。また、例示仕様においても同様に、上位の性能を有する材料、構造等については、下位の材料、構造等に含まれるものとして整理した。
2) その他の措置について
今回の改正に伴い、昭和44年建設省告示第2999号、平成2年建設省告示第1125号及び平成5年建設省告示1454号を廃止した。
2 耐火建築物の主要構造部の性能規定化について
(1) 耐火建築物の主要構造部(法第2条第九号の二イ、令第108条の3及び告示第1433号関係)
これまで、耐火建築物は主要構造部を一律に耐火構造とすることとされていたが、改正法により性能規定化を行い、耐火建築物の主要構造部は次のいずれかに該当するものであることとした(法第2条第九号の二イ)。
1) 耐火構造
2) 火災が終了するまで火熱に耐えることについて政令で定める技術的基準に適合するもの
改正令においては、耐火建築物の主要構造部の性能に関する技術的基準を、主要構造部に必要な非損傷性、遮熱性及び遮炎性を有することについて、一般的な検証法(耐火性能検証法)により確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものであることとし、告示においては、耐火性能検証法に必要な室内の可燃物の発熱量、当該可燃物の発熱速度、構造方法等に応じた屋内火災保有耐火時間の計算方法等の詳細を定めた。
また、主要構造部が火災が終了するまで火熱に耐えることについて耐火性能検証法によって確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものとした建築物に関する政令の各規定の適用関係を整理するため、当該建築物の部分については、政令の必要な規定の適用に当たり、耐火構造であるものとみなすこととした(令第108の3第3項)。
さらに、主要構造部が火災が終了するまで火熱に耐えることについて耐火性能検証法により確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものである建築物の主要構造部及びこれらの壁又は床の開口部に設ける防火設備のうち、当該建築物の屋内において発生が予測される火災による火熱が加えられた場合に、当該加熱面以外の面に火炎を出さないことが、防火区画検証法により確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものについては、主要構造部について耐火構造とみなすととともに、政令の必要な規定の適用に当たり、特定防火設備とみなすこととした。また、耐火性能検証法と同様に、告示において、防火区画検証法に必要な計算方法の詳細について定めた。この場合においては、主要構造部の性能について建設大臣の認定を受けた建築物の防火設備については、防火区画検証法により性能を確かめることを認めていないので留意されたい(令第108条の3第4項)。
(2) 大規模建築物の主要構造部に関する性能規定化(法第21条及び令第109条の4関係)
高さが13m若しくは軒の高さが9mを超える建築物又は延べ面積が3,000m2を超える建築物については、原則として木造とすることが禁止されていたが、改正法により、火災が終了するまで火熱に耐えることが確かめられた場合においては、主要構造部の政令で定める部分に木材等の可燃材料を用いることができることとされた。
改正令においては、法第21条第1項及び第2項の大規模な建築物の政令で定める部分として、火災時に建築物の倒壊を防止するため必要な部分である自重又は積載荷重(多雪区域においては、自重、積載荷重又は積雪荷重)を支える部分を定めた。
(3) その他(令第114条第3項及び第128条の2関係)
令第114条第3項の小屋裏に準耐火構造の隔壁を設けるべき建築物及び第128条の2の敷地内通路を設けるべき建築物から法第2条第九号の二イに掲げる基準に適合する建築物を除くこととした。
3 避難安全検証を行う建築物の階又は建築物に対する基準の適用関係について(令第129条の2及び第129条の2の2並びに告示第1440号から1442号まで)
従来、避難関係規定として、一定規模以上の建築物については、高層区画、避難施設、内装制限等の規定を設けてきたが、近年の建築物に関する防火技術の進展により、建築物において火災が発生した場合に避難の安全性を予め予測する工学的手法が確立してきたことを受け、こうした工学的手法を導入し、建築物の階又は建築物で、避難安全性能を有することについて、一般的な検証法(階避難安全検証法又は全館避難安全検証法)により確かめられたもの又は建設大臣の認定を受けたものについては、避難関係規定の一部について適用しないこととした。
この場合において、全館避難安全検証法の適用に当たっては、各階が階避難安全検証法により階避難安全性能を有することが確かめれたものに限られており、階避難安全性能を有することについて建設大臣の認定を受けたものについては対象としていないので留意されたい。
