用途変更の設計者資格

先日、用途変更の設計者資格について聞かれたので覚書的に記述しておく、

物販店舗からディーサービスセンターへの用途変更で100m2を超えているので、当然用途変更確認申請が必要であるが、相談者兼設計者は、普段は住宅の設計が多い二級建築士事務所。

公式的には この古い通達が生きている。

昭和27年住指発第424号 建築士の設計でない用途変更
昭和27年4月17日 建設省住宅局建築指導課長から愛知県建築部長宛

(照会)
法第87条の規定によれば同法第6条第1項第1号の特殊建築物のいずれかに用途を変更する場合は当該建築物を建築するものとみなされるが、建築士法第3条及び第3条の2の規定には用途変更する場合を含む旨の規定がないから大規模の模様替又は大規模な修繕に係る部分の延べ面積に応じて建築士の資格の要否を決定すべきもので、何等建築工事を伴わない用途変更については、建築士の資格を有しない者でも法第6条第1項第1号の確認申請書を提出し得るものであり、且つ、建築主事は当該申請書を受理すべきものと解してよいか。

(回答)
用途変更については法第87条に基く同法第6条の準用規定があるが、同条第2項は、建築士法第3条又は第3条の2の規定に違反する場合の規定であつて、建築士法上用途変更についての規定はないから(法第87条の準用規定は建築士法まで及ばない)法第6条第2項に関する限り、用途変更については何等制限はなく、建築主事は当該申請書を受理できる。なお、建築基準法上申請書は建築士に限定されていないから念のため、申添える。

 

以上のように用途変更の設計者資格については建築士でなくてもできる。

但し、報酬を得て業として行う設計・監理には建築士事務所の登録が必要。
(法第23条には法第3条2項のような用途変更が除外されると読める記述がない)

荷重の増減などの影響がない旨の「構造検討書」を添付する場合、対象建築物全体が特殊建築物なので構造設計者の検討が必要。

工事完了検査は不要で、工事監理者も不要。ただし工事完了届を提出。

工事完了届は、特定行政庁に提出するのが基本だが、用途変更確認申請を指定確認検査機関に提出した場合は、工事が完了したかどうか民間指定確認検査機関で掌握できないので、民間指定確認検査機関経由で工事完了届を提出する場合がある。

都内の特定行政庁によっては、現場確認というの名の検査(是正指示もある)に来る場合がある。

尚 この用途変更については、設計者資格、工事監理者、工事完了検査が不要なところから脱法ハウス(住宅から共同住宅)、違反グループホーム、数々の違法用途変更を生み出している一要因のような気がする。

時代は変化しているのに、今になっても昭和27年の通達が生きているのだから・・・

 

計画変更か 確認申請の再提出か

建築プロジェクトは、ときに事業の見直しで、建築確認申請取得後に未着工になったり、工事が一時中断したりすることがある。

又 過去には法令改正を機に意図的に工事中断がなされた事例もあった。

それらの物件が工事再開するとき、幾つか問題が生じることがある。

たとえば共同住宅で、一部構造躯体の変更や 住宅の間取りの変更や設備関係の変更、多少の床面積の増加(もともと容積率はいっぱい)なら計画変更確認申請の提出をしてもらう。

というようなスタンダードな計画変更なら良いのだが、建築確認申請書を提出し確認済証の交付を受けた後の計画の変更は、色々なケースがあり 判断に迷う場合もある。

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建築基準法 取扱い基準集及びQ&A集等 / 全国

全国各地の特定行政庁の建築基準法に関する取扱基準・手引き・質疑応答集をまとめています。

各地の取扱基準等を項目別に比較検討して学習すると、一層 法令を理解する事が出来ます。

又、参考として指定確認検査機関等で、取扱いをまとめているところも記載してあります。

これらの文書は、webで文書を公開しているところや各地の建築士会などで販売しているものも列記してありますが、webで公開していない特定行政庁の文書で、所有しているものについて質疑がある場合は関係部分のみ「TAF倶楽部会員」に情報提供しています。