また、告示において、火災の発生のおそれの少ない室を定めるとともに、階避難安全検証法及び全館避難安全性能検証法に必要な計算方法の詳細として、避難を開始するまでに要する時間、歩行に要する時間、出口を通過するのに要する時間、煙等が避難上支障がある高さまで降下するのに要する時間の算定方法を定めた。
4 その他基準の合理化について
(1) 防火区画(令第112条関係)
1) 高層区画の適用除外の基準の見直し(令第112条第8項関係)
11階以上の階においては、100m2以内ごとに耐火構造の床等で区画することとされてきたが、近年の共同住宅の住戸の大規模化、使用状況等を勘案し、200m2以下の共同住宅の住戸で住戸ごとに区画されたものについては、100m2以内ごとに区画することを要しないこととした。
2) たて穴区画に関する基準の明確化(令第112条第9項関係)
共同住宅の住戸のうち複数の階を有するものについては、住戸ごとに他の部分と区画することとし、住戸内の階段の部分等はその他の部分と区画することを要しないことを条文上明確化した。
3) 防火区画に用いる防火設備の基準の性能規定化(令第112条第14項、第126条の2第2項、第129条の13の2第三号、第136条の2第一号及び第145条第1項第二号並びに告示第1370号及び第1371号関係)
防火区画に用いる防火設備については、必要となる性能(火災時に閉鎖等できること、通行することができること、自動的に閉鎖等すること、遮煙性を有すること)を定め、当該性能を有するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたものとすることとした。また、告示において、当該性能を有する防火設備の構造方法についての例示仕様を定めた。
4) 防火ダンパーの基準の性能規定化(令第112条第16項並びに告示第1372号及び1376号関係)
防火区画等を貫通する風道に設ける防火ダンパーについては、風道に設ける防火設備として取り扱うこととし、風道に設ける防火設備として必要となる性能(自動的に閉鎖すること、遮煙性を有すること)を定め、当該性能を有するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたものとすることとした。また、告示において、当該性能を有する防火ダンパーの構造方法についての例示仕様及び設置の方法を定めた。
(2) 避難施設等に係る基準の見直し等
1) 避難階段の設置基準の明確化(令第122条関係)
従前の第122条第1項ただし書の適用関係について明確化するとともに、主要構造部を耐火構造とした建築物で100m2以内ごとに区画した場合には避難階段等の設置を要しないこととされているが、この場合に、100m2以内ごとに区画すべき部分には区画することが困難又は区画することにより避難上不利となる階段室、昇降機の昇降路、廊下等の避難の用に供する部分を含まないことを条文上明確化した。
2) 共同住宅の住戸について避難階段等の設置を要しない場合の基準の見直し(令第122条関係)
11階以上の階における防火区画と同様の趣旨により、共同住宅の住戸のうち200m2以内ごとに区画されているものについては、避難階段等の設置を要しないこととした。
3) 排煙設備の設置基準の見直し(令第126条の2及び告示第1436号関係)
11階以上の防火区画と同様の趣旨により、共同住宅の住戸で200m2以内ごとに区画されているものについては、排煙設備の設置を要しないこととした。
また、天井の高い居室で内装が不燃化されている居室等排煙設備を設けなくとも通常は火災時の避難安全性が損なわれることはない居室等、火災が発生した場合に避難上支障のある高さまで煙又はガスの降下が生じない部分を告示において定め、当該部分については、排煙設備の設置を要しないこととした。
4) 特殊な構造方法の排煙設備に関する技術的基準の整備(令第126条の3及び告示第1437号関係)
近年、排煙設備に関する技術的開発の進展に伴い、送風機を設けることにより、有効に煙を排出・制御する方式のもの等が実用化されてきているが、こうした新たな技術と今後の技術開発の進展に迅速に対応するため、特殊な構造の排煙設備で、建設大臣が定めた構造方法を用いるものについては、従前の排煙設備に関する技術的基準を適用しないこととした。また、告示において、各室において給気を行う排煙設備及び各室を統合した給気を行う排煙設備の構造方法を定めた。
5)非常用の進入口の設置基準の見直し(令第126条の6及び告示第1438号関係)
建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階について、実態をかんがみ、不燃性の材料の保管のみに用いられる階又は建設大臣が定める特別な理由により屋外からの進入を防止する必要がある階のうち、直上階又は直下階から進入でき、かつ、避難上及び消火上支障がないものについては、非常用の進入口の設置を要しないこととした。また、告示においても、放射性物質を取り扱う場合等を特別な理由として定めた。
(3) 内装制限の見直し(令第129条及び告示第1439号関係)
近年の研究により、例えば、天井の仕上げを不燃材料でし、かつ、壁の一部を木材等を用いた仕上げとする場合等、これまでの規定と異なる方法によった場合でも同様の効果が期待できる場合があることが判明しているため、建設大臣が定める方法により建設大臣が定める材料の組合せによる内装の仕上げによることができることとした。また、告示において、難燃材料でした内装に準ずる内装の材料の組合せ及び仕上げの方法を定めた。
第3 一般構造に関する基準の見直しについて
1 居室の採光について
(1) 採光規定の適用を受ける居室の限定(法第28条第1項及び令第19条関係)
改正法により、法第28条第1項の採光規定の適用を受ける居室については、居住のための居室、学校の教室、病院の病室その他政令で定めるものとされたことを受け、令第19条第2項において採光規定の適用を受ける居室を保育所の保育室、診療所の病室、児童福祉施設等の寝室、保育・訓練等に供する居室及び病院、診療所等の談話室等の居室とすることとした。
(2) 有効面積の算定方法の合理化(令第20条関係)
改正令により、従来の規定において採光上有効とされている場所の明るさを基準として、どの程度明るくなっているかを、隣地境界線までの距離と建築物の高さに応じて算定する採光補正係数を定義し、これを開口部の面積に乗じて採光上有効な開口部の面積を求める方式を採用することとした。
なお、採光補正係数が一以上となることが明らかな位置にある開口部について、当該開口部の居室の床面積に対する割合が法第28条第1項又は令第19条第3項で定める割合以上である場合など、明らかに基準に適合する場合においては、個々の開口部について採光補正係数を算出することを要しないものである。
また、道の反対側にさらに公園等がある場合には当該公園等に、公園等の反対側にさらに道がある場合には当該道に、それぞれ開口部が面するものとして令第20条第2項第一号の水平距離の算定を行うことができるものである。
2 居室の床の高さ及び防湿方法について(令第22条関係)
従来、最下階の床を木造とした居室にあっては、防湿のため床の高さを45センチメートル以上とすること等を仕様規定として定めてきたところである。改正令において、性能規定を定め、この規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたものについては、仕様規定への適合を要しないこととした。
3 地階における住宅等の居室の技術的基準について(法第29条、令第22条の2及び告示第1430号関係)
改正法により、地階における住宅等の居室の設置を原則禁止としていた規定を改め、新たに定める技術的基準に適合しなければならないこととされたことを受けて、地階における住宅等の居室の防湿等の基準を仕様規定として定めるとともに、防水の措置について性能規定を定め、防水の措置は、仕様規定に適合しているもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
4 長屋又は共同住宅の各戸の界壁の遮音構造について(法第30条、令第22条の3及び告示第1420号関係)
長屋又は共同住宅の各戸の界壁の遮音性能について性能規定を定め、各戸の界壁の構造は仕様規定に適合しているもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとされたことを受け、長屋又は共同住宅の各戸の界壁の遮音性能に関する技術的基準及び例示仕様を定めることとした。
5 階段について(令第23条及び第25条関係)
階段幅の算定に当たり、手すり及び高さが50センチメートル以下の階段昇降機のレール等については、幅10cmまでを限度にないものとみなして算定することとするとともに、階段への手すりの設置を義務付けることとした。
第4 建築設備に関する基準の見直しについて
1 換気設備について
(1) 居室の換気について(令第20条の2並びに告示第1403号第1及び第2関係)
居室の換気設備について、性能規定を定め、換気設備の構造は、仕様規定に適合しているもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかであるものとすることとするとともに、現行の仕様規定の見直しを行った。
(2) 火気使用室の換気について(令第20条の3並びに告示第1403号第3及び第4関係)
逆流防止等に関する基準を定めるとともに、性能規定を定め、換気設備の構造は、仕様規定に適合しているもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
2 便所について
(1) くみ取便所等について(令第29条から第31条まで及び告示第1386号関係)