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小屋裏物置等 -5・・・兵庫県西宮市の取扱い


兵庫県「西宮市建築基準法取い基準(2012年)」の小屋裏等に関する取扱いを見ると、平成12年の施行通知(H12,6,1 建設省住指発第652号)は、「従来の通達等による物置等を設置する場合の木造建築物の耐震壁の配置規定の整備を行ったものである。よって物置等を設置する場合の形態制限については従来の通達等を含めた以下の取扱いによる。」とし、あくまでも法律改正経過の文脈の中で考えている。

これは、これで妥当な取扱いだと思う。

その結果、西宮市では小屋裏物置の取扱いについての建物用途は、「専用住宅・兼用住宅又は、併用住宅、長屋、共同住宅の住戸の部分とする。」として住宅系の建物用途に限定している。

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西宮市の取扱いでは、小屋裏物置の「開口部については、換気用のガラリ以外は、換気という趣旨から収納空間として必要最小限とする。」とあり、現状では一般的な取扱いだとおもうが、その開口部の数値的目安は示していない。

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準耐火建築物に小屋裏物置を設置する場合の技術的基準を示しているが、他の特定行政庁では、ここまで厳密な技術的基準を明確にしておらず、色々な意見がある項目である。

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小屋裏物置の規定は、どう変わってきたか? -1

先般、小屋裏物置(床面積・階への非算入)は住宅系に限定したものか、あるいは他の建築用途(例えば店舗等)にも適用できるのかという質問があった。

東京都江戸川区の取扱いでは、建物用途は問わないと文書化されているが、都内でも特定行政庁によって取扱いが異なるようである。

又全国的にも住宅系の建物用途に取扱いを限定しているところもあり(兵庫県西宮市他)、その説明を聞くと一理ありと感じる。

そこで、小屋裏物置の床面積・階への非算入について歴史的経過を辿りながら検討をしてみたいと思う。

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物流センター、倉庫業を営む倉庫

物流センター、物流拠点施設は、配達までの運搬物の整理。保管のほか、荷造り、荷崩し、商品組み合わせ、包装、検品などの作業を伴う場合は、「工場」に該当する。

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」p130

物流センターの機能は、単純ではなくなった。

「amazon」や「アスクル」のような業務形態では、大型トラックによって倉庫に一旦集められた物品が商品別に小分けにされ、それを注文別に組みあわせ、包装され小さな車両で消費者のもとに届く。

建築基準法上の「工場」の概念は産業分類の中の「製造業」よりも広いものであり、職工等により定常的に物品の製造・加工・仕分け・梱包等を行うものは「工場」に該当すると考えられている。

他人の物品を保管、貯蔵することを業としている場合は、「倉庫業を営む倉庫」に該当する。

「建築確認のための基準総則・集団規定の適用事例」p131

 

 

「用途上可分・不可分」・・・大阪市

大阪市建築基準法取扱い要領(平成20年3月)では、敷地の用途上可分・不可分については下記のように扱っている。

1 敷地 (可分・不可分) について
(1) 複数棟の建築物の可分・不可分について
一敷地に2棟以上の建築物のある場合で、直接の機能上の関連をもたず単に隣り合っていて、敷地の一部(庭)を共通で利用しているに過ぎない場合は可分である。(例)病院と看護師寄宿舎や看護学校との関係

・不可分の関係:(例)建築基準法及び同大阪府条例質疑応答集(監修:大阪府内特定行政庁連絡協議会)Q&A 改訂5 版(以下「Q
&A 改訂5版」という。)1-30…17 頁を参照

(2) 一戸建住宅と共同住宅等の併存する敷地について
建築主が同一人でも、一戸建住宅と長屋及び共同住宅は、可分の関係にあるものとしてそれぞれ別敷地として扱う。

「用途上可分・不可分」・・・長崎県 

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上図は、「用途上可分・不可分」の取扱い。

設計上も審査上も「用途上可分・不可分」というのは、判断に悩むことが多い。

長崎県の取扱いでは「用途上不可分であるかどうかは建築物の機能上の関連性(利用形態)から客観的に決せられるものです」とある。

上図は、たぶん郊外のショッピングモールみたいなもの、広い敷地に日曜大工センター・各種飲食店・レンタルショップなど複合的な店舗が集合した店舗群をイメージしたものかなと思う。