くみ取便所の構造並びに特殊建築物及び特定区域の便所の構造について性能規定を設け、これらの便所の構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。また、改良便槽については、建設大臣が別に基準を定めることができる旨の規定を廃止し、従来この規定に基づき告示に位置付けていた仕様を政令に取り入れることとした。
(2) 屎尿浄化槽について(法第31条第2項、令第32条及び告示第1465号関係)
改正法により、屎尿浄化槽の汚物処理性能について性能規定を定め、屎尿浄化槽は仕様規定(昭和55年建設省告示第1292号)に適合しているもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとされたことを受け、屎尿浄化槽について汚物処理性能に関する技術的基準を定めるとともに例示仕様を定めた。
なお、令第32条第1項の規定に基づき特定行政庁が衛生上特に支障がないと認めて規則で指定する区域及び同条第2項に基づき特定行政庁が地下浸透方式により汚物を処理することとしても衛生上支障がないと認めて規則で規定する区域以外の区域の基準に対応する屎尿浄化槽としては、合併処理浄化槽のみを例示仕様として定めたところであり、改正法の施行から6ケ月を経過した後に単独処理浄化槽を新たに設ける場合においては、法第31条第2項に基づく建設大臣の認定を要するものである。
また、改正後の昭和55年建設省告示第1292号第1第一号から第三号までに定める屎尿浄化槽の性能は、通常の使用状態において、BODの除去率が90パーセント以上で、かつ、屎尿浄化槽からの放流水のBODが20PPM以下の処理能力を有するものである。
3 煙突について(令第115条及び告示第1404号関係)
煙突の基準の一部について性能規定を定め、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとするとともに、新たに廃ガス等の温度が100度以下であるものに関する基準を定めることとした。
4 給水、排水その他の配管設備について
(1) 防火区画等の貫通部に用いる配管の構造等について(令第129条の2の5第1項並びに告示第1412号及び第1422号関係)
給水管、配電管等が防火区画等を貫通する部分について性能規定を定め、防火区画を貫通する配管設備は、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
また、一定規模以上の建築物に設ける風道等は不燃材料で造ることとする規定について、1つの住戸内のみのための風道等局部的に設けられる風道等への適用を除外することとした。
(2) 飲料水の配管設備及び排水の配管設備について(令第129条の2の5第2項及び第3項並びに告示第1390号及び第1406号関係)
飲料水の配管設備の材質について性能規定化を行い、飲料水の配管設備は、当該性能を有するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとするとともに、排水再利用配管設備に関する基準を告示に定める等所要の改正を行った。
(3) 冷却塔設備について(令第129条の2の7及び告示第1407号関係)
冷却塔設備の防火性能について性能規定化を行い、冷却塔の構造については、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
5 非常用の照明設備について(令第126条の4及び第126条の5並びに告示第1405号及び第1411号関係)
非常用の照明設備の設置について、昭和47年建設省告示第34号に基づき非常用の照明装置の設置を要さないとされていた建築物の部分については、改めて設置を要さないものとするとともに、非常用の照明設備の構造について性能規定を定め、非常用の照明設備の構造は、仕様規定に適合するもの又は性能規定に適合することについて建設大臣の認定を受けたもののいずれかとするとともに、仕様規定について、近年の照明器具に関する技術開発等を踏まえた所要の改正を行った。
6 建築設備の構造強度について(令第129条の2の4並びに告示第1388号及び第1389号関係)
従来それぞれの建築設備ごとに定められていた構造強度に関する規定について、今回整理して位置付けることとした。
また、屋上から突出する水槽、煙突等については、安全性の検証を構造計算により行うことを義務付けることとした。
7 昇降機について
(1) 適用範囲の明確化について(令第129条の3関係)
エレベーター及びダムウエーターについての定義を行うとともに、ダムウエーターの名称を改め、小荷物専用昇降機とすることとした。
(2) エレベーターについて
1) 構造上主要な部分等について(令第129条の4並びに告示第1414号及び第1415号関係)
エレベーターの構造上主要な部分について性能規定を定め、当該部分の構造は、性能規定に適合するものとして、建設大臣が定めた構造方法を用いるもの、エレベーター強度検証法により検証を行ったもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとするとともに、屋外に設けるエレベーターについて、風圧力に対する安全性の検証を義務付けるなど所要の改正を行った。