個々の建物は離れているが駐車場等を共有し、全体としてショッピングセンター的な役割を持ったもの(私は「離散型集合」形態と命名している)への対応だと推察する。

敷地の用途上可分・不可分は

知恵者には、あるときは可分、はたまた あるときは不可分で利用される。

敷地内の通路・・・防避解説、四日市市

建基令第128条の敷地内の通路の取扱いについては、「防火避難規定の解説」100頁に示されている。(下図)

屋外避難階段からの敷地内屋外通路は、「下記の要件を満たし、かつ、避難上支障がない場合は敷地内通路として取り扱うことができる」とある。

  • 通路の有効幅員を1.5m以上確保すること。
  • 通路部分、屋内部分と耐火構造の壁・床及び常時閉鎖式の防火設備で区画し通路の壁及び天井の下地、仕上げを不燃材料とすること。
  • 通路部分は、外気に十分開放されていること。

東京のような過密都市・狭小敷地で建築計画を考えていると、敷地内通路を別個に確保する事が難しいことがある。

「防火避難規定の解説」でも「一般的には開放性のあるピロティなどが該当する。」としている。

この「外気に十分開放されている」というくだりは、厳しくも柔軟にも取り扱える箇所かもしれない。

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四日市市の建築基準法の取扱いでも、幾つかの具体的な取扱いを定めている。

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上図は、「防火避難規定の解説」とほぼ同じなのだが、「通路部分には非常用の照明装置を設けること(採光上有効に直接外気に開放された部分を除く)」という一文が加えられている。

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上図の上段が駐車場の一部に避難通路を設ける場合。下段がトンネル状の通路を通って屋外の道路に出る場合の取扱いである。

 

屋外階段の踊り場の幅・・・神奈川県

建基令第23条第1項ただし書きで、屋外階段の幅を緩和しているが 踊り場の幅については明言していない。

階段及びその踊り場の幅は令第23条の表で同一になっているが、これはもともと階段の部分と踊場部分は機能上一体のものと考えているから。

小売業店舗等で階段幅が広く必要な時に、屋外階段の踊り場の幅は法文で明確でないから狭く出来ないかという質問が来ることが多い。

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上記は神奈川県建築行政連絡協議会のサイトにある「屋外階段の踊り場の幅について」の取扱い。

http://www.pref.kanagawa.jp/cnt/f5720/

検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-「契機」

「検査済証のない既存建築物は増築とか用途変更出来ないと思っていた」「検査済証がない建築物は工事中だと言われてた」「検査済証のない既存建築物の増築・用途変更が可能だという法的根拠は?」等、色々と質問を受ける。

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検査済証のない既存建築物の増築・用途変更-東京都

先日 都内某区役所に検査済証未取得の既存建築物の一体増築(EXJにより構造的に別建物でない)の相談に行ったときの話し。

建築審査課構造担当係との打合せで「建築構造設計指針2010」監修・東京都建築構造行政連絡会議、(社)東京都建築士事務所協会構造技術専門委員会(所謂オレンジ本)の「第12章第7項 増築等に関する審査要領」に沿って構造関係の調査・検査したものを審査しようということになった。

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開放廊下・バルコニーの取扱い・・・神奈川県(1)

神奈川県内の統一的な取扱基準である「神奈川県建築基準法取扱基準-面積・高さ・階数等の算定方法」(平成23年11月24日版)では、「吹きさらしの廊下、バルコニー又はベランダ」について9頁を割いて その取扱いを示している。

それだけ実際の現場では様々な事例があり、当事者達は悩む事が多いということを現している。

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上図は、まず住指発第115号から基本的な説明をしている。

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上図は、袖壁がある面からは考慮しない事や出隅部分の取扱いを示している

注意しないいけないのは、②の「ただし、最上階等で上部に廊下等の突出した部分がない場合で、出幅が50cm以下かつ当該廊下等の幅の1/2以下の局部的なひさし直下の床の部分は除く」とある点で、青天に近い形状で局部的な庇ならば床面積に非算入とある。

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ここでは、隣地境界線までの離隔距離と、建物間の離隔距離について記載しており、神奈川県では水平距離2m(有効寸法)以上とある。

img078建物断面形状に応じて外気に有効に開放されている廊下かどうかの取扱いを示している。

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開放廊下・バルコニーの取扱い・・・大阪市

「大阪市・建築基準法取り扱い要領」(平成20年3月)大阪市計画調整局建築指導部には、防雨スクリーンの法床面積の取扱いが記載されている。

 

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長さが1mまでで枠組みで網入りガラス程度のものは、法床面積に算入しなくても良いという取扱いを示している。

 

開放廊下・バルコニーの取扱い・・・京都市

下図は、京都市建築指導部建築審査課の「開放廊下、バルコニーに設けるルーバー・格子の取扱い」である。

現在は、「京都市建築法令ハンドブック(H24.1.1)」にも 同様のものが掲載されている。

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上図は、竪格子ルーバーについての取り扱いだが、格子間隔が10cm以上とあるから開放率はかなり高くなる。

天井からの垂れ壁寸法、斜めルーバーについても記載されている。

又、 床面積の不算入だけでなく、上記の場合に採光及び排煙についても記載されており、この条件での設計ならば外廊下側の居室の採光に影響しない。廊下の排煙についても開放していると見なしているようだ。

採光・排煙についても記載しているのは、行き届いた配慮だと思う。

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上図は、横ルーバーの場合についての記載である。

パンチングメタルの場合の算定有効寸法についての記載がある。

横ルーバーの場合は、羽根の隙間については不問にしているようだ。

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上図は、防風スクリーン、目隠しパネルの場合について記載されている。

共同住宅等の玄関前の防風スクリーン・目隠しパネルは横幅2m以内。

設置領域全体の開放性についても記載されている。

竪方向の開放性については記載があるが、横方向は防風スクリーンの設置幅2m以内で防風スクリーン間の距離は1m以上とあるから、領域の開放率は50%以上担保しようとしているように見える。

 

 

開放廊下・バルコニーの取扱い・・・1

床面積の算定において、外気に有効に開放されている部分であれば非算入という事になっている。

下図は、「建築確認のための・基準総則集団規定の適用事例(2009年版)」日本建築行政会議編の中の全国的かつ一般的な取扱いを示している「吹きさらしの廊下」=いわゆる外部廊下についての解説である。

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又、同書では、「ベランダ、バルコニー」についても取扱い基準を示している。

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ただ、実際の設計においては、竪ルーバー・横ルーバー・意匠的なマリオン・玄関出入口部分の防風スクリーン・パンチングメタル・近隣を覗き見ない目隠しパネル・壁面緑化等 様々な付属物の設置が必要となる場合が多く、どこまでが「外気に有効に開放されている」と考えるか取扱いに迷う時がある。

また、この建築行政会議がまとめた本では、「開放部分の判断における隣地境界線からの離隔距離や同一敷地内の他の建築物又は当該建築物の他の部分からの離隔距離については、建築主事等への確認が必要である。」という記載が重要。この部分は全国的な統一的寸法が明記できなかった。

隣地境界線からの離隔距離は、首都圏では概ね50cm、地方では1m

建物間の離隔距離は、神奈川県では2m。都内は、行政では2mが多いが指定確認検査機関では1mでも認めてくれるところがある。

当然 離隔距離が多いのにはこしたことがない。

ここは、開放廊下・バルコニーだけでなく屋外階段などにも影響してくる取扱いで、個人的には東京都心部では建物間の離隔距離2mは、ちょつと厳しいというか。あまりに高密度なな地域環境では2mでなく1mでも良いのではと思う。

そんなところが、この本の編集にあたり、統一的な寸法はまとまらず主事判断になった理由かとも思う。

以下、全国の特定行政庁の特徴的な取扱いを参考にしながら考えてみる。

 

【覚書】A級ガス圧接継手

A級継手とは、元々はカプラーなどを用いた機械式継手の性能分類(SA級、A級、B級、C級の4種類) の一つ。

機械式継手の場合は、応力の伝達機構がガス圧接継手や溶接継手と異なり、引張強度は母材破断であるが、すべりが生じる工法、繰返し試験を行うとすべりが増加する工法、降伏点を過ぎると抜け出す工法などがあるため、SA級、A級、B級、C級の4段階に分類されています。

A級継手は、「強度と剛性に関しては母材並であるが、その他に関しては母材よりもやや劣る継手」と定義されています。

一方、ガス圧接継手については、強度、剛性はもちろん、付着生状に関してもほぼ母材と同等で、また、一方向繰返し試験に加えて塑性域正負繰返し試験を行い、継手単体としてはSA級継手の性能を有することを確認しています。
しかし、SA級継手はどの位置でも無条件で使用できる継手と規定されているため、使用規定上、ガス圧接継手はA級継手としました。