また、用途が特殊なエレベーターについての積載荷重を定めることとした。
2) 制御器及び制動装置について(令第129条の8及び第129条の10並びに告示第1423号及び第1429号関係)
エレベーターの制御器及び制動装置について性能規定を定め、その構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
3) 特殊な構造又は使用形態のエレベーターについて(令第129条の3第2項第一号及び告示第1413号第1関係)
特殊な構造又は使用形態のエレベーターとして、かごの天井部に救出用の開口部を設けないもの、昇降路の壁又は囲いの全部又は一部がないもの、ヘリポートなどで用いられるもの、機械室を有さないもの、住戸内のみを昇降するもの、自動車運搬用のもの、段差解消機及びいす式階段昇降機を位置付けることとした。
4) その他の改正について(令第129条の6及び第129条の7並びに告示第1416号第1及び第2関係)
かご及び昇降路の材料制限について、難燃材料まで許容することとし、小規模な建築物に設けるエレベーターについては、当該制限を適用しないこととした。
また、二方向出入口の制限(改正前の建築基準法施行令第129条の5第五号及び第129条の6第二号)及び各階強制停止装置の設置の義務付け(改正前の建築基準法施行令第129条の9第1項第十三号)を廃止した。
(3) エスカレーターについて
1) 速度制限の見直し等について(令第129条の12第1項及び告示第1417号関係)
踏段の定格速度の上限を45メートル又は50メートルとするとともに、挟まれた防止措置の明確化、エスカレーターの幅の算定方法の諸外国の基準との整合を図るための措置を行うこととした。
2) 構造上主要な部分について(第129条の12第2項及び告示第1418号関係)
エレベーターに準じ、性能規定化を行った。
3) 制動装置について(第129条の12第5項及び告示第1424号関係)
制動装置に関し、性能規定を定め、制動装置の構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
4) 特殊な構造又は使用形態のエスカレーターについて(令第129条の3第2項第二号及び告示第1413号第2関係)
特殊な構造又は使用形態のエスカレーターとして、勾配が35度以下のもの、幅の広いもの及び可変速のものを位置付けた。なお、幅の広いもの及び可変速のものについては、今回制動装置に関する例示仕様を定めていないため、当面、制動装置に関する建設大臣の認定を要するものである。
(4) 小荷物専用昇降機(令第129条の13及び告示第1416号第3関係)
一定の小荷物専用昇降機について、かごがその階に停止していない場合に出し入れ口が開かない構造とすることを義務付けるとともに、昇降路に関する材料制限について、難燃材料まで許容することとした。
(5) 非常用の昇降機(令第129条の13の3及び告示第1428号関係)
途中で床面積が小さくなる階等非常用の昇降機を利用しなくとも避難上及び消火上支障がない階については停止することを要しないことするとともに、かご及び昇降路に用いる材料については、不燃材料とすることとした。
8 避雷設備について(令第129条の15及び告示第1425号関係)
避雷設備について性能規定を定め、避雷設備の構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
第5 その他の改正事項について
1 建築材料の品質に関する技術的基準について(法第37条、令第144条の3並びに告示第1444号及び第1446号関係)
法第37条の改正により、建築物の安全上、防火上又は衛生上重要な部分に用いる建築材料で建設大臣の指定するもの(以下「指定建築材料」という。)は、以下のいずれかに該当すべきものとされた。
1) 建設大臣の指定する日本工業規格又は日本農林規格に適合するもの
2) 指定建築材料ごとに建設大臣が定める品質に関する技術的基準に適合するものであることについて建設大臣の認定を受けたもの
建築物の安全上、防火上又は衛生上重要な部分として、主要構造部以外の構造耐力上重要な部分等を政令及び告示において定めた。
さらに告示において、指定建築材料として、コンクリートブロック、鋼材等の建築材料を指定するとともに、これらの材料が適合すべき日本工業規格及び日本農林規格並びに品質に関する技術的基準をそれぞれ定めた。
2 簡易な構造の建築物に係る基準の見直しについて(令第136条の9及び第136条の10並びに告示第1443号関係)