なお、A級継手の規定はガス圧接継手、溶接継手、機械式継手などすべての継手に対する共通の規定です。溶接継手や機械式継手も現在開発されている継手の大半がA級継手です。

A級ガス圧接継手の施工範囲について
(社)日本圧接協会では、前述の「ガス圧接継手性能判定基準」に基づき、ガス圧接継手について各種の加力実験(弾塑性域一方向繰返し実験、曲げ試験、断面マクロ試験)を行い、A級継手の性能を有することを確認しました。その結果、実験的に確認を行った範囲についてA級継手の施工が可能と規定しました。


img062圧接方法 :手動ガス圧接、熱間押抜ガス圧接、自動ガス圧接
鋼種及び径 : SD345(D25~D51)、SD390(D29~D41)、SD490(D29~D41)
異鋼種継手  : SD345とSD390の継手及びSD390とSD490の継手
異径継手: 鉄筋径の差4mm以下の継手ただし、高強度細径と低強度太径の継手は除く。
節の形状 :竹節十竹節、竹節十ねじ節、ねじ節十ねじ節
圧接施工会社: (社)日本圧接協会が認定したA級継手圧接施工会社
技量資格者: 手動ガス圧接3種・4種、熱間押抜ガス圧接3種・4種、自動ガス圧接3種・4種
施工要領 :A級継手圧接施工会社が作成したA級継手圧接施工要領書に拠る。

(出典:公益社団法人 日本鉄筋継手協会)

 

平成12年建設省告示第1463号によって鉄筋継手の構造方法が定められた。

本告示のただし書きに従い、(社)日本圧接協会(現:公益社団法人 日本鉄筋継手協会)では鉄筋のガス圧接継手を対象に、溶接継手や機械式継手など特殊継手を対象とした継手性能判定基準に準じた性能評価試験を実施し、継手性能の確認を行った。

これにより、これまで鉄筋のガス圧接継手は応力の最も小さい部分にのみ適用されていたが、以後は、応力の最も小さい部分以外にも使用できる法的な道筋が拓かれた。

 

H12建告1463 建築基準法に基づく告示
鉄筋の継手の構造方法を定める件
(平成12年5月31日建設省告示第1463号)

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)第73条第2項ただし書(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定に基づき、鉄筋の継手の構造方法を次のように定める。

1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第73条第2項本文(第79条の4において準用する場合を含む。)の規定を適用しない鉄筋の継手は、構造部材における引張力の最も小さい部分に設ける圧接継手、溶接継手及び機械式継手で、それぞれ次項から第4項までの規定による構造方法を用いるものとする。ただし、一方向及び繰り返し加力実験によって耐力、靭(じん)性及び付着に関する性能が継手を行う鉄筋と同等以上であることが確認された場合においては、次項から第4項までの規定による構造方法によらないことができる。

2 圧接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 圧接部の膨らみの直径は主筋等の径の1.4倍以上とし、かつ、その長さを主筋等の径の1.1倍以上とすること。

二 圧接部の膨らみにおける圧接面のずれは主筋等の径の1/4以下とし、かつ、鉄筋中心軸の偏心量は、主筋等の径の1/5以下とすること。

三 圧接部は、強度に影響を及ぼす折れ曲がり、焼き割れ、へこみ、垂れ下がり及び内部欠陥がないものとすること。

3 溶接継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 溶接継手は突合せ溶接とし、裏当て材として鋼材又は鋼管等を用いた溶接とすること。ただし、径が25mm以下の主筋等の場合にあっては、重ねアーク溶接継手とすることができる。

二 溶接継手の溶接部は、割れ、内部欠陥等の構造耐力上支障のある欠陥がないものとすること。

三 主筋等を溶接する場合にあっては、溶接される棒鋼の降伏点及び引張強さの性能以上の性能を有する溶接材料を使用すること。

4 機械式継手にあっては、次に定めるところによらなければならない。

一 カップラー等の接合部分は、構造耐力上支障のある滑りを生じないように固定したものとし、継手を設ける主筋等の降伏点に基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとすること。ただし、引張力の最も小さな位置に設けられない場合にあっては、当該耐力の1.35倍以上の耐力又は主筋等の引張強さに基づき求めた耐力以上の耐力を有するものとしなければならない。

二 モルタル、グラウト材その他これに類するものを用いて接合部分を固定する場合にあっては、当該材料の強度を1mm2につき50N以上とすること。

三 ナットを用いたトルクの導入によって接合部分を固定する場合にあっては、次の式によって計算した数値以上のトルクの数値とすること。この場合において、単位面積当たりの導入軸力は、1mm2につき30Nを下回ってはならない。

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スノコ状バルコニーの建築面積・・神奈川県内

下記の記事は、2013年1月に記載した内容ですが、その後 東京都内特定行政庁の建築審査会において、スノコ状バルコニーは建築物であり、建築面積の算定の対象となる旨の裁決(22板建審請第2号審査請求事件)があり ました。また各地でスノコ状バルコニー等を敷地境界まで拡大して築造するような、良好な市街地の環境の保全上好ましくない事例が散見されていました。

現在はスノコ状バルコニー、グレーチングバルコニー等の取扱いは、建築基準法第2条第1号 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものだけでなく「これに類する構造のもの」も建築物に含まれるとされています。

よって屋根に類する構造のものに該当し、同法施行令第2条第1項第2号に基づき建築面積に算定されるとする特定行政庁が多くなっているようです。

例えば神奈川県藤沢市では2016年に取扱いを変更して建築面積算定対象としています。【2021.02.18】

【下記は2013年1月記載・現在は取扱いが変わっている特定行政庁も多いと思いますが記録として残しておきますので閲覧した方は御注意ください】


H22年9月の「神奈川県建築基準法取扱集」や「横浜市建築基準法取扱集」に「スノコ状バルコニーの取扱」は盛り込まれてない事から見て、現在のところ統一的な取扱基準はなさそうである。

H20年神奈川県指定確認検査機関連絡会・拡大小委員会+横浜市まちづくり調整局指定機関指導課をもつて組織された「横浜プロジェクト」において、H21に「スノコ状バルコニーの取り扱い」が決められた事がある。

  • 以下の条件にあてはまるものは、建築面積・床面積の対象としないこと
  • *注 告示等により除かれるものは該当しない。1建築物において1箇所のみ(上下の重なりは無いもの)。その他の形状については個別判断とする。
  • 小規模な専用住宅におけるもの(図面添付)
  • スノコ状バルコニーの水平投影面積の合計が15㎡以下のもの(15㎡を超えるものについては、超えた部分の下部を利用しないと判断できるもの)
  • スノコ状の定義として、下部より見上げたときに隙間より空が見えること

【藤沢市】

  1. ・建築物ではないと判断できる場合は、建築面積・床面積には算入しない
  2. ・スノコ状バルコニーの下部が屋内的用途に供さない事、屋根がないこと、袖壁等がない事など個別に判断する。

【横浜市】

  1. 木製スノコの場合は、柱があっても下部に屋内的用途が発生しない限り建築面積不算入
  2. 金属製のグレーチングは建築面積算入

【川崎市】

  1. 基本的にはスノコ状バルコニーは建築面積不算入
  2. 個別に判断・・下部に庇があり雨が落ちない場合、下部に用途がある場合建築面積算入

【茅ヶ崎市】

  1. 建築面積不算入
  2. ただし屋内的な用途に利用する場合は、建築面積算入かつ屋根としての性能を満たす事

【相模原市】

  1. 基本的にはスノコ状バルコニーは建築面積不算入
  2. 個別に判断・・下部に庇があり雨が落ちない場合、下部に用途がある場合建築面積算入

*その他の特定行政庁については随時ヒアリング後に追記します。

 

スノコ状バルコニーの建築面積・・東京都内

下記の記事は、2013年1月に記載した内容ですが、その後 都内特定行政庁の建築審査会において、スノコ状バルコニーは建築物であり、建築面積の算定の対象となる旨の裁決(22板建審請第2号審査請求事件)があり ました。また各地でスノコ状バルコニー等を敷地境界まで拡大して築造するような、良好な市街地の環境の保全上好ましくない事例が散見されていました。