簡易な構造の建築物については、開放型建築物について1,500m2以下、帆布を用いる建築物について1,000m2以下としていたところであるが、近年、自走式の自動車車庫、帆布を用いる建築物についての建築実績が増加してきたこと、これらについて法第38条の規定の運用により技術的知見が蓄積されてきたこと等を踏まえ、簡易な構造の建築物の対象範囲を3,000m2以下のものとした。また、これに併せ、防火上支障がない外壁及び屋根の構造を定める告示(平成5年建設省告示第1427号)を改正した。
3 準用工作物に係る基準の見直しについて
(1) 煙突、広告塔、擁壁、乗用エレベーター又はエスカレーター(令第139条から第143条まで及び告示第1449関係)
煙突、広告塔、擁壁等の工作物について、建築物の規定を準用する規定等の改正を行った。
また、特殊な構造方法に対応し、建設大臣が新たな構造方法を定められるよう措置するとともに、構造計算を義務付けることとした。
(2) 遊戯施設
1) 構造上主要な部分について(令第144条第一号及び第二号並びに告示第1419号第1から第4まで関係)
これまで鋼造、鉄筋コンクリート造又は鉄骨鉄筋コンクリート造に限っていた材料制限を改め、材料に応じた構造方法及び構造計算の義務付けについて定めることとした。
また、構造上主要な部分で摩損等により材料強度の低下が生じる部分については、エレベーターと同様に、摩損又は疲労破壊による材料強度の低下に配慮した設計を行うことが必要となるため、エレベーターに準じた性能規定を定めることとした。
2) 客席部分について(令第144条第四号及び告示第1426号関係)
客席部分の落下防止の措置について、性能規定を定め、この部分の構造は、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
3) 非常止め装置について(令第144条第五号及び第六号並びに告示第1427号関係)
非常止め装置に関し性能規定を定め、非常止め装置の構造については、性能規定に適合するものとして建設大臣が定めた構造方法を用いるもの又は建設大臣の認定を受けたもののいずれかとすることとした。
4) その他(令第144条第七号及び告示第1419号第5関係)
遊戯施設の乗降部分の構造を定める等所要の規定を定めた。
4 計量法の改正に伴うSI単位化について
計量法の規定との整合を図るため、重量キログラム等の単位を用いて定められている規定を、ニュートン等の国際単位系を用いた規定に改めた。
5 改正前の規定に基づき認定又は指定を受けた材料、構造等の取扱いについて
改正前の規定に基づき建設大臣等の認定又は指定を受けた材料、構造等を用いた建築物又は建築材料については、5月31日付けで改正前の建築基準法第38条の規定に基づく建設大臣の認定を行い、改正法の施行後2年間は従前どおりの取扱いとすることとした。なお、認定された内容については別途通知する予定である。
6 材料、構造等の認定等について
材料、構造等の認定に係る技術的評価の一部については、試験により評価を行うこととし、試験の要件について改正指定機関省令に定めた。この場合の具体的な試験方法については、各評価機関が業務規程において定めることとなる予定である。
第6 型式適合認定制度等に関する規定の整備について
1 型式適合認定制度の創設(法第68条の10から第68条の25まで、令第136条の2の9から第136条の2の11まで及び第144条の2並びに改正後の建築基準法施行規則(以下「施行規則」という。)第10条の5の2から第10条の5の20まで関係)
建設大臣があらかじめ一定の建築基準法に適合することを認定(型式適合認定)した構造方法等に従った建築物については、認定において適合すると認められた建築基準に適合するとみなすことにより、個々の建築確認・検査において審査を簡略化し、申請者及び建築主事等の負担の軽減を図り、手続の円滑化を図ることとした。
型式適合認定を受けた建築材料又は構造方法については、建築確認・検査の特例として、その審査に当たっては、当該認定に係る一連の規定が審査対象から除かれ、適合認定を受けた仕様に従っているかどうかを確認又は検査すればよいこととなる。
型式適合認定は、建築材料、建築物の部分の設計仕様について、あらかじめ建設大臣が構造上の基準等の技術的基準に適合することを認定することにより、個々の建築物ごとの性能の検証のための計算や仕様規定との適合等を省略し、申請者の負担軽減、建築確認又は検査時の審査の簡略化を図るものであることから、規定への適合の検証に時間を要するもの等、建築確認・検査時の審査が省略されることの効果が高いものを令第136条の2の9及び第144条の2において型式適合認定の対象として定めた。
なお、令第139条の2の9第一号に掲げる建築物の部分は、建築物のうち、門、塀、改良便槽、屎尿浄化槽並びに給水タンク及び貯水タンク(屋上又は屋内にあるものを除く。)を除く部分で、対象となる型式としては、門等の部分を除くプレハブ住宅の型式等が考えられる。
認定する一連の規定としては、当該型式に関する規定のうち、その規定への適合性について事前に審査することが可能な規定を令第136条の2の9及び第144条の2において定めた。