現在はスノコ状バルコニー、グレーチングバルコニー等の取扱いは、建築基準法第2条第1号 土地に定着する工作物のうち、屋根及び柱若しくは壁を有するものだけでなく「これに類する構造のもの」も建築物に含まれるとされています。

よって屋根に類する構造のものに該当し、同法施行令第2条第1項第2号に基づき建築面積に算定されるとする特定行政庁が多くなっているようです。

全てヒアリングしたわけではありませんが、杉並区では2013年に、藤沢市では2016年に取扱いを変更して建築面積算定対象としています。【2021.02.18】


【下記は2013年1月記載・現在は取扱いが変わっている特定行政庁も多いと思いますが記録として残しておきますので閲覧した方は御注意ください】

「スノコ状バルコニーの取り扱い」は、東京都内で統一的な取り扱い基準があるわけでなく、まったく認めない特別区や建築主事もいるので計画の時点で確認が必要な事項です。

許容建築面積いっぱいだと、このスノコ状バルコニーの取扱い次第で建築面積が変わるし、審査請求の裁決で指定確認検査機関の建築確認申請処分が取消しになつた事もあります。

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検査済証のない既存建築物の増築・用途変更

既存建築物の増築・用途変更の建築確認申請においては、既存建築物が建築当時の法令に適合している必要があり、工事完了検査済証があることが原則となっています。

ところが日本の建築業界の負の遺産といいましょうか、建築確認申請は取得したが工事完了検査済証がないという建築基準法の手続き違反の建物が街のなかに沢山溢れているというのが現状です。

そうした検査済証の無い建物を増築とか用途変更をしたい時、以前は行政でも門前払いされていたことも多かったのですが、最近は行政でも相談を受けとめてくれて確認申請を受け付けてくれて建築確認済証を公布してくれる事例が増えてきました。

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クリアランス・安全率

道路斜線、高度斜線、日影図や天空率の施工上のクリアランス・安全率(余裕)は、設計上あるいは確認申請上どの程度みておく必要があるか。

確認申請を提出したら、行政や指定確認検査機関から道路斜線や高度斜線は5cm余裕をみろとか、日影は1分、天空率は0.02%などと言われたことがないだろうか。

東京・荒川区の取り扱い基準を見ていたら「ゼロクリアランスで行なうことを可とする」という項目があった。その代わり巻尺の許容差や施工精度を考慮した工事施工が必要となると釘をさしている。

行政なら中間検査・工事完了検査できつちり測定するように思えるが、民間の指定確認検査機関ではどうだろう。

民間の指定検査機関の中間検査・工事完了検査は形骸化している。

だからゼロクリアランスなんて検査で手間がかかるから出来ない。審査で余裕を持たしておかないと危ない危ない。

確認申請書正本も副本も現場にない状態で検査する。建物の高さや位置関係をを全然計りもしない確認検査員がいる。申請段階で木材が集成材になっているのに施工者に図面が流れていなくグリーン材で施工されていないのに発見もできない。地番の高さを施工段階で道路より上げているのに見つけれない。

「厳しく指摘すると文句が来る」「営業的配慮が必要だ」・・・

採光規定は どう変わってきたか @ 法第28条の履歴

昭和25年制定時

(居室の採光及び換気)
 居室の窓その他の開口部で採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、学校、病院、診療所、寄宿舎又は下宿にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上、その他の建築物にあつては10分の1以上でなければならない。但し、映画館、地下工作物内に設ける事務所、店舗その他これらに類するものの居室については、この限りでない。
(昭和25年11月23日-昭和34年12月22日) 

+ 建築基準法施行令 第19条 学校、病院、寄宿舎等の居室の採光
第20条 有効面積の算定方法

2 居室の窓その他の開口部で換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上でなければならない。但し、適当な換気装置があつて衛生上支障がない場合においては、この限りでない。
(昭和25年11月23日-昭和34年12月22日)
3 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前二項の規定の適用については、1室とみなす。
(昭和25年11月23日-昭和45年12月31日) 

*****

■昭和34年の改正

(居室の採光及び換気)
 居室には採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、学校、病院、診療所、寄宿舎又は下宿にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上、その他の建築物にあつては10分の1以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は映画館の客席、温湿度調整を必要とする作業を行う作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りでない。
(昭和34年12月23日-昭和45年12月31日) 