また、型式適合認定を受けた建築材料又は構造方法のうち、一定の水準が確保された製造設備・検査設備と適切な品質管理体制を有する者であるものとして、建設大臣の認証を受けた者(認証型式部材等製造者)により製造された規格化された型式の部材(エレベーター等)については、型式に適合するとみなされ、個別の審査が不要となる。
この型式部材等製造者認証の対象となる型式部材等は、施行規則第10条の5の4各号に掲げるものであり、認証に係る型式部材等は型式適合認定に係る型式に適合するとともに、施行規則第10条の5の9に定める品質保持に必要な生産条件に適合する必要がある。
2 確認検査の特例について(法第6条の3並びに令第13条の2及び第138条の2関係)
認定の特例となる規定については、1)建設大臣が指定した規格化された型式住宅、2)法第6条第1項第四号に掲げる建築物で建築士の設計によるもの、を対象としていたが、型式適合認定の制度が設けられたことに伴い、1)の型式住宅が、認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物等へと改正された。
これを受け、令第13条の2において、型式適合認定を受けた規定を確認の特例対象規定として定める(法第88条第1項の工作物において準用する場合も同様とする。)とともに、2)の建築物についても性能規定化を踏まえ、所要の見直しを行った。
(1) 認定型式に適合する建築物の部分を有する建築物の場合(令第13条の2第一号及び第二号並びに第138条の2関係)
認定型式に適合する建築材料又は建築物の部分を有する建築物の場合は、それぞれ認定を受けた建築物の部分について、その認定に係る規定を確認の特例の対象とすることとし、令第13条の2においては、令第136条の2の9に掲げる規定を定めた。なお、型式適合認定を受けた建築物の部分を有する建築物については、その認定対象に応じて確認申請の際に構造計算書や耐火性能検証の計算書、構造方法等の認定書の写し等の添付が省略でき、また、型式部材等製造者認証を受けた部材等を用いる建築物については、さらに構造詳細図等の添付が省略できることとなっている(法第88条第1項の工作物において準用する場合も同様である。)
この型式適合認定等については、施行規則において、申請書、認定書等の様式、公示の内容、認証型式部材等の表示の方法、手数料等を定めた。
(2) 建築士が設計した建築物の場合(令第13条の2第三号及び第四号関係)
法第6条第1項第四号に掲げる建築物のうち、高さが13m又は軒の高さが9mを超える組積造等の建築物について、新たに構造計算が義務付けられ、また、限界耐力計算により安全性の検証を行うことが可能となるが、これらの構造計算については、審査省略の対象としないこととした。
3 構造方法の認定について(法第68条の26並びに規則第10条の5の21及び第10条の5の22関係)
今回の性能規定の導入に伴い、従来の特殊な建築材料又は構造方法の認定規定(法第38条)が廃止された。今後は、性能規定により新たな建築材料や構造方法等に対応することとなるが、性能規定に適合することについて一般的な検証方法以外の方法で検証した建築物については、建築確認による審査が困難であることから、建設大臣が認定することとした。この認定を構造方法等の認定という。
構造方法等の認定については、審査対象である建築材料又は構造方法の性能に関する評価に基づき行うことになっている。
今般、施行規則において、認定の申請書及び認定書の様式、手数料等を定めた。
4 指定認定機関等及び指定性能評価機関等について(法第77条の36から第77条の57まで、令第136条の2の13及び第136条の2の14並びに改正後の建築基準法に基づく指定資格検定機関等に関する省令第32条から第79条まで関係)
建設大臣は、型式適合認定、型式部材等製造者認証又は構造方法等の認定に係る性能に関する評価について、申請者の利便の向上を図るため、高度な技術審査能力と公正中立な審査体制を有する国内外の民間機関(指定認定機関若しくは承認認定機関又は指定性能評価機関若しくは承認性能評価機関)に、これらの認定、認証又は評価を行わせることができることとした。
指定確認検査機関の場合と異なり、建設大臣が指定認定機関等を指定した場合には、その機関が行う認定、認証又は評価については、建設大臣は認定等を行わないこととなる。
今般、改正令により指定認定機関等の指定の更新期間を、改正指定機関省令により指定の申請手続、認定、認証及び性能評価の方法並びに認定員及び評価員の要件等を定めることとした。
上記の施行通知は、従来の通達等による物置等を設置する場合の木造建築物の耐震壁の配置規定の整備を行ったものであり、物置等を設置する場合の形態制限については、
- 物置等の水平投影面積はその存する部分の2分の1未満
- 物置等の最高の内法高さが1.4m以下
がH12年の施行通知による制限と見ることが出来る。