+ 建築基準法施行令 第19条 学校、病院、寄宿舎等の居室の採光
第117条 適用の範囲
第128条の4第2項第2号

2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。ただし、適当な換気装置があつて衛生上支障がない場合においては、この限りでない。
(昭和34年12月23日-昭和45年12月31日) 
3 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前二項の規定の適用については、1室とみなす。
(昭和25年11月23日-昭和45年12月31日) 

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■昭和46年の改正

(居室の採光及び換気)

 住宅、学校、病院、診療所、寄宿舎、下宿その他これらに類する建築物で政令で定めるものの居室には採光のための窓その他の開口部を設け、その採光に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、住宅にあつては7分の1以上、その他の建築物にあつては5分の1から10分の1までの間において政令で定める割合以上としなければならない。ただし、地階若しくは地下工作物内に設ける居室その他これらに類する居室又は温湿度調整を必要とする作業を行なう作業室その他用途上やむを得ない居室については、この限りではない。

(昭和46年1月1日-平成12年5月31日) 

+ 建築基準法施行令 第19条 学校、病院、児童福祉施設等の居室の採光
第19条第2項
第20条 有効面積の算定方法
第20条第2項
第20条第3項
第128条の3の2第2号

2 居室には換気のための窓その他の開口部を設け、その換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して、20分の1以上としなければならない。ただし、政令で定める技術的基準に従つて換気設備を設けた場合においては、この限りでない。
(昭和46年1月1日-現在有効)

+ 建築基準法施行令 第20条の2 換気設備の技術的基準

3 別表第1(い)欄(1)項に掲げる用途に供する特殊建築物の居室又は建築物の調理室、浴室その他の室でかまど、こんろその他火を使用する設備若しくは器具を設けたもの(政令で定めるものを除く。)には、政令で定める技術的基準に従つて、換気設備を設けなければならない。
(昭和46年1月1日-現在有効) 

+ 建築基準法施行令 第20条の3 集会場、火を使用する室等に設けなければならない換気設備等
第20条の4

4 ふすま、障子その他随時開放することができるもので仕切られた2室は、前三項の規定の適用については、1室とみなす。
(昭和46年1月1日-現在有効)

 

昭和46年の建築基準法第28条第1項の改正後の基準と改正前の基準の違いが判るだろうか。

ちょっと見には変わっていないように見える。

この違いがわかった人は、相当法律を読む力がある。

昭和46年の改正前は、住宅、学校、病院、寄宿舎等に類する建物の居室もそれ以外の用途の建築物に対しても、ただし書きに該当する居室以外、全ての居室に採光のための窓をとることを義務付けている。

昭和46年の改正後は住宅、学校、病院、診療所、下宿その他これらに類する建築物の居室には採光のための窓両者とも採光が義務付けられている。それ以外の建築物 例えば、店舗、事務所、工場等の建物については、法的には採光のための窓を設ける必要がなくなつた。

建築基準法の採光基準のこのような改正は、大型物販店舗等の大規模建築物がつくられ始め、大型物販店舗のような広がりの大きいスペースでは、採光のために設けた窓が無用の長物化し、実際の売場の明るさは照明器具設備で充分確保できるようになっていたこと、そして、それを支える照明器具設備の発達がその背景にあった。

最終的に、採光が義務付けられたのは、住居系の建物で、居室規模が小さく、昼間なら照明器具を点灯しなくても窓からの採光で充分明るさが確保できる用途の建物だった。

そして平成12年に煩雑な採光補正係数が導入された。

そのときより人工照明は更に発達している。

都心部では木造三階建て等では1階部分の自然採光を確保する事は、中々難しくなった。

この辺で もう一度 法第28条を見直してはどうだろうか。

 

面積の算出方法・端数処理 -3

下記の図は、福岡県建築確認申請の手引き(2010年版)の中の「面積算定の取り扱いについて」

今、建築基準法の取り扱いとして全国的な基準となっている「建築確認のための・基準総則集団規定の適用事例」(日本建築行政会議編)が出版される前の原案には、この福岡県の取り扱いが提案されていた。

が、み~んなこれまでバラバラな対応をしてきたので、今更全国一律の取り扱いにするのは異論が出て同意が得られず出版される際に外された項目のひとつ。